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わたしが目覚めたのは意識を失って丸一日たった次の日の深夜だった。光夜には助けてくれてありがとうとメールをし明日電話をしていいかと尋ねた。彼のことだからすぐに会いに来ると思っていたら、学校が終わった頃に電話をすると返事が来た。わたしは光夜の態度が変わったことを思い出した。
記憶が戻る前、わたしは光夜にキスをされて逃げた挙句、彼をさんざん避けてきた。光夜は生まれ変わってもとても魅力的だ。過去に捕らわれずに前をむこうと気持ちを切り替えたのかもしれない。でもわたしは...。ツクヨミも好きだけど、現代で出会った光夜も好き。自分でも知らないうちに光夜に強く惹かれている。どうしてもっと早くに自分の気持ちに気付かなかったんだろう。
下校の時間が過ぎたころ、光夜からの着信があった。ドキドキする。
「もしもし?」
「ミコト?体は大丈夫なのか?」
懐かしい光夜の声。なんとなくツクヨミにも似ている。
「うん。もう退院して家だから。助けてくれてありがとう。」
「いや。」
どうしよう。話が途切れてしまった。わたし、きちんと気持ちを伝えないと。光夜がわたしに気持ちがなくても。
「光夜。」
「どうした?」
「わたし...、わたし、会いたい。」
ちゃんと会って気持ちを伝えたい。光夜はわたしと会ってくれるだろうか。
「ミコト。俺も会いたい。」
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本当は今日から学校に行く予定だったが、わがままを言ってもう一日欠席した。光夜に会うまでなにも手に着かない。光夜とは月乃神社で待ち合わせをした。彼は下校後そのままこちらに向かうと言っていた。わたしは少し早めに神社に来て大木を見つめた。この木をわたしは知っている。振り向くといつもツクヨミがいた。後ろを見る。当然だが誰もいなかった。
約束の時間はとっくに過ぎているのに光夜は現れない。メールも返事が来ない。立ち上がり帰ろうとしたらこっちに向かって走ってくる足音がした。視線を向けると、光夜が息を切らして駆けてきた。
「ミコト、ごめん。電車が事故で止まって。こんな日に限って携帯も充電切で。」
光夜はかなり全力疾走してきたのか膝に手をついて息切れをしながら遅れた事情を説明した。
「来てくれてよかった。」
光夜がようやく顔をあげた。彼の顔を見るのは久しぶりだ。やはりツクヨミによく似ている。わたしはどうなんだろう?黄花はかなりの美人だった。少なくともわたしはそうではないことはよくわかっているけれど。
「ミコト、俺お前に無理させていたんじゃないかって。ごめん。」
「そんなことない。無理なんてわたししていない。それから。」
「それから?」
「わたし、光夜との、その、...キス、嫌じゃなかったよ。びっくりしただけで。」
光夜からの反応がない。わたしは恥ずかしさのあまり下を見ていた顔をあげた。
「ほんとに?」
光夜と目が合った。光夜はわたしの目をまっすぐに見て確認するように尋ねた。
「うん。嫌じゃなかった。」
「はぁ...よかったぁ。嫌われたのかと思った。」
光夜は息を止めていたのか大きく息を吐いて言った。
「嫌うはずがない。だって、だって。わたしは光夜が好きだから。」
「ミコト...。」
「わたし、夢を見た。黄花だった。ツクヨミを愛していた。彼女の気持ちが痛いほど分かる。ツクヨミに会いたいって気持ちもある。でもわたしは光夜が好き。いつの間にかとても好きなっていたの。」
「ミコト。ありがとう、思い出してくれて。俺も同じだ。ツクヨミの気持ちに寄り添える。でもそれと俺の気持ちは違う。俺はミコトが好きだ。初めて会ったときから惹かれていた。」
「え、ほんと?」
「そうでなきゃ、ランが手にした耳飾りを取り上げて持ったりはしない。」
光夜の予想外の告白にわたしは胸がときめいた。最初から気にかけてくれていたとは思いもしなった。
わたしたち、どうしてもっと早くに本音をさらけ出さなかったのか。
「ミコト。」
光夜が手を差し出した。わたしはそっとその手に触れる。
「帰ろう。家まで送るから。」
「うん。」
わたしたちは沈む夕日を背に神社を後にした。
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