烏になった母鳥
ふかふかの綿埃みたいな毛の雛鳥。
おりこうに、母鳥を巣で待っていたのに。
「かわいいね」
雛鳥をつかまえた男の子が言った。
「かわいいね」
男の子の母親は笑っていた。
雛の母鳥はそれを見ていた。
生まれて10日なのに。
私のはじめての卵なのに。
失くしたのは、無くしたのは、亡くしたのはーー私のぼうや。
移ろい、映ろい、虚ろになったのはーー私の心。
鳴き声は、啼き声は、泣き声になったのはーー私の涙。
母鳥は声をからすほどないて、真っ黒なカラスになった。
読んでいただき、ありがとうございました。