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布に巻かれたツクヨミの剣。そっと手に取り布をめくっていく。ひどく錆びついて、形でなんとか剣なのだとわかる程度。ソウはその剣をじっと見つめる。夢の中で確かに見た。ツクヨミがこの剣を手に舞っているのを。
「ソウちゃん。」
いきなり背後から声をかけられソウはビクッとなる。振り向くと翔愛が立っていた。
「この剣にはあまり触れないほうがいいです。浄化されたとはいえ...。」
珍しく翔愛が言いよどむ。
「なによ?」
「ソウちゃん、気持ちの整理はつきましたか?」
「は?」
ソウは以前翔愛から光夜について諦めるよう言われたことを思い出した。その話はしたくなかったので、ソウはしらを切った。
「なんのことかわからないんだけど。」
「何故、ツクヨミの剣を見ていたのです?」
「勝手でしょ。」
ソウは剣を布に巻き戻した。
「ミコトちゃんはやっぱり黄花でした。過去のことを思い出したみたいです。」
「えっ。」
翔愛の言葉は意外でソウは正直に驚いてしまった。ソウは実際のところ、ミコトがかつてツクヨミと愛し合った黄花とは思っていなかったからだ。剣の記憶で見た黄花は確かに美しい娘だった。そして不思議なことにミコトにどことなく雰囲気が似ているとソウも感じた。しかしミコトはなにも思い出していないのだから、翔愛や光夜の見解は思い違いだと安心していたのだった。
「ミコトちゃんは光夜くんとも向き合って二人の関係は今落ち着いています。ソウちゃんが光夜くんにはっきりと気持ちを伝えるのなら止めませんが。」
今日あの二人は一緒にここに来た。何度もおたがいを確認するように見つめ合っていると思ったらそういうことだったの。ソウの中にどろどろとしたものが涌き出てきた。ツクヨミと黄花の仲睦まじい姿を見てしまった。ツクヨミの姿、人となりも光夜に被る。自分の好きな女にしか興味を示さない態度。ソウには憂那の気持ちが手に取るように分かった。
「ソウちゃん。」
ソウの気持ちを読み取ったのか翔愛が優しく語り掛ける。
「もし蛟龍を発見できたら、影宮さんはしばらくその世話で忙しくなります。ソウちゃんもこの家の次期当主です。影宮さんをしっかりと支えてあげてください。」
「別にわたし、なにかしたりしない。わたしたちはまだ子供だしこれからだっていろんな出会いがある。あの二人がこのままいくとは誰にもわからないことでしょ。」
ソウは負け惜しみだと自分でも感じながら翔愛の前から立ち去った。
その場に残された翔愛はため息をつき、窓の外に悠々と枝葉をのばすカナウの桃の木を見つめた。「男女の仲はわたしにはとんとわかりません。参りました。」翔愛は何事もなく無事に蛟龍が影宮家に保護されるように祈った。
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