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【かつてのツクヨミが護る地。現在の地名:龍里にて】
寒空が続く中、珍しく雷を伴った雨が降った。
雷はたいてい恐怖を与えるものだが、その雷はキラキラと輝くとても美しい雷だった。まるで天に駆け昇る龍の咆哮のように聞こえるその雷鳴は、不安を与えることはなくなぜか安らぐ心地の良いものだった。
龍里は雨は少ないが、その雨は三日三晩降り続いた。不思議と不快に感じることのない雨で、雨がやんだ時にはあらゆる汚れを洗い流したかのようにすがすがしい空気が澄み渡っていた。
「恵の雨」という言葉がしっくりくるような、川は爽やかで、植物や鳥、生きとし生けるものすべてが浄化されたようだ。晴れ渡った景色には生きる喜びが溢れていた。
そして不可思議なことはまだ続いた。この龍里の各地で虹がかかったのだ。
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季節は移り変わり、白宝が影宮さんと地下に籠ってから半年が経っていた。
わたしたちは冬の装いをし、残り少ない小学校生活を過ごしていた。
学校での休み時間、ここ最近わたしたちが暮らす龍里で起こっている現象についてホシカとハナと話していた。
「わたしなんて取材受けちゃった。虹見ましたかって!!」
取材陣のインタビューをうけたホシカが興奮気味に話す。虹のニュースはSNSを通して全国に知れ渡り、最近特に大きなニュースがなかったテレビ番組のリポーターたちが取材のため街に来ていた。「奇跡の虹の街」との名前があがっているほどだ。
「ほんと、すごいよね。虹ってすぐに消えるじゃない?でもここの虹はニ、三日かかってたもんね。」
ハナもホシカ同様最近おこっている龍里でのできごとに興味をもっていいるようだ。二人には話せないが、わたしはひょっとしてと思っていた。
「異常気象かもしれないけれど、こんな縁起のいい異常気象なら大歓迎だよ。」
ホシカの願いが通じたのか、今度は信じられないニュースを耳にした。例の蓮の池公園の蓮の花が満開だというのだ。わたしたち地元の人間はこぞって蓮の池公園に繰り出したが、蓮の花が咲いていたのは一日だけで、わたしが公園に行ったときには蓮の花は冬の状態に戻り、花を落としていた。
「見られなかったのは残念だけど事実だもんね。SNSにたくさんあがっているから!開花の瞬間を目にした人は羨ましいなぁ。」
蓮の池公園からの帰り道、ホシカは携帯を眺めながらつぶやく。SNSには所狭しと咲き誇る蓮の花の写真が投稿されていた。その様子は心洗われるようで、この世のものとは思えないような見事な開花だった。雨、虹、季節外れの蓮の花の開花。きっとレンも気づいているはず。そんな時、翔愛から影宮家に召集がかかった。そこでわたしは信じがたい人と再会する。
「影宮さん...?」
通された部屋にはかつての現人神たちとソウ、レンもいた。そして優しく微笑む影宮さんも。その表情から、彼はとても元気そうだ。
「みなさん、ご心配をおかけしました。」
影宮さんが穏やかな声でわたしたちに話しかける。
「影宮さんは立派に大役を果たしてくれました。一連の不思議なできごとはもうみなさんご存じですね?」
「虹や蓮の花のことか?」
翔愛の問いかけに咲生が尋ねる。
「そうです。蛟龍は...。」
翔愛はレンに視線を定めた。
「白宝は澄龍となり無事に天に還りました。」
みなうすうす気づいていたがその場にいる全員が息を呑んだ。レンは...。レンはやはり知っていたのだろうか。彼はとても落ち着いている。
「でも良かった。影宮さんが無事で。」
美路の言葉はみんなが思っていたことだ。ソウは今にも泣きだしそうな顔をしている。いつも強気な彼女だけど、もう会えないと思っていた父親と再会できたのだから無理もない。
「影宮さんは、あの蓮の池公園にいたのです。」
「え?ここじゃなくて?」
光夜が驚きの声をあげる。影宮さんは白宝と一緒に影宮家の地下にいた。それなのに蓮の池公園にいたとは。わたしたちの疑問を解消するべく影宮さんが語る。
「私も深い眠りについていました。気付いたら蓮の池公園に立っていたんです。目の前には満開の蓮の花がありました。そして悟ったのです。白宝が、ついに天に還ったのだと。」
「影宮さん…。白宝は…。」
光夜はレンのことを気にしている。影宮さんは優しく微笑みうなづいた。
「白宝はわたしに語ってくれました。『自分は大切なものを探しに行かなければならない。かつて濁龍となる前に世話をしてくれた少女を探す。澄んだ魂を持った少女なので必ず転生しているはずだから。』と。」
一同、影宮さんが語った白宝の話に引き込まれる。
「白宝は...。前世の蛟龍はその少女を救いたかったのです。」
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