9
三人で無言のまま病院の廊下を歩く。ランは不機嫌な様子を隠す気もなく、すたすたと早歩きでわたしとシュウマくんの前を歩いていた。
「ミコトちゃん。聞いていい?」
「え?」
「光夜とミコトちゃんって付き合ってる?」
シュウマくんにストレートに尋ねられたが、どう答えていいのかわからない。今はつき合ってはいない。かつて夫婦だったらしいとはとても言えない。この際、無難に答えておくのがいい。
「まさか。出会ったばかりだよ。」
「そうだよな。ははは。光夜、女子からは人気あるけど感心がないみたいだったのに。ミコトちゃんにはすごい積極的だから。一目惚れでもしたのかなって。」
「まさか。ははは。」
「だよな。ははは。」
駅で二人と別れて電車に乗る。今日起きた出来事が信じられなかった。光夜にはメールアドレスを教えた。電話はお母さんのチェックが入ってしまうから。車内で携帯を見ると早速光夜からメールが届いていた。
(退院したら会いに行く。そのときにまた話そう。)
なんだかこそばゆいような楽しいような初めての感情にわたしは思い切り戸惑っていた。光夜には
(あまり無理をしないで。今日はたくさん教えてくれてありがとう。)
と返信をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明くる日、わたしは普段通り登校した。
「おはよう。ホシカ、ハナ。」
「おはよう。」
「ミコト、なにかいいことあったの?」
「えっ?どうして?」
「なんとなぁく。」
「わかるっ?なんか今日髪も綺麗じゃない?」
「えっ、そうかなっ。とくになにもないけど。」
光夜に顔を思い切り見つめられ、帰ってから自分は変な顔でなかったかと心配になった。あの日わたしはいつもよりたくさん鏡を見てしまった。
また会いにくると言っていたし、はっきり言って前世の記憶がある光夜が次はなにをしてくるのかわたしには全く予測不可能だった。
ただ、なぜか彼の瞳にはきちんとした姿で映りたいと思っている自分がいる。そのせいか普段手をかけない髪もきちんと梳かし、スキンケアも母のものを黙って拝借した。
女の子ってするどいな。私は恋をしているユイカの気持ちにさえ気づかなかったのに。
学校が終わり、自宅につき携帯を確認するとメールの着信。ドキドキして内容を確認すると光夜からだ。
(今日退院した。明日の放課後会いに行く。)
明日...!!いくらなんでも病み上がりのような状態だから、もっと先のことだと思っていたのに。きっと光夜の親だって心配するに決まっている。どうしよう、なにを言っても彼なら来てしまいそうな気がした。良くないことだとは思ったけれどわたしは一芝居うつことにした。
(今日体調があまり良くなくて。明日、学校を休むかもしれない。)
光夜にそうメールした。彼からの返信は簡潔で
(わかった。無理はするな。またメールする。)
とのことだった。嘘をつき申し訳ないと思いながらも少しだけほっとした。
わたしは光夜の体調も心配だったが、彼に会うことを躊躇った。自分の気持ちもよくわからないまま、おしの強い光夜に流されてしまいそうで。
光夜の言う過去の出来事が本当なら、運命なのだと思うけどそれを立証するものなんてなにもない。もう少し気持ちと向き合う時間が欲しかった。
翌日も普段通りに学校に行き、ホシカとハナと下校する。校門のそばに行くと女子がチラチラとこちらを振り返っていた。なにかあるのかと三人で後ろを振り返るがなにもない。そのまま気にせずおしゃべりに花を咲かせて校門を通りすぎると声を掛けられた。
「ミコト。」
「え!」
おそるおそる振り返ると校門の前に光夜がいた。彼は私の嘘を見抜いていた。
「光夜…。」
とても気まずい。光夜はそんなわたしの気持ちを見抜いているのか優しく微笑んでいた。
「ちょっと。」
ホシカがそんなわたしの腕を肘でグイグイとつつく。
「誰?あのすごくかっこいい人?」
「え?」
となりのハナも珍しく光夜を見てぼーっとしている。彼はもともと器量がいい上に町に住んでいる。しゃれた雰囲気を醸し出す光夜にわたしたちのような田舎の女子が気おくれしてしまうのは無理のないことかもしれない。
「あの、友だち...。」
ホシカの質問にわたしはとても小さな声で答えた。
「この子、かりていい?」
光夜がわたしを指さして二人に尋ねた。時間が一瞬止まっていた二人は我に返り、「どうぞどうぞ。」とわたしを光夜の前に差し出した。
「ありがとう。じゃ行こうか、ミコト。」
光夜はわたしに手を差し出した。魔法にかかったようにわたしはその手をとり彼の後をついて行った。
読んでくださりありがとうございます。
続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。
楽しんで読んでいただけるようがんばります。




