ただの天音とただのカズール3
ブクマ3桁ありがとうございます!
ハッピーエンドをお約束。
天音とカズールをよろしくお願いします。
「え………?」
天音は呻きながらも天音を抱えながら転がるカズールを見上げる。彼は苦悶の表情で一声叫んだ。
その声は腹の底から轟く銅鑼のように響き渡った。
「敵襲!」
すると森の中から数名の騎士が花畑になだれ込んできた。
彼等は掘り深く肌は浅黒く髪や瞳が赤い者が多かった。
服装は黒い軍服だ。
襟の紋章が金の獅子の形をしている。
ヒイズ國の紋章だ。
(ヒイズ人の騎士ッ…………?!)
森の奥から子供の悲鳴がした。
荒い息を吐きながら震えるカズールが「無事ですか?怪我は?」と囁く。
そのあまりの覇気のないのに気遣う甘い囁きに天音の心臓が跳ねた。
「かずーるさま。わたし………わたし。無傷です」
やっと絞り出した天音の頬を擦りながらぐったりしているカズールの腕の力が弱まった。
細まった蜂蜜のような鳶色の瞳を鳶色の濃いまつげが覆い隠した。
「か………カズール様?」
天音が身を起こすと目の前の光景に悲鳴を上げそうになるのをなんとか抑えた。
カズールの腕には矢が刺さっていたのだ。
この一帯に生息する極彩色の雁という鳥の羽が矢尻に施されている。
「レディ………離れてください。まだ安全確保が必要です」
背後にいた黒尽くめの軍服を来た騎士が天音とカズールを引き離そうとしたのを天音は抵抗した。
「そんなことより小川から綺麗な清水を!池の水はダメ!
琴乃ッ綾乃…………!聖水と私の鞄を!お湯も沸かして!」
馬車のほうから天音の無事を知って悲鳴を上げながら駆けてくる侍女達に指示を出してから、カズールの簡素な詰め襟とシャツを開けさせる。
矢は的確にカズールの腕を貫いていた。
「レディー。「癒者」の心得が………?」
背後の騎士がそわそわしながら無駄口を叩く。
皇国で殿方の服を公然と剥ぐ女はなかなかいない。「応急処置でしたら衛生兵が」と呟きながらやんわり天音を妨害しようとする。だから天音は叫んだ。
「ヒイズの民よ。騎士よ。我が名は「天音」。
皇国唯一の舞姫。「国家薬医者資格保持者」。
貴方達の国でいう所の「癒者」です!
馬車に国家資格の紋章のペンダントがあります!
お願いッ…………矢を射った狩人の子供に手荒な真似をしないで。この人は絶対に助けますから!!お願いします。この人のために言う事を聞いてください!」
侍女達が悲鳴をあげた。
天音が正式の声明を出したから。
「舞姫」であることは道中明かす気などなかったけど名乗った。
そのくらい切迫していたのだ。
背後にいた騎士はオレグと名乗った。
この部隊の副隊長だという。
さすがの彼も「舞姫」を知っているらしい。
「お望みのままに姫様。我が部隊は貴女様に従います故」
と最敬礼を示してくれた。
「舞姫様。ドルジ隊長は………?あんな屈強な方がこんなに苦しむとは。まさか「毒矢」ですか?!」
「そうです!猶予はありません!」
天音は意識が朦朧としているカズールの腕に刺さる弓矢を引き抜き、傷口に口づけた。
その光景に息を呑む騎士と赤らむ侍女達にお構いなく天音は口にした毒を目をつむり味わう。
その様相にも騎士達が面食らった。
天音はハンカチに口に含んだ毒を吐き出した。
唾液との反応と空気との反応。香りを確かめる。
(痺れ………甘い味。後からほのかに酸っぱい。複雑にブレンドしているわ………。でも私はこの味を知っている)
「良かった………助けられる。早く!清潔な水を!」
「はい!レディー!」
「貴方!女に熱いお湯は重たいのよ!働いて!」
「はい!レディー!」
「この薬草すごくしみるの。
この人が暴れないように抑えて!!」
「イエスッ…………マムッ…………」
「カズ………ッ…………ドルジ近衛隊長!気を確かに!
この嘘つきッ…………!死んだらただじゃ置かないんだから!」
天音は声を張り上げながら騎士達を顎で使い、カズール改めヒイズ國近衛隊長ドルジを治療し看護した。
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「ごめんなさい………。
ここ野盗が女の人よく攫うんだ。ついこの間も死んだ女の人がこの花畑に横たわってたんだよ。
犯人は現場に戻るって言うだろう?白い妖精さんが襲われると思ったんだ………。
恋人だったなんて………。本当にごめんなさい」
森の奥から騎士達が捕捉したのは狩人の子供の兄妹だった。
「君は立派にレディーを守ろうとした。
彼女が困っていたのがあまりに可愛らしく早急に迫った私への罰だ。あの矢は的確にわたしの煩悩を貫いた。
彼女はそんな私を見捨てず助けてくれた………。女神だ。
正に「医薬の女神」〝アマカオルニジノミコ〟の具現した姿だ………。いたた」
森林地帯の近くの宿屋で療養しているカズールは呻いた。
包帯を交換し聖水をかける天音が無言で彼をつねった。
なぜか天音が退室していない間に天音とカズールは「恋人」になっていた。
でもあの花園でカズールと「何をしていて」子供が誤解したのかと問われたら。
否定すると子供は勘違いで外国の使節団を攻撃した咎人になる。加えて天音が恋人関係を拒否したらカズールは女を押し倒した屑になる。
事故だと誠心誠意説明するより天音はその場限りの平和をとった。
生憎守りたい貞節も名誉も恥じらいもない。
そこは打算的に考えた。
「この方は異国の方。目付きが少し不穏な方だから野盗に間違われてもしかたがないわね?でもほら。近くで見るとまたたびの前の猫のようでしょ?」
「うん!妖精さんにメロメロなのがわかる!」
「さっきは食べちゃいそうなギラギラした目をしてたんだよ?お腹すいてる虎みたいだったの」
無邪気な子供二人はカズールをそう批評する。あながち間違っていないのだから天音の微笑みはひくついた。
あの焦がれたような爛々とした瞳に恐怖を感じなかった天音のほうがおかしいのだ。
(確かに。食べられそうだったけど)
天音とカズールは兄妹二人の両親とも面会し、この事は内密に不問にすると伝えた。
狩人の両親は泣いて震え上がって平伏し謝罪しどおしであった。対人に矢を射るなど。ましてや外国の要人になど事故でも本来なら牢獄行きなのだから。
カズールは「恋人をスマートに口説けなかった恥で罰なのだから、忘れてほしい」と恥じらいながら天音の肩を抱き寄せた。
睨むように見上げる天音のおでこを啄む。
演技にしては熱すぎる視線に目を合わせられなかった。
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