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週末、わたしと光夜はソウの案内で一番近い花の神社があったといわれている場所までやってきた。
そもそもここで住む人達が減ってしまった地域らしく、人の気配がない。物寂しい小道を数分歩いていくと、林の入口に鳥居らしきものが見えた。よく気を付けて見ていないとそこにあるのが鳥居だと気づかないほどに草が鬱蒼と生い茂りその存在を隠してしまっている。
「神も自然に逆らう事はできずに朽ち果てていくんだな。」
光夜が寂しそうに言った。
鳥居の向こう側の石段の形も曖昧なものになっていて、上まで登るのは大変そうだ。
「ミコトはここにいろ。」
こんな日に限って動きにくい服装をしていたわたしに光夜はそう言い残し、ソウと二人ですたすたと石段を登って行ってしまった。
「さすがに社は残ってないのか。」
「この場所に神社があったという記録が残っているだけでも奇跡よ。鳥居の印は気付いたんでしょ?」
「花の印か?」
「で、なにか役に立ちそう?」
「いや。」
なにも感じない。俺にはツクヨミの記憶があるだけで神の力はもうないはずだ。ツクヨミだったころも他の現人神たちと交流があったわけではなっかった。
「どうしたの?」
光夜がいきなり振り返りミコトの方を見た。彼の目はなにかを感じ取ったように鋭く輝いている。そんな光夜の眼差しからソウは目を離せない。
今、誰かに見られていた?光夜は強い気配を間違いなく感じたが、そこにはミコトしかいなかった。気のせいかと思い、なんでもないとソウに伝えた。
「大丈夫?」
光夜がなにかを探るような目でこちらを見たので、わたしは心配になり彼に声をかけた。
「ああ、いま戻る。」
光夜とソウが戻って来た。なんだかソウの様子がさっきとは違う感じがした。なにかあったのだろうか?
「どうだった?」
「収穫なしだ。」
「そっか。」
すぐに手がかりが見つかるとは思っていなかったが、収穫がなにもないという事実にやはり気持ちは沈んだ。
わたしと光夜はソウに礼を言ってその日は解散した。このまま光夜も帰ると思っていたら、彼から少し話がしたいと言われた。
「ミコトのこと教えてくれ。月乃神社から少しはなれよう。」
「え、わたしの話?」
「ミコトは兄弟はいるのか?」
「わたしは...。」
光夜と二人、このあたりでは有名な蓮の池のある公園に来ていた。公園のベンチに座り話をしようと光夜に誘われた。兄弟って、レンのことを言ってもいいのだろうか。兄弟にはちがいないのだけど。
「弟がいる。」
「へぇ、お姉さんか。」
「まぁ...。光夜は?」
この件についてあまり話したくないので、光夜に話を振る。
「俺は妹がいる。まだ五歳だ。」
「そうなんだ。かわいいんだろうな。」
「今度会えばいい。」
「そうだね、今度会えあたら...。」
五歳の子に会うって、絶対お母さんも一緒でしょ!今の光夜はツクヨミの記憶があるせいかとても押しが強い。そういえば、ツクヨミっていったいいくつだったのだろう?
「ツクヨミって年はいくつだったの?」
「ツクヨミは現人神となった十四の時から肉体の成長は止まっている。でも生まれてから数百年はたっていたから。」
「ええっ、そんなにっ!」
わたしは改めて知った事実に言葉が出なかった。数百年って一言でいうけど、気が遠くなるような数字だ。ツクヨミはその間どうしていたのだろう?まさかずっと一人で?彼の寂しそうな瞳を思い出した。
「ツクヨミは黄花と会うまではどうしていたの?」
「どうって?」
「誰かほかの人と一緒にいたのかっなて?」
「まさか。ツクヨミは神使といた。毎夜月に祈りを捧げて。そうして数百年を過ごしたんだ。」
数百年誰とも関わらずに...。神になったとはいえ元は人。どんな気持ちですごしていたのだろう。そんなツクヨミがただ一人、思いを寄せた黄花に固執するのは無理のないことのように感じた。
光夜はわたしのことはどう思っているんだろう?わたしはやっぱり黄花ではない。でもそれを聞く勇気はさすがになかった。
「ミコト。せっかく一緒に新しい時代に転生できたんだ。俺はミコトと一緒に時を刻みたい。」
光夜が優しく微笑んで言った。これは光夜の本音だ。わたしはまだ自分が黄花かどうかはっきりとはわからないけれど、わたしもそうなればいいと思う。だからわたしも本音で答えた。
「うん、そうだね。」
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