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剣の記憶が途切れた。みんな目を開け驚愕の事実に衝撃を受けている。まさか、ツクヨミと憂那が会っていたなんて。光夜の表情をそっと伺う。彼は口を堅く閉ざしかつての自分の剣をじっと見つめていた。
「あの、わたし、ツクヨミは初めて見たのですが、とても素敵な殿方ですね、ははは...。」
この場の空気をなんとかなだめようと美路が口を開いたが完全に失言だった。
「結局ツクヨミの女が原因かよ。」
「咲生くん。」
翔愛がきつい言葉で咲生を制した。
「かつてのわたしたちが人と違うのは不老不死であったということだけです。見た目や性格は人として生まれたときに持っていたもの。ツクヨミはこれまでは神としての自覚が人との距離を取らせていたのでしょう。しかし一つの出会いが彼を変えてしまった。それは悪いことではないのです。剣の記憶を通してみたツクヨミの祈りの舞は強力なものだった。愛を知って彼の神格性はより高まったのです。愛は決して禁忌などではなかった。その証拠に最後には自らにかかった呪いを解き濁龍を鎮めたのですから。人を守らなければならないのに、勝手にわたしたちが神とはこうあるべきと思い込み、人と距離を取っていただけなのです。」
黄花とツクヨミの愛は間違いではなかった。ただ、不幸が重なっただけ...。
「わたし、彼女を知っている。気づいてあげられなかった。」
「ミコトちゃん、仕方のないことなのです。人の気持ちなんてわかりません。」
「俺たちも狙われていたってことか?」
ツクヨミを責めることにバツの悪さを感じたのか咲生が話を逸らした。
「そうです。わたしたちの力を弱める機会を伺っていたと言えばいいでしょうか。」
「関係のなさそうな人を使ったのね。」
美路が自分を抱きしめ言った。当時のことを思い出しているのかもしれない。まさか狙われていたとは思いもしなかっただろう。
「イロハとは?」
光夜がイロハについて質問する。
「カナウ様の因縁の相手のようですね。彼の言い方から想像すると蛟龍を奪ったのはいいが、その後彼の手を離れてしまったのでしょう。その後運悪く邪な者の手に渡ってしまった。」
「ツクヨミの祈りが届いていなかったから。」
「光夜くん、自分を責めてはいけません。ツクヨミを思う憂那という女の気持ちが強すぎたのです。皮肉なことにツクヨミの力は愛を知って強力なものになっていた。そのため受ける呪いの影響も大きかったのでしょう。」
蛟龍が誰にどうやってさらわれたのかが判明した。普通の女にしか見えない憂那ならば蛟龍を世話する一族のもとにも忍び込みやすいとにらみ操られた。翔愛の見解では憂那の心は嫉妬、妬みで邪術にかかりやすくなっていたのだろうということだった。
「皮肉にも憂那によってツクヨミの剣でイロハの縁の者は切り捨てられました。わたしたちが成すべきことは蛟龍を早く見つけ、あるべき場所に戻すことです。」
翔愛はまたなにか判明したら招集をかけると言って今日は終わりとなった。ツクヨミの剣は引き続き影宮家で保存される。
「光夜、大丈夫?」
帰り道、光夜のことが気になって声をかけた。
「うん、すごく意外で。」
「あの、憂那のことは..?」
「覚えている。人に会うこと事態、ないことだから。まさか彼女が。」
「どうして変装をしてまで社を離れたの?」
わたしは剣の記憶を見てからずっとひっかかっていたことを尋ねた。
「それは...。」
光夜は少し恥ずかしそうだ。
「黄花のことが気になって。会いにこなくなった黄花の様子を見に行こうとしていたんだ。」
「ツクヨミが?」
「うん。」
とても驚いた。自分から会いに来るなと言ったツクヨミが黄花の様子を伺うために行動をおこすなんて。
「そっか。」
ツクヨミは変わった。黄花に出会って。
そして黄花の予感は的中した。彼女は以前思っていた。ツクヨミの姿を見、彼の人柄を知ったら女の子が社にあふれると。わたしは自分から光夜に手を繋いだ。「彼はわたしのもの。」黄花の気持ちと重なったのかわたしの中に光夜に対して独占欲が芽生えた。光夜がわたしに視線を移す。
「わたしがいるから、大丈夫。」
わたしは真っすぐ前を向いて光夜に今の気持ちを伝えた。
「ああ、そうだな。」
光夜は優しく微笑みそう答えた。
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