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ニ日後、わたしは退院した。次の日には学校に登校し、あのできごとから初めてレンに再会した。
「おはよう、ミコト。」
「おはよう。」
レンの体調は良さそうで顔色はいい。でも少し寂しそうな眼差しを宿しながら笑顔で話しかけてきてくれた。わたしとレンは放課後、一緒に蓮の池公園に向かった。
「白宝のこと、光夜から聞いたんだ。ミコトが俺を守ってくれたって。」
光夜とレンは仲がいい。わたしが入院している間にだいたいの話は光夜がレンに伝えてくれたようだ。
レンはわたしが光夜の前世であるツクヨミの血をひいていることにとても驚いたようだ。わたしと光夜の縁の深さに感銘したらしい。
レンの名は「蓮」と書く。蛟龍である白宝が蓮の花から生まれ、その名を刻んだ自分が白宝と出会い育てたことに運命を感じるとも話してくれた。
もともと口数の少ないレンが今日はよく話す。わたしはそんなレンのことが気にかかり、彼の様子を伺った。
「レン。大丈夫?」
レンは一瞬驚いたような顔をし、視線を落とす。
「すごく...すごく、寂しいよ。もう一度白宝に会って...。お別れするのならきちんとしたかった。あいつは最後に俺の名を呼んだんだから。」
仕方のないこととはいえ、レンの気持ちを思うとやりきれなかった。なんと声をかけたらいいのかわからない。そんなわたしの様子に気付いたのか、レンが調子を変えて再び話し始めた。
「母さんがさ、犬か猫飼おうかって言い出して。白宝を川に投げ捨ててしまったことを気に病んでいるんだ。」
「レンはどうしたいの?」
「わからない。まだしばらくは...。」
レンはあれから毎日影宮さんの家に行っているとわたしに教えてくれた。白宝にはもう会えなくともすこしでもそばにいてやりたいからだと。
「ミコトはもう平気なのか?」
「うん。ちゃんと検査もしてもらったから大丈夫だよ。」
「そっか。よかった。」
レンは少し言いにくそうに言葉を振り絞った。
「母さんのことなんだけど。」
「聞いたよ。わたしたちのことわかってくれたって。」
「うん。病室で大変だったんだろ?光夜に怪我までさせて。」
「光夜から鱗の話は聞いた?」
わたしは以前翔愛が言っていた鱗について、光夜から聞いた話を思い出していた。濁龍は災いをまき散らす。その手段が濁龍の体から剥がれ落ちた鱗であると。汚れた鱗は触れた人の体に溶け込み、その者の陰の気を増幅させる。そして破滅へと向かわせる力を持っていると。
白宝を捕まえようとして鱗に触れた学生、異様なほどに鬼気迫っていたレンの母親。二人は鱗の影響で普段ではありえない行動にでたのだろうというのが翔愛の見解だった。
白宝は濁龍への変貌が止まり、今は影宮さんと静かな眠りについている。そのため、鱗の力も消滅したのだろうとのことだった。
「うん。母さんが落ち着いてよかった。」
レンの母親はもうわたしのことを咎めはしない。わたしはレンが寂しい思いをしないように支えてあげようと思った。
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