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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第10章:古代の足跡
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第28話:『黒兎』の任務

 構える。

 引き金を引く。

 爆発音。

 ひゅるるる、という音が聞こえて、遠くに着弾。

 引き金を引いてから、着弾音が聞こえるまでの時間を計測し、結果を記録する。

 さらに、着弾地点を望遠鏡で観測し、効果範囲と、狙った場所との誤差を計測する。

 一通りの結果を記録用紙へと書き込み、また再度『砲』を手に取る。

「・・・・・・」

 次の砲弾を込めて、再度発射。

 また、遠くに着弾。

 そして、記録する。

 都合、二十度、同じことを繰り返し、記録用紙を埋めた。

 淡々と同じ動作を繰り返した後、『砲』を置いて、記録用紙をまとめた。

「さて・・・・・・」

 『黒兎』所属の、クリストフ・ラボリは、テスターとして、『砲』の運用試験を行っていた。

 今使っている『砲』は、新型である。

 『砲』は、地面に設置して使うタイプと、肩に担いで使うタイプの二種類がある。

 今、クリストフがテストしているのは、地面に設置して使う方だ。

 マサトは、迫撃砲、と呼んでいたタイプである。

 設置して使うため、狙いを定める、と言う使い方には向いておらず、主に使い方は投石機に近い。

 動かないものを狙うために使うものだ。

 だが、

「誤差が大きいな」

 着弾地点のブレがひどい。

 肩に担ぎ、目標を狙って打つタイプは、ほぼ直線に弾が飛ぶため、狙いやすい。

 だが、こちらは山なりに砲弾が飛ぶため、着弾地点の予測が難しい。

「・・・・・・投石機と似たような感じだな。・・・・・・一応、あちらよりは安定しているか」

 クリストフは、主に技術局での新兵器のテスターを担当している。

 技術局に併設された試験場で、試作兵器の性能試験を行うことが、主な仕事だ。

「どうだ?」

「・・・・・・エセル少尉ですか」

 クリストフは、声をかけてきたエセルを見て、肩をすくめた。

「やはり、安定性に難があります。量産したとしても、ばらつきが多く、面での制圧力には不安があります」

「・・・・・・やはり、安定性、というのは、いつまでも課題だな」

 エセルの物言いに、クリストフは頷いた。

 もともと、技術局が開発していた技術は、その多くが魔術に由来する。

 結果、どうしても結果の安定性に欠ける。

 マサトが現れ、いくつかの知見を与えて以降、安定性には多少向上は見られたものの、それでも求める水準には遠い。

「・・・・・・そういえば、彼は今どこに?」

「ちょっとした任務、というか、なんというか・・・・・・」

 クリストフの疑問に、エセルは歯切れ悪く答えた。

 今、マサトは同郷の人間と会うため、技術局から出ている。

 そのことを知るエセルにとっては、どう説明した者か、という状態だ。

 マサトは、べりガルからの情報を得て、会いに行った。

 その手引き、というか、送り迎えをした部隊の報告は聞いている。

「・・・・・・クリストフ曹長」

「は!」

「任務だ。マサト・タケムラ技術士官を迎えに行く。その際、戦闘の発生が予測される。二種装備で待機せよ」

「了解!」


** ++ **


 かっ、かっ、かっ、と軍靴を鳴らしつつ、エセルは廊下を歩く。

 向かうのは、研究室。

 歩きながら考えるのは、ここからの『黒兎』の動かし方だ。

「さて、あの男の言うことが正しいなら、確かに捉えることができれば、有益ではあるのだろうが・・・・・・」

 エセルが考えるのは、ベリガル・アジンから言われた内容だ。

 マサトと同郷の人間の確保。

 そして、ベリガルが興味を示す、白い女性の確保。

「・・・・・・・・・・・・」

 頭の中で、動かせる戦力と、敵の戦力を比較する。

 敵の中で、最も厄介となるのは、おそらくは、かつての英雄。

 『白兎』の団長、ジャンヌだ。

 『黒兎』の前身となる『白兎』は、技術局のテスターとしての面が強い『黒兎』と違い、戦争の最前線を駆け抜けていた、がちがちの戦闘部隊だ。

 その団長、ともなれば、その実力は、ラヒリアッティ一、と言っても過言ではない。

 かつて、オルクト魔帝国の魔皇近衛の第一位を戦場で討ち取ったその勇名は、決して伊達ではない。

 その彼女が、今回は敵に回る。

 しかも、彼女が率いる『白亜の剣牙』が拠点としているのは、ラヒリアッティにとっては重要な食糧生産地帯。

 あまり荒らすこともできないし、『白亜の剣牙』に大きな被害を与えることもできない。

「・・・・・・難しい任務だ」

 上層部からの命令は、マサトの同郷の異邦人、並びに、クリシャ、フェリの確保。

 だが、捕獲対象も、決して戦闘能力が皆無、というわけではない。

 任務の難易度は、かなり高い。

 一方で、使える戦力は、『黒兎』だけ。

 せめて、正規軍の一部でも動かせれば違うのだろうが、

「・・・・・・さて、どうしたものか」

 エセルは、方針を考えながら、技術局の廊下を歩いていた。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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