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花鳥風月の神様  作者: るち
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黄花5

「黄花、ぼけっとしてないで。今日から桃花が帰ってくるんだから。」


ツクヨミ様に別れを切り出されてからわたしは放心状態だった。胸の中にぽっかりと穴があいたよう。なにもする気にならない。家の中でぼぉっとしていると母さんに小言を言われた。その時に桃花が帰ってくるという話になった。


「どうして?もう追い出されたの?」


「なに言ってるの?おめでたなのよ。赤ちゃんができたの!」


「えっ!」


「今はつわりがひどいから、しばらくはうちでね。」


「そっか。」


「あんたもそろそろ嫁ぎ先考えなさいよ。でないと母さんたちが勝手に決めるからね。」


 母さんは桃花が帰って来るのが嬉しそう。そりゃ、実の娘だもんね。わたしはあれからなにも手につかない。あの時は悲しくてあんなことを言うツクヨミ様に頭にきて一目散に帰ってきてしまったけれど。ツクヨミ様からはわたしには絶対に会いにこない。会う気があるのならそもそもあんな言葉を言う人ではない。

「でもやっぱり会いたい。だってこんなに好きなんだもん。ツクヨミ様はわたしに会えなくて寂しくないの?」わたしはこれからどうしていいのかわからずに、頭の中でずっと同じことの押し問答をしていた。






「桃花は順調ね。嫁いですぐに赤ちゃんできて。わたしなんて行き遅れているから羨ましい。」


「選びたい放題じゃない。相手の親も確認しといたほうがいいわよ。」


「それも大切よね。」


桃花の里帰りに友人の憂那が訪ねてきた。桃花は体がつらいのか、横になりながら久々の実家でくつろいでいる。


「黄花、あんたは最近どうなのよ?キスぐらいはしてもらえた?」


桃花がわたしに話を振ってきた。今はその話はしたくないのに。だんまりのわたしに桃花がなにか気付いたのか話題を変えた。


「黄花は器量がいいんだから。聞いたよ。大葉が母さんに頼み込んでるって。」


「え、なにその話?わたし、知らないんだけど?」


「他の男も見てみたら?気が紛れるかもよ?」


絶対にありえない。ツクヨミ様以外の人なんて。わたしは心の中で抗議した。


「美人は特ね。黄花なんてまだ子どだとわたしは思うけど。」


「男から見たら違うんじゃない?」


二人がわたしのことについてああでもないこうでもないと話し始めたけれど、わたしはそれどころじゃない。呑気な二人が心底羨ましかった。






「黄花、実際のところはどうなの?あんたのきちんとしている男は?」


憂那が帰り桃花と二人でいるときにそっと尋ねられた。


「喧嘩した。」


「仲のいい証拠じゃない。原因は?」


「もう会いにくるなって。」


「えっ、どうして?」


「わからない。でもなんとなくはわかる。でもやっぱりわからない。」


わたしは話しながら涙がぽろぽろと流れた。


「かわいそうに。彼の言い分も少しはわかるのね?でも納得していないのなら、きちんと話し合わなければだめよ?」


桃花が優しく肩を抱いてくれた。


「うん。わたし、やっぱりもう一度会いに行く。」






 

 ツクヨミ様にもう一度会うと決めたけれど、また追い返されるかもしれない。

どうしたらいいんだろう?今は桃花が昼寝をしているから、一人で家の外で木陰に座り膝を抱えて考えていた。答えが思い浮かばないまましばらく時間が過ぎる。すると向こうからこちらに近づく足音がする。顔を上げると大葉がいた。


「黄花、おばさんから聞いてくれた?」


大葉は幼いころからよく私をいじめていた。この辺りの女子には人気があるけれど、わたしはどうしても彼に好感を抱くことはできなかった。


「一応知っているけど、無理だから。」


「なんで?」


「なんでも。それにわたし、大葉のこと好きじゃない。」


「おまえのこといじめて悪かったよ。好きだったんだ。だからもうしない。俺、おまえがいいんだ。」


「無理だって。」


「誰かほかのやつがいるのか?」


「...。」


「誰だよ?俺、負けないし。」


「関係ないっ。」


このまま話しても拉致があかないと思ったわたしは立ち上がり大葉に背を向けて家に入ろうとした。するといきなり背後から抱きしめられた。


「いやっ。」


すごい力で振りほどけない。


「放してっ。」


いきなり腕を強く握られて振り向かされる。次の瞬間には大葉の唇がわたしの唇に触れていた。

口の中になにか入ってきた。ヌルヌルして...気持ち悪いっ。


「いやっ。」


思い切り力を込めて大葉を押しのける。大葉は強い力でわたしの服を引きちぎった。


「助けてっ、誰かっ。」


ツクヨミ様っ!泣きながら心の中で大好きなあの人の名を呼ぶ。上半身が露わになったわたしを大葉は後ろから羽交い絞めにして放そうとしない。大葉からに逃げようとしても逃げられない。



ガラっ!!


家の扉が空き、桃花がすごい形相で護身用に用意していた棒を大葉めがけて振りかざした。


「あんたっ、うちの黄花になにしてくれてるのよっ!!」


「違う、俺は、好きだからっ。」


大葉はそう言いながらも桃花の剣幕に圧倒されて走りながら立ち去っていった。


「黄花、大丈夫?」


「桃花、桃花、わたし、好きでもない人にキス...。」


震えが止まらない。桃花はわたしを優しく慰めてくれたけど、涙が止まらなかった。初めてのキスはツクヨミ様としたかった。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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