不穏な空気
「春希 君の親父さんは滝をよく思っていない 君は滝のことをどう思っているのかね?」
俺はまだ出会って間もない滝さんのことを、まだなんとも思っていなかった
ただ、考えられることは
「滝さんは、そんなに悪い人ではないと思うんです 俺は、最初に出会った人が滝さんだったからまだなにも分かりませんけど… 」
司令官は窓を見つめながら話す
「滝は良い奴だよ 弱った仲間を放っておけない、だから私は司令官に任命したのだ 伊月も、そう思うだろう?」
俺の隣にいた伊月さんも頷く
「ええ、彼はいつも一生懸命に仲間の為に戦っていますわ 私は彼が能力が強い為に影武者になりましたけど」
「伊月、ところで、頼みがある」
「なんですか?」
司令官はひとつため息をついた
「情報支部の、みづき、瞳、しぐれを一時帰還するように伝えてくれないか 彼女たちはまだリュザを見張っているだろう あまり長居すると危険だ」
「分かりました そういえば、しぐれと一緒にいた陽仁くんは?」
佐々本陽仁 かつて蒼山滝を襲った元暗殺者
司令官に腕を認められ、後に別に仲間を作り、滝と共に戦った
「陽仁は今大学生だよ 能力者の活動が一段落したら勉強したい、と言ってな」
「そうですか じゃ、私は情報支部のみんなに連絡した後、また滝さんを見守ります」
「いつもすまないな、伊月」
伊月さんは自分の持ち場へ戻っていった
「さ、て、春希 今のとこメンバーは、貴志、壮志、の3人か?」
「はい 俺たち3人で、戦っていきたいです」
「しかし、もう1人メンバーが来るんだが」
「誰ですか?」
すると、後ろからもう1人の足音が聞こえてきた
「春希!!お前ここにいたのか!!」
「なっ…金堂裕也!??」
「なんだお前達知り合いか」
「知り合いもなにも、俺の親友です!!」
俺はマジで腰を抜かすほど驚いた
裕也は能力者になったのか、髪の色が学生の時とは違い金髪になった
普段からジャラジャラしたブレスレットをするのを好んでいる
「裕也!!なんで能力者になったんだ!?誰か死んだのか!?」
「すげえ驚きようだなお前は!? 」
「だって、お前が能力者になるって思いもしなかったよ!!」
俺が驚いている傍で司令官はくすくす笑っていた
「どうだ、驚いただろう、君の親友が仲間だ ただ、裕也は…」
「どうしたんですか?」
「裕也は、ある人と戦いたくてここに来ている」
「ある人…?」
裕也は司令官室の扉の前で止まった
「春希には、あまり言いたくない 俺は地下に行く」
「まさか……」
裕也の姿が見えなくなる頃に、司令官はボソリ呟いた
「そう、蒼山滝と戦いたくて来たんだ 裕也もかなり強い力の持ち主 雷の力だ」
「それじゃ、滝さんが危ないじゃないですか!」
「君は親友を守るのか?それとも、滝を守るのか?」
俺はグッとこらえ、司令官に踵を返した
「俺は…どちらも守りたいです…将来、リーダーになるなら!!」
俺は勢いよく走り出した
「ふふ、少しずつリーダーの自覚が出てきたようだな さて」
司令官は司令官室の電気を突然消した
「リュザの気配がするな」
地下室の集中治療室では
滝さんが小さい小部屋で智嬉さんの様子を見守りながらノートパソコンで作業をしていた
「……ん?司令官からメールだ」
"リュザが紛れ込んでいる気配がするから気をつけろ"
驚いて滝さんは椅子から立ち上がった
「な、なんだって!?」
医療ポッドではまだ智嬉さんが眠り続けている
「ここで戦うわけにはいかないよな」
治療室の自動ドアから裕也が入ってきた
「……君は?」
「お疲れ様です、はじめまして、俺は金堂裕也って言います春希の親友です」
「まるで純みたいな雰囲気だな…」
ボソリと滝さんが呟くと、思わず自分で口をふさいだ
「貴方を恨みますよ 滝さん 俺の親友を、血で染めるような能力者になんかしやがって」
「えっ!!?」
裕也は滝さんを床に押し倒した
「なっ…!?」
「能力者が憎い…能力者なんてのは、戦いで他人を傷つけるような奴ばかりだ…!!そんな所に、裕也を…!!」
滝さんは頭が混乱していた
「――っくそっ!!」
滝さんは混乱していても、緊急のベルを鳴らした
ビーッビーッビーッ!!
「君は敵なのか?」
滝さんは首を締められながらも、裕也に問いかけた
「ふ、ふふ…今に分かりますよ…」




