表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花鳥風月の神様  作者: るち
34/107

28

 わたしはシュウマくんに断って昼食の途中で席をたった。今、光夜とこんな状況でいるときに彼が他の女子と仲よく写真に写っていると思うといたたまれなくなった。初めて光夜とランの二人を見たときを思い出す。とてもお似合いで素敵な組み合わせだとわたしも思った。きっとそういう感じの写真を撮るんだ。

光夜はツクヨミの記憶に左右されて黄花の生まれ変わりかもしれないわたしに優しかっただけだ。わたし自身を好きなわけではなかったのに。なにを勘違いしてしまったんだろう。今は早く家に帰って、ベッドにもぐりこみたかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「光夜、すごくおもしろい写真があるの。見たい?」


 休憩から戻ってきたランはご機嫌な様子だ。こっちはずっと待たされて苛ついているというのに。こんなに待たされるのなら塾に行けばよかった。ランとの約束など無視してもよかったんだ。

俺がひたすら黙っているとランが自分の携帯画面を無理やり目の前に差し出してきた。うざいと思ったのも束の間、その画面に目を奪われる。それはミコトとシュウマが楽しそうに食事をしている写真だった。


「知っていた?あの二人がつき合っていたなんて?」


俺はランの言葉に反応し視線をむけた。


「シュウマって秘密主義だもんね。あの子にだけはちゃん付けだし。気があるのはわかっていたけど。」


「ありえない。」


「すごく楽しそうだったのよ。わたし、挨拶はしたけど邪魔しちゃ悪いからすぐにお暇したんだから。」


「彼女が誰を好きになるかは彼女が決めることです。ミコトちゃんは光夜くんのものではありません。」翔愛が言った言葉が胸に突き刺さる。俺は今生こんじょうでもお前に愛してほしい。ツクヨミも黄花も関係ない。俺がミコトを好きなんだ。


「悪い、帰る。」


「えっ!なに言ってるの?もうすぐツーショットの撮影なのに!」


俺はランを無視してその場を後にした。ミコトに会いたい。会わなければいけない。俺は歩きながらシュウマに連絡をしていた。自分で確かめるだけだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 やっと最寄りの駅に着いた。家に帰るつもりが、わたしの足は勝手に月乃神社へと向かっていた。気づくと社の裏の大木の下にいた。ここで、光夜にキスをされた。自分はいったいなにしているんだろうと自己嫌悪に陥った。大木にもたれ目を閉じこれまでのことを思い出していた。ここでツクヨミの耳飾りを拾った。それから光夜に出会って...。


 誰かの話し声が聞こえる。誰だろう?でもとっても懐かしい…。







「桃花、かわいいね。秘密の話教えてあげる。誰にも言わないで。母さんは桃色が一番好きなの。母さんには一番大切な色よ。二人だけの秘密だからね。」


「そうなの?黄色は?黄色も大切な色でしょ?」


あれは...。小さな姉の桃花と母さんがいる。


「桃花は本当に優しいね。大切だけど、少し違うのよ。母さんのじゃないの。かわいい桃花、わたしの宝物。」


 あれはわたしが六歳になったばかりのころだった。二人に見つからないように隠れて盗み聞きをした。姉の桃花と母さんが仲良く内緒話をしているのが嫌で、わたしも混ぜてもらおうとこっそり二人の様子を伺っていた。そしたら母さんの秘密を聞いてしまった。わたしが大好きな母さんは桃花が一番大好きで大切で、わたしはそうじゃないって。わたしは母さんのじゃないってどういうこと?


 わたしはその場から立ち去り、誰もいない草むらで一人で泣いた。母さんはわたしにも優しくて、母さんがそんなふうに思っているんなんて考えたこともなかったのに。トボトボと歩いていると、誰も近寄らない小屋に行きついた。ここは確か気難しい老婆が一人寂しく住んでいると聞いたことがあった。わたしは小屋の中へ入って行った。


「客がくるとは珍しい。」


小屋の中は薬草を煎じているのか、鼻をつまみたくなるような匂いが充満していた。壁には様々な植物が干されている。


「あなたはこの辺りで一番長生きだって。」


「そうだね。誰よりも長く生きているから人が嫌いなのさ。人は醜い。」


「どうして?」


「すぐに妬んで争う。それに比べてあの月の神様は清廉だ。欲がない。姿をみたら癒されるよ。」


「月の神様の姿を見ているの?」


「まさか姿を見たら呪われるとか祟られるなんて言葉を信じているのかい?神がそんなことをするとでも?」


老婆の話はとても新鮮だった。ここら辺ではみんな月の神様を恐れているから、神が夜に祈りの舞を舞う時刻になると、決して外には出ない。


「しっしっしっしっ。一度見てみるといいよ。」


老婆は薄気味悪い笑いをしながらわたしに月の神様を見るよううながした。わたしはこの老婆に自分のことを聞いてみたくなった。


「あの。あなたはわたしのことをなにか知っている?」


「ん?」


わたしの問いかけに老婆はマジマジとわたしを眺めた。


「わたし、黄花っていうの。姉は桃花で。」


「ほう、あの赤子がこんなに大きくなったのかい。」


「わたしを知っているの?」


老婆は薄気味悪くニヤリと笑った。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ