複雑な感情
(あんなに沢山数え切れないほど教えてもらい、助けてくれた司令官を殺す!?そんなこと、できるかよ…!!)
「俺は、あの人を殺すぐらいなら、能力者を降りる リーダーもやめる なんなら、この世界がなくなってもいい」
俺が嘆いていると、ロダ様は心配そうに見ていた
「もし、本当にその日がきたら、君はどうするんだ?」
「能力を爆発させます……親父のように、一般人をも巻き込む大戦争になってしまうでしょうね 」
俺は苦笑いしながら、作戦会議室を後にした
「滝… 君には、酷な選択ばかりをさせてしまうな」
高校時代から、30歳近くになるまで、俺は長い…長い戦いをしてきた
リーダーを交代しながらも、途中で仲間といざこざがあろうとも
どんな時もやむを得ない事情がない限りは、ずっと戦いを続けてきた
司令官を本当に守りたいならば、このロダ様の国にいる争っているやつらを食い止めるのが先決じゃないのか?
などと俺は考えながら、客室へ行く
客室の扉を勢いよく開けると
「あ、あなたは!!」
「久しぶりだね トヴァースの護衛役のダガンドだ ここに来れば、滝くんに会えるってシルヴァ様から聞いていて」
ダガンド…トヴァースの護衛役を務める能力者
背が大きく俺の容姿に大変似ているが生まれ変わりではない
「会いたかったよ、君に また一段と逞しくなったね シルヴァ様やトヴァースから話は聞いている シルヴァ様が、君を蘇らせたんだろう?」
「……はい」
ダガントは首を左右に振りながらため息をついた
「なんてことだ、そこまでしてシルヴァ様は滝くんにまた戦わせたいのか…」
「俺の力が、必要なんですか?」
「久しぶりに会ったんだ、広い中庭で話そうじゃないか」
客室をよく見ると仲間たちはいない
「あれ?仲間の皆はどうしました?」
「みんなそれぞれ使っていない個室で休むように私が指示した みんなは2階にいるよ」
「そうですか 」
客室も、ロビーも、中庭もひとつひとつの空間が本当に広い 宮殿に入るのは2回目だが、未だに慣れない
唯一能力者施設と同じぐらいの大きさの部屋は、作戦会議室だ
「さあ、座りなさい 着いてすぐゆっくり出来なかったから、疲れているだろう?」
「はい、……!!」
俺は中庭のベンチに座り仰ぎみると、吹き抜けがあり日差しが差し、中庭には観葉植物が沢山置いてあった
「なぜこんな場所が…?」
「ん?憩いの場だよ 能力者のみんなが安らげるように、ロダ様が新たに増設したのさ 暗い考えも少しは明るくなるように 」
「暗い考え… そうだ、司令官が!」
俺はベンチから素早く立ち上がった
「ん?シルヴァ様がどうした?」
「司令官が、俺に殺して欲しい、って言ってきたんです!! あんなに、沢山数え切れないほど世話になった司令官を、殺すだなんて…俺には…!!」
ダガンドは俺がそう言うと腕組みをして考えた
「実はな、我が国で起きている戦いは、そろそろ終戦を迎える それに合わせて、シルヴァ様も次の世代へと、考えているんだろう」
「なら、なにも司令官が死ぬ必要はないじゃないですか!! 司令官が生きてなきゃロダ様はどうするんです!!」
ダガンドは俺の肩を優しく叩いて落ち着かせた
「シルヴァ様はね 自分がこの能力者戦争を引き起こした、と思ってるんだ 暴走した貴明さんの事も、みんな自分が引き起こした戦争だと考えている」
「……!?」
「全てを話す時が来たかな、蒼山滝くん」
ダガンドは耳元で低い声で囁き、ダガンドの部屋へ連れていかれた
「待ってくれダガンド!!」
俺が叫ぶと、ダガンドは走っていた足を止めた
「もう、時間がないんだ 君が説得する道を選ぶか、その手でシルヴァ様を殺すのか これから話すことはロダ様に言われたことだ ゆっくり考えて、決めて欲しい」
「――!!?」
とうとう苦渋の決断を決める時が、来たようだ――




