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わたしと光夜はまず月乃神社がどうしてまた建てられたのかを調べることにした。そうしていくうちにきっとわたしの過去の記憶も戻るはずだと光夜が言った。彼はわたしに過去のことをとても思い出してほしそう。
わたしは複雑だった。黄花という人の記憶はわたしには全くない。光夜は耳飾りをわたしが見つけたから彼女の生まれ変わりにちがいないと確信しているみたいだ。でも、偶然だってありうるのではないだろうか。
わたしはまず手始めに月乃神社の神主である祖父に神社のことを聞いてみることにした。
「おじいちゃん、退院はいつになるの?」
「このままなにもなければ来週には退院だよ。」
峠を越えてから、祖父の体調はすっかりよくなっていた。もうすぐ退院できるというし本当によかった。
「おじいちゃん、これ見たことある?」
わたしはツクヨミの耳飾りを覚えている限り正確に紙に書いたものを祖父に見てもらった。母が社の中で見たことがあると言っていたので、祖父ならなにか知っているのではと思ったからだ。
「これは。月乃神社の印だよ。」
「印?」
「その昔、月乃神社にいた神様がこの地域を守ってくれた。その神様の縁のなにかだったと言い伝えられている。ここは川が多いだろう。過去に一度大氾濫を起こしかけたらしいが、月乃神社の神様が沈めてくれ大勢死なずにすんだそうだ。その神様への感謝を忘れないようにと、その時に流された月乃神社が再び建てられた。」
「そうなの?」
「言い伝えによるとな。」
その神様がツクヨミなんだ。ツクヨミはその後どうなったんだろう?
「その神様は?」
「さぁなぁ。大昔のことで記録もほとんど残っていない。神様はいつも人の心の中にいるものだしな。」
普通の感覚ではそうだ。わたしだってツクヨミと出会わなければ、あの耳飾りを拾っていなければ到底信じられないことだ。
ツクヨミの記憶を持つ光夜が今の時代にいるという事は、ツクヨミはその時の川の氾濫で命を落としたということなのだろうか。それはなぜだかあまり考えたくないことだった。
「珍しいな。ミコトが神社にそんなに興味を持つなんて。」
「えへへ。ちょっとね。他にあの神社のことで分かることあるかなぁ?図書館とか?」
わたしが一人でぶつぶつ言っていると祖父がなにか思い出したのかわたしに教えてくれた。
「そういえば古くからこの地域の神事に関わってきた家があったな。祭りの時には挨拶に来ていた。ええと...そうだ。影宮さんのところなら、なにか知っているかもしれないよ?」
「影宮?」
「うん。かなりの地主で昔からこの辺りの有力者だったようだ。ミコトと同じ年ごろの娘さんがいたはずだ。」
影宮...。わたしはもちろん全く知らないけれど、光夜ならなにか知っているかもしれない。ツクヨミの記憶に残っていればかなり前進する。わたしは早速光夜にメールした。
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「わざわざここまで来なくても。学校は大丈夫なの?」
光夜にメールをしたら明日の放課後、月乃神社の木の下でという返事が来た。そしてわたしたちは今まさにその場所にいる。
「あれから両親が心配して無理に学校に行かなくていいって。勉強は塾でもう終わっているし。」
「そういうことしていいの?」
「ミコトと会うときはなるべくここで会いたいんだ。」
「メールでもいいのに。」
「会いたかった。」
ツクヨミの記憶があるせいか光夜は恥ずかしいセリフを普通に言ってくる。こっちはなにもかも初めてのことで、なんと言っていいかわからない。そんなわたしの気持ちを分かってか光夜はさらりと笑い、祖父と話した内容を確認する。
「影宮...。」
「なにか思い当たる?」
「わからない。ツクヨミは外界とは全く関わりを持っていなかった。そういうことは神使たちが取り仕切っていた。でも目立たちはしないが大きな力をもっているやつらはいた。」
「え?それじゃないの?」
「名前までは覚えていない。名前さえその当時あったのか。彼らは秘密の集団だった。」
「秘密ってどうして?」
「代々神獣となる蛟龍の世話をする一族だからだ。」
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