表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート3月~2回目

適当なことをしてはならん!

作者: たかさば

 朝、息子と一緒にウォーキングをしていたら、突然隣にいたはずの丸っこい体が…立ち止まった。


「おりがみ入ってた。」


 冷たい風を受け、冷え切った手を温めようと上着のポケットに手を突っ込んだら、作りかけのおりがみ?が出てきたらしい。

 わりと普段あまりやらかさずに…大人しめの常識人を貫いている息子の意外な姿に少々おどろく。


「作りながら歩こう。」


 どちらかというと慎重で、あまりマルチタスク的な行動をしない息子の意外な宣言におどろいたのだ。

 なんと言うか、一点集中型で、何かをしながら別のことをやるというのが苦手なタイプであったはずだ。

 …というか集中していないと、注意力散漫になって何かしらやらかすんだよ、この人は。


「君、歩くときは歩くことに集中しなさいよ、足元見て歩かないと危ないですよ!」


 そうだなあ、小さい頃に木の上の鳩を見ていて地面の穴に躓いて、しこたま鼻をぶつけて鼻血が止まらなくなったんだよ、確か。


「折り紙はしまっておきたまえ、それは歩きながら製作するものではありません!!」


 いつだったか、池の上の凧に夢中になってて、目の前にある木の幹に思いっきりぶつかってメガネをおじゃんにしたっけな。


「いいですか、道はきちんと歩くためにあるのです、道は道の上で折り紙を折りながら歩く場所ではありません!道はね、歩くことに集中するべき場所なんですよ。道は歩くためにあるもの、決して折り紙を折りながら歩くための場所ではありません、よろしいか!」

「はい。」


 いい返事が返ってきたぞ、よし、さらに畳みかけよう。


「君、そもそも道を歩かせていただいているのに、歩くことに集中せずに折り紙を折りながら歩くとか失礼ですよ!折り紙だってせっかく折り紙として生まれたのに、こんな道のど真ん中でへなちょこに折られることなんて望んではいないはずです!いいですか、折り紙を折るなら、真摯な気持ちをもってきちんとしかる場所できっちりと折り紙と向き合い、礼節を守ってひとつの作品に仕上げるべきなんです!!君のしていることは、道に対しても折り紙に対しても大変な失礼にあたります!!もう少し真面目でひたむきな態度をお見せなさい!!そうすれば必ず道は君に強靭な足腰を与えてくれるし、折り紙はそれはそれは美しい造形物となって君の前に現れるのです!!!よろしいか!!」

「はい、ふふ…。」


 いい返事をしながら息子がニコニコとしている。

 …こういう茶番説教ってのがですね、わりかしうちでは日常的に行われておりましてですね。

 よーし、さらに折り紙が作り上げる創世の物語と踏み固められて道となった土たちの伝説について語らせていただこう!!

 今日は帰宅するまでの間に二本の物語を……!!!


「ぷ、ククク……!お、おはようございます!」

「ちょっと!…ふふ、おはよう、僕ちゃん!」


「おはようございます。」


 どうやら熱弁をふるっていたら後ろから近づいていたウォーキング中のご夫婦に全く気が付けなかったようだ。

 やけににこやかな笑顔を向ける顔なじみのご夫婦…、アアア!!今の絶対に聞かれてたー!!!


「お、おはようございまひゅ、ふふ、今日はひゃむいでふね!!」


 あかん、風が冷たすぎて…口がうまく動きゃしない!!!

 スタスタと歩いていくご夫婦を、赤くなった顔で見送り、見送りイイイイ!!!


「帰ったら折り紙作ろう!」


 息子はそれはそれは真面目に折り紙と向き合いましてですね。


 非常に精巧で立派なくす玉を作り上げたという、お話ですよ……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おうふ。例のごとく日常風景。 [気になる点] うわー、なんか痛い [一言] ふふふ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ