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揺れる瞳で光夜を見る。彼は今、何を思っているんだろう?
「こどもって...。」
光夜は本当に驚いたらしく、振り絞るように言葉を発した。
「黄花には息子がいたの。その子が月乃神社が続くように今まで頑張ってくれた。黄花との約束を守って。」
「まぁ。なんてロマンティックなんでしょう。わたしが黄花に会ったときは彼女の妊娠が分かる前ですね。
彼女から感じた神々しさは持っている耳飾りだけでなく、お腹にいるこどもからのものでしたか。」
翔愛は謎が解けたと言わんばかりに両手を合わせて嬉しそうに言った。
「でも、月乃神社は黄花の姉の息子が継いだんじゃ?」
光夜はかつて翔愛から聞いていた月乃神社の行く末について尋ねた。
「理由があって。」
わたしはなぜ黄花が息子の存在をかくしたのか、そうなった経緯を話した。
「そうでしたか。それはとても悲しいできごとがあったのですね。ミコトちゃんの浄化の力の理由もわかりました。納得です。」
光夜はさっきからずっと黙っている。そんな光夜の様子に気付き翔愛が気を利かせるように言った。
「積もる話もあるでしょう。わたしは一足お先に失礼しますね。ミコトちゃん、退院したらまたお話しましょう。」
病室に二人残されたわたしたちの間に沈黙が流れる。それを破ったのは光夜だった。
「ツクヨミのこどもって...どんな子だった?」
「え?」
光夜の質問は意外だった。彼の様子から、もしかしてこどものことをよく思っていないのではと思っていた。光夜はわたしの目をじっと見ている。
わたしは夢で見た月思人のことを思い出す。彼のことを考えると胸が熱くなった。月思人は幸せになれたのだろうか。たまらなく彼に会いたい。月思人がつないでくれた血の繋がり。今のわたしは自分を抱きしめるしかない。
そして光夜に月思人のことをたくさん、たくさん知ってもらいたい。
「ツクヨミに...瓜二つの男の子だったよ。明るくて賢くて。みんなの人気者だった。」
俯いて夢で見た月思人を思い出しながら話すわたしに光夜が近づきそっと手を握った。
「ごめん、一人残してしまって。こどもができるなんて思っていなかった。俺は...時間が止まっていたから。」
これは光夜ではなくてツクヨミの言葉だ。わたしはまた涙を流してしまう。
「護りたかったんだ、どうしても。」
わたしの頬に流れる涙をぬぐいながら光夜が言った。
「わかってる。でもとても寂しかった。」
わたしも今は黄花としての言葉をつなぐ。
「もう、離れないから。」
光夜はわたしをそっと抱きしめた。
「ここに今ミコトがいることがツクヨミと黄花、二人にこどもがいた事実を示している。ミコトはツクヨミの力を受け継いでいるんだから。」
光夜はわたしの耳元でささやくように言った。
ツクヨミと黄花、二人の愛は美を結んだんだ。花鳥風月の現人神たちが記憶を残したまま転生したこの時代に合わせるようにかつての黄花の記憶を持つわたしが転生した。ツクヨミの力を宿して。
わたしは大いなる神の力を感じた。
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