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花鳥風月の神様  作者: るち
26/107

20

 翔愛は影宮さんとまだ話があるようで、わたしと光夜は先に帰ることになった。


「びっくりしたね。わたし、まだ頭が混乱しいて。」


「うん。」


光夜はさっきから口数が少ない。知らなかったことを聞いて彼も混乱しているんだろうか。


「ミコト、今から月乃神社に行かないか?」


「神社に?別にいいけど。」


今日は早い時間から神社の跡地巡りをしていたから、まだ日が高い。わたしたちは月乃神社に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 さっきから父さんと翔愛が別室で話をしている。当主にしか話せないことらしい。なんだかのけものにされているようで面白くない。わたしも影宮家の一員なのに。

それにしても...。彼が、光夜がツクヨミだったなんて。


 あの日夢で見た月の神様。美しくてはかない彼の姿にわたしは恋をした。自分の家がこの辺りの神事に深い関わりを持ち続けてきたことを知っていたわたしは、ツクヨミのことを知りたくて一人でできる限り月乃神社について調べてみた。この家に生まれたからこそツクヨミの夢を見たんだと思った。あの夢はとても現実的で鮮明だった。


 月乃神社について調べたいという者が来ると聞いた時はどこかの学者が来るのかと思っていた。予想に反して自分と同い年の者たちの訪問には驚いた。それに初対面で光夜を見たとき、彼の眼差しにが気になった。その後、時々見せる光夜の普通とは違う雰囲気。まさか光夜がかつて本当に実在していたツクヨミの生まれ変わりだなんて。


 わたしは夢でツクヨミを見ている。わたしにこそ彼との運命がある。この家に生まれついたのもきっとそのためだ。ツクヨミの力を奪う結果に導いたかもしれない黄花という娘なんてもっての他だ。また彼によくない影響を及ぼすに決まっている。ミコトが黄花の生まれ変わりか本当の所はまだわからないけれど、排除しなければ。わたしがツクヨミを守ってみせる。




「ソウちゃん、少しいいですか?」


 父さんと翔愛が二人で話をしている間、暇だったわたしは窓の外の桃の木を見ながらツクヨミのことを考えていた。すると不意に翔愛に声をかけられた。彼女はこの時代でも神がかった感じがあり、神出鬼没なイメージだ。どうやら父さんとの話し合いは終わったらしい。


「なに?」


「あの...。わたしの杞憂ならばいいのですが。もしかして、ソウちゃんはツクヨミのことが好きですか?」


「え?そんなこと、会ったこともないのに。」


この翔愛は油断ならない。でもどうしてそんなふうに思ったのか聞いてみたくなった。


「どうしてそう思うの?」


「影宮さんもツクヨミの姿を見たことがあるようです。夢でですが。この地はかつてツクヨミが守っていた地です。古代よりわたしたち現人神と関わりがあった一族の直系はその地の現人神の力の影響を受け、夢でその姿を垣間見ることがあるようです。とくにツクヨミの場合は月乃神社がありますから、他の現人神より影響を及ぼすことがあるはずです。」


「父さんもツクヨミを見たことがあるのね。」


翔愛がじっとわたしを見る。探られている。わたしは翔愛から目を逸らし再び桃の木に視線を向ける。


「ソウちゃん、光夜くんはツクヨミではありません。彼の記憶があるだけです。」


やはり見抜かれている。わたしは翔愛を見た。


「だからなに?誰を好きになろうとわたしの勝手でしょ?」


「光夜くんはミコトちゃんが好きなのです。」


「そんなの、ミコトがかつて好きだった人の生まれ変わりだと思っているからでしょ?」


「ミコトちゃんは黄花ですよ。わたしにはわかるのです。」


「だったらそれだっておかしいじゃない。ミコトはなにも覚えていないんだし。」


「ツクヨミは絶対に黄花を諦めません。それに対してミコトちゃん自身がどうするかだけです。今の二人の間にはソウちゃんは入れません。」


「さっき言っていることと反対のことを言ってない?光夜はツクヨミじゃないんでしょ。」


「だから先ほども言いましたが、光夜くんもミコトちゃんに惹かれているのです。」


「どうしてわかるのよっ、そんなこと!」


「わたしの中の神の力です。」


翔愛の目を見ると、彼女の瞳が濃さを増し輝いた。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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