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その三

 部室に備えてあった電気ケトルを使ってお湯を沸かして、手慣れたようすでカップを三つ揃えた。

「お茶でも飲んで落ち着けば、考えも出るだろう」

 としか言いようがない。川波も静間も黙って頷くばかりである。

 並んで座る二人にお茶を出し、自らもお茶を置いて対面に座る。何の面接だとは思ったものの言わないでおくことにした。

「そんなこと言っている場合じゃないでしょ」

「他人事だと思って」

 などと反論どころかボヤキを聞かされるのは火を見るよりも明らかである。となれば、先決は絞られる。

「念のために聞くが、二人とも自主的に着替えたわけではないんだよな」

 単なる事実確認である。

「そうだって言ってるでしょ」

「じゃなかったら助けなんて求めないでしょ」

 返す刀は鋭利だった。瀕死に陥っている場合ではない。より詳細に聞き出さなければならないことは他にある。誰が、何を、は分かっている。だとしたら、

「いつ、どこでそうなった?」

 教室で他の女子に手伝ってもらったなんてオチはなくもない、つまりは盛大に中久保カツミをからかっている案も完全に捨てきれない以上、彼女らの主張に筋が通っているかどうかを尋ねる必要はある。

「掃除終わって、部室に向かってて、」

「私が聖羅の姿見えたから声かけて、二人して廊下曲がったら」

「「こうなっていたわけよ」」

「なぜ?」

「「知るかーッ!」」

 絶叫が耳に痛い、文字通り。その声色に彼に仕込みをしている調子はない。心底、戸惑っている。

「まあまあ、ちょっとお茶でも飲んで」

 興奮の鎮静効果が緑茶にあるかどうかを知らない中久保カツミはそこにしか頼るほかない。彼女らも頭を冷やしたかったのか、素直に従った、淹れたてのお茶だったが。


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