黄花10
今日はこの辺りの地域で月の神様へのお礼を捧げるという名目でお祭りがある。わたし達女はいつものように祭りで食べる料理を作っていた。そして月の神様へのお供え物も。でもツクヨミはなにも食べない。人々がお供えしたものも無駄にならないように神使達がどこかに持って行っていると聞いた。わたしはせっかくのお礼の品がツクヨミの口に入らずに終わってしまうことが残念に思った。「そうだ。今日のこの餅をツクヨミに持っていこう。わたしの手料理も食べてもらえるし、みんなの思いも届く。」そう決心し、わたしは餅づくりを頑張り始めた。
「黄花、どうしたの?なんだか気合入ってない?」
「そうかな?」
最近また元気を取り戻した憂那が話しかけてきた。
「もしかして、いい人にあげるの?」
「せっかくだから、一つか二つは。」
こんな時、意中の相手がいるときはみんな自分が作ったものを手渡していた。でも憂那は今はどうなんだろう?一目惚れをした人とはその後どうなったのか知らないわたしは彼女を刺激しないように話した。
「いいんじゃない?みんなそうしているしね。わたしもあっちで作ってこようっと。」
憂那が意外に元気そうでよかった。
出来上がった餅は初めてにしては上出来だった。早くツクヨミに届けたい。一通り割り振りされた作業を急いで終わらせ、わたしは社に向かった。いつものように社の裏の大木の下に来て、振り返るといつの間にかツクヨミが来ていた。
「ツクヨミ、これ食べてみて。」
「俺は食べる必要がない。」
「そんなのつまらないでしょ。わたしが作ってみたの。ね?」
ツクヨミは最初は躊躇していたけれど、わたしの再三の要求に折れてくれた。彼がなにかを食べているところを見るのは初めてだった。
「どう?」
「うん、うまい。」
わたしはそのまま抱きついてツクヨミにキスをした。今日も秘室に行くのかと思ったら、ツクヨミはわたしの手を引いて山の中へと連れだした。着いた場所は黄色の花が咲くあの場所だった。
「ここ、本当に綺麗。」
池の前に立ち花々の香りを思い切り吸っていると、背後からツクヨミに抱きしめられた。
「今日はここで黄花を抱く。」
「えっ。」
振り向くとツクヨミにキスをされた。そのまま黄色い花の上に寝かされて、わたしは彼を迎い入れた。静かな自然の中にはわたしたちの吐息しか聞こえない。池の水面には座って求め合う二人の姿が映る。優しく吹く風も素肌に心地よくて、わたしはツクヨミとこの場所と時間を楽しんだ。
「たまにはこういうのもいいね?」
隣にはツクヨミがいる。満たされて花畑の上で空を仰ぎながら手を繋いでいるととても幸せ。いつもは隙なくきちんと正装しているツクヨミが今は服は乱れ髪もぼさぼさだ。あの神使達が見たらいったいどんな反応をするのだろうと思うとおかしくなってしまった。
「ああ。生きていると感じる。」
「わたしの旦那さま。愛してる。」
わたしはツクヨミにそっと口づけをした。
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