プロローグ
僕にとってこの世界はひどく退屈だった。
僕ははたちの大学生だ。そこそこの人生を歩んできたつもりだ。仲の良い友達もいるし家族仲だって非常に良い。勉強も部活も恋愛もそこそこ努力し目標を達成してきた。そう、不満などないのだ。ただ、満足できない。生きていて、「生きている」と実感した事がない。部活で強豪校を打ち破った時、目標大学にかろうじて合格した時、好きだったあの子と付き合えた時、W杯で日本を全力で応援した時、全部が全部いい思い出だが生きている実感がないのだ。だから僕はずっと死にたいと願っていた。しかし、この世界で死ぬことは非常に難しい。安全すぎるし命の価値が重すぎるのだ。これは決して悪いことではなく寧ろ非常にいいことだ。先人たちの多くの犠牲と知恵によっていまがある。しかし、僕にはそれがひどく退屈なのだ。
僕は物心ついた時から死にたいと願っていた。まぁ軽く10年ほどであろう。しかし、自分を大切に思ってくれる人がいることが枷になった。自分が死ぬことで悲しむ人が少なからず何人か存在した。だから僕は生きた。その人たちのために精一杯生きたのだ。しかし、そんな僕でも寝る前にはいつも、このまま目が覚めなければいいのに、みんなの自分に関する記憶が無くなればいいのに、とずっと願っていた。そう願い続けること10年、とうとうその思いが通じたのか僕は転生した。元の僕がどうなったのかはわからない。もしかしたら僕が死んでいて家族や友達が悲しんでいるかもしれない。そう思うと胸が少し痛む。だが僕はその思いに蓋をした。これは地球で退屈だった僕が、異世界で生きているという実感を感じるために生きる、酷く独善的な物語だ。
※鬱展開あり




