追憶1
「カラダガイタイ。マエニモカンジタコトガアル。バラバラニナリソウ。」
激しい川の流れの中で白宝は意識が薄れていった。
「サミシイ、イタイ、カナシイ、クルシイ...。」
薄れゆく意識の中でかつての記憶が蘇る。
盗賊同士が争ったのか辺りは死体、物で溢れていた。生き残っている者はいない。どす黒い血にまみれた死体には蛆が涌き、堪えがたい腐敗臭を漂わせている。
それは自分がどこから生まれてきたのかわからなかった。
血だまりに落ちた見事に開花した一際大きな蓮の花から出たそれは、蛇のような細長い体をくねくねと動かしながら地面を這った。
とても嫌な臭いがする。辺りは真っ赤で、それは気分が悪くなった。生まれてきて間もなかったが、それは体が動かなくなる感覚に陥った。
ダレカタスケテ...クルシイ...。
金色の美しい目を閉じじっとする。白いうろこの肌にも赤黒い汚れがついている。
「おまえ、大丈夫?」
かわいらしい声に反応してそれは弱弱しく目を開けた。目の前にはまだ幼い少女がいた。
「かわいいね。一緒におうちに帰ろう。その前に体をきれいに洗ってあげるね。」
少女はそう言ってそれを優しく抱きかかえ、近くの川まで運んだ。少女が体にかけてくれる川の水は冷たく気持ちがよかった。それはだんだんと元気を取り戻し、体が綺麗になるころにはすっかり気分もよくなっていた。
「おまえ、小さくてかわいいね。目もきれい。チビ!おまえのなまえはチビにしよう!わたしは鶴奈。今日から家族で友達だから。」
鶴奈はそう言ってチビにほおずりをした。チビはたまらない幸せな気持ちになった。
ツルナ、ダイスキ。カゾク、トモダチ、チビ、チビ。
「鶴奈!こんな所にいたの!」
「母さんっ。見て!新しい友達!」
鶴奈はチビを嬉しそうにかかげては母親の朱鷺に見せた。
「あら、かわいい。よかったね。でもここには長く居ないほうがいいよ。怖い人たちが来るところだからね。」
「いっぱい人が死んでいたよ。みんな殺されて...。」
「鶴奈、そんなことろまで見てしまったの?嫌なことは早く忘れよう。ここにはもう来ちゃだめだよ。」
朱鷺は鶴奈を抱きしめた。愛しくてたまらないというふうに。
「おうちに帰ろうね?」
「うん。」
鶴奈たちの家は木の枠にわらを積んだ粗末なものだった。昔はそれでも家族三人仲良く楽しく過ごしていた。
鶴奈は母の朱鷺に似て、薄茶色の髪に茶色がかった黒い瞳のかわいい娘だった。しかし一年前、鶴奈が七つの時、父の不注意で鶴奈は顔にやけどを負った。そのせいで鶴奈は顔半分、皮膚がただれ見るに堪えない姿となった。父は自分のやったことへの罪悪感と向き合うことができずにそれから真面目に働かなくなり、鶴奈にもつらくあたった。
村の人たちも神の祟りだと鶴奈を忌み嫌い、鶴奈と同世代の者達と関わらせようとはしなかった。中にはこんな一家の境遇に同情し親切にしてくれる人もいたが、表立って関わろうものなら自分たちも鶴奈たち一家と同じ扱いになるので、つき合いはないもの同然、ひっそりとしたものだった。
人と関係を結べない鶴奈にとっては自分の外見で判断しない動物や昆虫たちが友達だった。悲しい生い立ちにもかかわらず、鶴奈は母の愛情を一心に受け、心優しい少女に成長していた。
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