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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第10章:古代の足跡
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第31話:出発その2

 山賊、盗賊、という類は、どこにでもいる。

 ヴェルミオン大陸の西側は、割と少ない。

 オルクト魔帝国という強国によって、ほぼ実質的に統一されているため、全体的に治安がいいからだ。

 盗賊の類が発生したとしても、オルクトには戦力を出して討伐することが可能だ。

 そのため、大規模な盗賊団、というものは発生しづらい。

 出た端から、軍事演習の標的代わりにつぶされるからだ。

 一方で、東側は、明らかに治安が悪い。

 北が親オルクト、南が反オルクトを掲げているため、ラヒリアッティとオルクトの戦線以外にも、南北の国境線沿いでは、よく紛争が発生する。

 その争いに参加した兵士や、傭兵が、野盗化する、というのは、よくある話だ。

 そして、各国は、他国に対する警戒を必須とするため、盗賊たちにたいして出せる戦力には、限りがある。

 結果として、盗賊が暴れることを許すことになってしまう。

 こういうところでも、国力に差が生まれる理由になる。

 さっさと盗賊を討伐し、街道の治安を維持できるオルクトでは、輸送におけるコストを下げることができる。

 一方で、盗賊に対抗するために、護衛を雇うことが必要な東側諸国は、輸送に関するコストが高くなるため、どうしてもオルクトより流通が滞る。

 それが、国力の向上を妨げるのだ。

「・・・・・・分かるか? 戦争していると、どうあがいても、国家の損失になるってわけだ」

 ジャンヌが、槍を振るって血のりを払い、ぼやいた。

 周辺では、撃退された盗賊たちが、あちらこちらに転がってうめいている。

 急所を一突きにされて即死した者は、まだ幸運な方だろう。

 骨を砕かれて悶絶している者や、体の一部がちぎれたようになっている者達などもいる。

 まだ息がある者もいるが、『白亜の剣牙』の団員達は、手際よくトドメを刺していた。

「・・・・・・死体は、どうするんだ?」

「道の端に避けておけばいい。放っておいても、獣が食うだろ」

 盗賊の討伐は、それほど金にならないらしい。

 金をため込んでいるようなそれなりの規模ならばともかく、街道を通る者を襲うような盗賊は、小規模でろくな財産を持っていない。

 盗賊の持ち物は、討伐したものが自由にしていい、とはいえ、街道で盗賊をするようなやつらが、金目のものをもっているはずもない。

 倒して装備を剝いだところで、二束三文にもならない、ともなれば、ただひたすらめんどうなだけである。

 だから、道の端に避けておく。

 そういうことは、おそらくよくあるのだろう。

 街道の脇を見ると、ところどころに白いものがいくつか転がっている。

 あれらが、盗賊の成れの果てなのだろう。

「・・・・・・治安悪いなあ」

「どこもこんなものだろう。こういうやつらも、戦争になれば、傭兵として参加したりもする」

 とはいえ、この程度は、さほど警戒するほどのものではない。

 ジャンヌ達『白亜の剣牙』という、明らかな護衛の傭兵団がついている一団を襲うような、うかつな盗賊にろくなものはいない。

「そもそも、それなりの規模の傭兵団なら、街道じゃなく村を狙う。開拓団な」

「・・・・・・ジャンヌの村みたいな、か?」

「あれより、もっと辺鄙なところにあるやつだな。村ごと乗っ取って、盗賊の拠点にしちまう。その上で、何でもない顔をして、村付きの傭兵団になって、戦争にも出てくる。・・・・・・誰にも知られねえうちに、盗賊団が立派で合法の傭兵団、てわけよ」

「・・・・・・対処は?」

「そうなったら、おとなしくなる。税も納めるようになるからな。上も対処を放り投げる」

「・・・・・・治安悪いなあ」

 モリヒトとしては、なんと言っていいものか、わからない。

 そうやって歩いているところで、向こうに街を囲む壁が見えてきた。

「さて、街が見えた。・・・・・・着いたら、別行動だ」

「・・・・・・どう動く?」

「一泊したいところだがな、そのまま出発する」

 ジャンヌは、言い切った。

「どうせ、アタシらは、『黒兎』の監視を受けている。このまま街に泊っても、ロクなことにならん」

 街中で襲われる、という可能性は、おそらく低いだろう、とは思われる。

 だが、いやがらせは受けるだろう。

「街中ではおそらく襲ってはこないだろう、とは言っても、確証はないし、個別にさらわれることも考えられる。それくらいなら、外でまとまって野営した方が、安全だわな」

 モリヒトの考えを聞いて、ジャンヌもうなづいた。

「お前らは、表向き旅人とはいえ、ラヒリアッティにとっては敵だからな。『黒兎』なら、街の有力者を抱きこむことだってできる。・・・・・・街中より、外の方が安全だ」

 街にたどり着いた後、モリヒト達は、すぐに出発した。

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