「うち、貧乏なの」という彼女の実家に行ったら豪華な家にガチの暖炉があるんだが
『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』応募作です。テーマは「暖炉」。
今の彼女とは同じ職場だ。付き合う前の彼女はかなりモテていた。正直何で俺と? と思わなくもない。
美人で優しく料理上手でしっかり者の彼女と付き合って二年。そろそろ結婚を考え始めた矢先、こう言われた。
「今度の休み、うちの実家に一緒に来ない?」
お、これは家族に挨拶ってやつか。
「いいよ」
「あっ、でもうち、貧乏なの……引かないかなって」
「えっ」
俺の中で貧乏な家のイメージが浮かぶ。ボロボロの家に住み飯もろくに食べられない一家。まさか彼女、結婚したら俺の給料を実家に渡すつもりだったとかじゃないよな?
「あのさ、今、給料の一部を実家に仕送りしてる?」
「? してないよ」
「じゃあ実家に大きい借金があるとか」
「んー無いと思うよ。家も車もローン無いし。でも貯金も無いけどねぇ。あはは」
「そっか」
少なくとも車はあるのか。それに普段の彼女は節約はしているけど貧乏くさくない。じゃあそこまで悲惨な貧乏じゃないだろう。
うちの実家も一般家庭だ。別に裕福じゃない……というか俺の学費の為に母が凄く倹約してたんで、わりと厳しい生活だった。
「いいよ、一緒に行く」
彼女の実家は結構な田舎にあった。それは別にいい。その家を見て俺は呆然とした。
かなり立派な最新式の一軒家だ。貧乏とは?
「やあいらっしゃい」
彼女のお父さんはロッキングチェアに座り、高級なガウンを着てワイングラスをくるくるしている。足元には熊の敷物、そばにはガチの暖炉があるんだが? それに豪華な肉料理も出てきた。貧乏とは!?
「あ、家? モデルハウスの払い下げを貰ったの」
「暖炉や家具は手作りだよ。素人仕事だけどな。わははは」
「敷物はパパが仕留めた熊よ」
「料理もお父さんが捕まえた猪とうちの畑の野菜でね。田舎料理でご免なさいね」
「ガウン? 母さんのパート先の工場で作っててな、ここがちょっと不良品でタダで貰えたんだ」
「ワインもバイト先の現物支給よ」
……貧乏とは。
「いやー貧乏だよな! 貯金無いから!」
「半分自給自足みたいなものよ。電気も屋根の太陽光発電だし」
「そうそう。だから健康には気をつけてるよ。病院代だけは肉や野菜の物々交換って訳にもいかないもんなぁ」
「……あ」
彼女が今の職と、俺を選んだ理由がわかった。
俺達は結婚した。妻の実家近くに移住し、そこで開業医になった。看護師は勿論、妻だ。
たまにお義父さん達の様子を見に行くが、その度に暖炉のそばで猪料理を食べさせて貰う。俺は今とても幸せだ。
ちょっとだけ補足。今はわかりませんが、昔は住宅展示場のモデルハウスを建て直す(新しい家に変える)時、古い家を壊して捨てるのではなく、また建てられるようにパーツをできるだけ壊さずに残し、それを格安で販売したり、抽選でプレゼントしたりしていたそうです。
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