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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第10章:古代の足跡
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第25話:ベリガルの人物評

 それからも、マサトとモリヒトは、酒を酌み交わしながら、ぽつぽつと話をした。

 互いに、もとの世界では関わりのない者同士。

 ただ、同じ世界に来たもの、ということだ。

 とはいえ、

「俺は、気が付いたら森の中でなあ」

「僕は、なんか地下だったんだよね。遺跡みたいなところだった」

「へえ・・・・・・? なんかあんのかね?」

「地脈に近いところだったらしくいよ」

「・・・・・・・・・・・・ふうん?」

 モリヒトは、そういうこともあるか、と思う。

 だが、一方で、近くで話を聞いていたレンカは、首を傾げた。

 そもそも、そんなことは起こりえるだろうか、と。

「地脈に溶ける、『竜に呑まれ』、魔力の流れに乗って、異世界へと渡る。また、その逆も起こる。僕は、それに巻き込まれたんじゃないか、と」

「さて、それは、考えにくいのじゃが・・・・・・」

「おや、レンカ? 何か、問題でもあるのかい?」

「ふうむ。・・・・・・まあ、魔力の循環の話よ。この世界から外に流れてしまう魔力に乗って、他の世界に行ってしまう、というのは、起こりうる。じゃが、外からこの世界に入ってきて、この大陸の上で目覚める、というのは・・・・・・」

 あり得ないだろう、とレンカは言った。

 魔力の循環において、大陸に流れる魔力は、真龍から流れてくる。

 世界の外から流れ込んできた魔力は、真龍によって吸収され、新しい魔力として浄化されて、地脈に流れ込む。

 テュール異王国の『王の召還』は、その経路を通さない特殊な儀式魔術だから、異世界人を引き寄せることができる。

 だが、一度浄化、というか、真龍というフィルターを通るため、異世界へと渡った後帰ってきた魔力に含まれる『不純物』は、地脈の魔力の中から消えてしまうはずなのだ。

「・・・・・・ほうほう」

 レンカからそういう説明を受け、ううむ、と二人は首を傾げた。

「でも、異世界からの物品が流れ着くことはあるぞ? 確かに、生物が流れ着くことはまずないけれど」

「それは俺も聞いたなあ。たしか、そういう物品を展示している博物館、みたいなものもなかったっけか?」

「否。それらについても、本当に、異世界から渡ってきた物品ではないぞ? 主ならば知っておるであろう? 『王の守護者』について」

「む・・・・・・」

 レンカが言っているのは、『王の守護者』となった人間が、元の世界で普通に生活していた、という事実だろう。

 『守護者』は、召還された異王の意識から生み出される、一種の魔術、正確には、魔術によって生み出された人間だ。

 それが、人間にのみ適用される、というのは、確かにおかしい話だ。

「まあ、そもそも魔力に溶けたもの。真龍の気分次第なのか、そうでないのかは知らぬが、異世界の物品の情報が逃されることがある、と言う程度のことよ」

「なるほど?」

 よくわからないが、異世界のものがこの世界に流れ着くこと自体が、真龍の匙加減、というべきものだと言えそうだ。

「じゃあ、僕がこの世界に来たのも、真龍の?」

「わからぬよ。真龍の考えなど、推し量れるものではないからのう」

 レンカは、肩をすくめ、笑って見せた。

「まあ、考えてもわからん。その遺跡を調べたら、何かわかるんじゃね?」

 モリヒトとしては、マサトが遺跡、と言ったから、そう考えた。

「なるほど? ・・・・・・まあ、どうでもいいか」

「お? 元の世界に帰ることとかは、考えてないのか?」

「今更だなあ? 特に、未練もないしね」

「そこは、人それぞれか」

「モリヒトはどうなんだい?」

「そう言われると、まあ、確かに、人それぞれ、だよなあ」

 ははは、とモリヒトは笑う。

「・・・・・・まあ、ちょっと気にはなるから、その遺跡については、調べてもらっておくか」

「もし、異世界から召喚が可能、とかなったら、ぶっ壊しておいたほうがいいぞ?」

「わかっているよ。どうせ、ろくな使い道がないだろうからなあ」

 そういえば、とモリヒトは気になったことを聞いてみることにした。

「マサトは、なんでこの村に来たんだ? 結構重要人物だろう?」

「そりゃあ、同郷の人間がいる、となればねえ・・・・・・。山の向こうの王国だと、さすがに無理だけれど、会いに行ける距離にいる、というなら、会ってみたいじゃないか」

「誰から聞いたんだ? 俺がそうだ、と」

「うん? 技術局の同僚だよ」

 そして、マサトは少々聞き捨てならない名前を出した。

「ベリガル・アジンっていう」

 モリヒトは、その名を聞いて、顔をしかめた。

 過去のかかわりから、絶対にロクな人物ではないことはわかっている。

 モリヒトがrフールにいた時、悪いことは大体ベリガルが暗躍していた。

 というか、カラジオル大陸でも、ミケイルに指示を出していたのは、あの男である。

 研究者として、ただ探求心に従っているだけ、とは言えるが、行き過ぎた迷惑者である。

「マサト。老婆心だけど、そいつとは縁切った方がいいと思う」

「え? ベリガルのことかな?」

「絶対、人の心とかないやつだから」

「ああ、それは理解しているよ」

 ははは、とマサトは笑った。

「わかってるんだ・・・・・・」

「ただ、仕事をしている上では、そんなに面倒な相手ではないからねえ」

「絶対、マサトの異世界知識が欲しいだけだぞ?」

「知っているよ。ただ、あいつは、自分に人の心がないことを自覚しているからね」

「・・・・・・いいのか? それは?」

「ないことをわかっていれば、あるようにふるまえる。そういう意味で、仕事付き合いをするなら、人当たりのいいやつだよ」

「・・・・・・絶対、だまされていると思う」

 モリヒトは、やれやれ、と首を振った。

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