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花鳥風月の神様  作者: るち
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17

「最初に申し上げておきますが、わたしはこれが三度目の転生です。トリゴエの記憶が一番濃いですが、いずれの記憶も曖昧ですが残っています。」


「俺にはツクヨミ以外の記憶はない。それがお前が特殊ということか?」


翔愛がにっこりと笑った。


「いえ、違います。ツクヨミが転生したのは今回が初めてです。」


「え!」


わたしとソウは同時に声をあげてしまった。光夜は目を見開き押し黙ったままだ。


「過去に起きた話をしなければなりません。」


翔愛はじっと光夜を見つめた。彼の覚悟を探るように。


「話してくれ。」


光夜の言葉に翔愛はそっと息を吸って静かに話し始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 神獣である蛟龍が何者かの手によって奪われた。しかし、現人神の祈りが日々滞りなく行われていればなにも臆することなどない。しかし、よりによってこのタイミングで花鳥風月の守りにひびが入ってしまった。ツクヨミの祈りが届いていなかったのだ。


 彼が守護するエリアで災厄が起こり始めた。それは山を転がり落ちる泥の塊のようにどんどん周りを巻き込み大きくなっていく。最悪なことはこの災厄に蛟龍が巻き込まれてしまったことだ。

水害は蛟龍が濁龍へと変化を遂げた兆しである。一番守りの脆いツクヨミの地に水害が集中した。





「ツクヨミは自分の全てをかけて濁龍を鎮めました。」


「え...。」


 わたしは初めて聞いたツクヨミの最後に言葉を失った。光夜は言っていた。「ツクヨミと黄花は。ある事件で離れ離れになったんだ」と。それがこれなの?それではあまりにも...。


「全てをかけてってどういうこと?」


わたしが尋ねると翔愛はとても簡潔に答えた。


「消滅したのです。」


いやっ!!わたしの中のなにかが反応した。胸が締め付けられそうになり涙が勝手にこぼれてきた。


「ミコト。」


「ごめんなさい。わたし、どうして。」


光夜が優しく肩に腕を回し気遣ってくれる。彼のぬくもりを感じる。


「あの時もあなたはとても悲しんでいた。」


「あの時?」


「わたしはトリゴエであったときにかつてのあなたに会っているのです。」


「かつてのわたし?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 濁龍の気配が消えた。こんなことが起こりうるのだろうか?わたしは気になり、鳥の社を抜け出した。そして被害が一番ひどいと報告されているツクヨミの守る地へと向かった。


 そこはひどい有様だった。しかし川は水の濁りはあるものの、穏やかに流れていた。氾濫する気配は微塵もなく、朝陽が照り返し、この地は神の加護をとり戻したように見えた。





「あなた、もしかして現人神様?」


 振り向くと一人の美しい娘が立っていた。彼女の目は泣きはらしたのか真っ赤で目の周りは腫れていた。それでもその娘は美しかった。

彼女は人であるのに不思議と自分と同じものの気配を感じた。


「なぜ、そう思うのです?」


「なんとなく。あの人と瞳の色が似ている。それにあなたに近づくとこれがとても熱くなるの。」


彼女が首にかけているものを服の下から取り出して見せた。それは月の形をした耳飾りだった。


 感じる。これはツクヨミの耳飾りだ。わたしはその瞬間全てを理解した。

ツクヨミはこの娘と恋に落ちたのだ。そして神への、月への祈りを無心に行うことができなくなった。

しかし、疑問は残る。それだけで現人神の力が無くなるだろうか。カナウ様の力がその程度のものであったとは到底思えない。実際ツクヨミは濁龍を鎮めたのだから。


 花鳥風月の現人神の中で最初に誕生したのがツクヨミだ。他の現人神とは異なり、月の現人神の候補はツクヨミただ一人、彼だけで終わった。彼の祈りの力は強力で我ら四人の中で群を抜いていた。


 娘が手にした耳飾りを見る。ツクヨミは後悔していない。彼の神の力がこの耳飾りには残っている。それだけ最後の祈りの力は強かった。 濁龍を一人で鎮めてしまうほどに。


「わたしは鳥の現人神のトリゴエです。」


「そう、やっぱり。」


悲しそうに微笑む娘に神であるにもかかわらず気持ちが揺れた。

この娘は不思議な娘だ。神となり凍てついたツクヨミの心を甦らせたのだから。


「わたしは黄花。ツクヨミ様のおかげでみんな川に流させずにすんだ。みんながツクヨミ様に感謝している。ちっとも恐ろしい人じゃなかったって。守ってくれたお礼になにかしたいから、ここにツクヨミ様のための社をまた造ろうって計画しているの。いつでもツクヨミ様が戻ってこられるように。彼が毎夜祈っていた木はちゃんと残っているのだから。」


涙を流しながら黄花はそう話した。わたしはこの娘に興味が涌いた。


「わたしもできる限りお手伝いしましょう。」

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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