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ミコトと初めて会った日、ランに急に呼び出されたあの日、本当はランに会いに行く気なんてなかった。
でも、待ち合わせの時間ギリギリになってなぜか急に気持ちが変わり、俺はランに指定された場所へと向かった。目的地に着くと、トラブルの多いランはまた誰かともめていた。
「またか。」とうんざりしながらランに近づき様子を伺う。ランともめている相手は一人の女子だった。とても小柄の女子だ。「どうでもいい。さっさと用事を済ませて帰ろう。」そう判断してランに声をかけた。
「ラン、用ってなに?」
「助けて。絡まれてて。」
ランの言葉にようやく対象の女子の顔をみた。「かわいい子だ。」それが第一印象だった。意外だったのはその子が俺に急に自己紹介をしてきたことだ。
「わたしミコトっていうの。」
かわいいのに不思議な女。そしてランが手にしている耳飾りを俺に持てと言ってきた。
なんのへんてつもないこの耳飾りが今回の騒動の原因らしい。一対三でもめている彼女に少し同情し俺はこの場がおさまるのならと耳飾りを手にした。しかしなにも起きなかった。なにか感じないかと聞く彼女の必死の表情がまたかわいくてたまらない。こんなふうに異性のことを思ったことは今までなかった。
ランが耳飾りを取り戻し一緒にその場を去ったが、彼女のことが気になって仕方がなかった。彼女の名前...。たしかミコトだっけ。
「さっきの女子、誰?」
「知らない。急にからんできたんだもん。」
「あの耳飾り、あの子のじゃないのか?」
「それも知らない。耳飾りはわたしの服にひっかかっていたの。あの子のものだという証拠はないわ。」
ミコトとの接点は耳飾りだけか。また会えるだろうか。そんな風に思っていたからか予想外のできごとが起こった。
「え?」
「あっ。」
通っている塾でミコトと再会した。しかも彼女はいきなり俺の腕をつかんできた。振り向いた瞬間、ミコトのかわいい顔が視界に飛び込んできた。リスのように黒目の多いかわいい瞳。こんな子にこんなことをされて悪い気はしない。
聞けばミコトが住んでいる所はここからは距離がある。今日の出会いは偶然だった。彼女から友達になってほしいと言われた。本当に距離の詰め方が独特だ。でも断る理由はない。俺もミコトに興味を持ち、もっと知りたいと思った。こんなかわいい子は見たことがないのだから。
「なっ、さっきの子なんだよ?」
「なにって?」
「めっちゃかわいくね?」
「シュウマ?」
「大丈夫!俺はダチの恋は邪魔しないから。」
「友達って言っていただろ?」
「あんなの、友達からってことだろ?」
シュウマが女子に興味を抱くのは初めてだ。シュウマは運動神経が抜群でさっぱりした外見から女子受けはいい。でも俺たちの周りにいるやけに大人びた女子には全く興味を示さなかったのに。なんだか気持ちが焦る。自分が一番信頼し尊敬もしている友人は一番のライバルになりかねない。
それから一週間過ぎたころ、またミコトと再会した。
「光夜、あの子。」
先にシュウマが気付いた。ミコトが俺にわざわざ会いに来てくれたんだ。シュウマの冷やかしに俯く彼女のことをまたかわいいと思ってしまう。
そばにいたランが絡んできたから、あの耳飾りの話を持ち出した。きっとあれはなにか大切なもので、それが彼女の今までの行動に繋がっているんだ。俺はミコトの助けになりたかった。
しかし、気の強いランが素直にいうことをきくはずがなく、耳飾りを車道にめがけて放り投げてしまった。ミコトがまさかあんな行動をとるなんて。俺は無意識に彼女を強く抱きしめていた。体が勝手に反応したんだ。ミコトを守りたいと思って。
そのまま意識を失った俺は、目覚めた時にミコトがなぜそこまで耳飾りに固執したのかを理解した。自分がかつてツクヨミであったこと、夢でミコトに転生した自分を探すように頼んだことも思いだした。ミコトはかつての約束を必至に守ろうとしてくれたんだ。記憶はなくとも...。
そしてやはり俺は新たな人生でも君にまた恋をしている。ツクヨミの記憶は関係ない。光夜としてもミコトに強く惹かれているんだ。
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