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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第10章:古代の足跡
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第22話:出発より少し前

 モリヒトは、装備の点検をしていた。

 クルワとレンカがいるおかげで、武器には困らない。

 カラジオル大陸で手に入れた、黒針の剣型発動体の『ゼイゲン』と、鉈型の発動体である『ハチェーテ』だが、両方とも置いてきた。

 置いてきた、というか、『ハチェーテ』に関しては、返した。

 『ゼイゲン』の方は、もともとミュグラ教団の持ち物であったこともあって、武器として使居続けるのもどうか、と思ったため、ウェブルストに渡してきた。

 その代わりに、腕輪型の発動体である『ブレス』をもらった。

 汎用性の高い量産品であり、性能はそれほど高くはないものの、魔術の発動体として、安定性は高い。

 それ以外は、いろいろ使える武器と言うよりは、日用品、あるいは、工具として使うナイフ、ほそい絹糸の束、薬を入れられる小さな陶器の瓶、それと財布。

 革でできた小さな背嚢にそれらを収めている。

 この背嚢は、カラジオル大陸でもらったものだ。

 財布には、少額のコインしか入っていない。

 というか、そもそも現金なんてそんなに持ち合わせていないが。

「・・・・・・防具がない」

「いらないでしょ。モリヒトの場合」

「一応、ライトシールドっていう便利な魔術具もらってたんだぞ?」

 オルクトにいたころに、便利に使える魔術具兼発動体だった。

 今はもうないが。

「だから、要らないってば。アタシとレンカがいる以上は」

「・・・・・・普段は、アートリア状態なのにか?」

「アートリア状態でも、守りのための障壁くらいは張れるわよ。アタシたちの場合、二人で分担して張ってるから、かなり硬いわよ」

 ウェキアス状態のどちらかを握るなら、その障壁はさらに強固になるらしい。

 この障壁は、アートリアならば誰でも持っている能力らしく、アートリアの所有者、というのは、普通に防御力が高い。

 少なくとも、魔力が持つ限りは、この障壁が消えることはない。

「正直、下手な防具を身に着けるより、常に一定以上の魔力を持ってる方が重要」

 その点、モリヒトは魔力吸収能力によって、実質的に魔力量に限界がないため、この障壁はかなりの高性能であるらしい。

「二人分、ていうのもあるしね」

「そういうものか」

 とはいえ、

「逆に言うと、魔力切れではこの障壁切れるから」

「・・・・・・というか、その場合、アートリアも維持できないよな?」

「できなくなるわ。ウェキアスとして、武器としては使えるけれども、ね」

 もっとも、魔力切れは、下手をすると命に直結する。

 魔力の消費は、体力の消費と直結するため、魔力切れは、体力切れによる死につながる。

 訓練次第で、魔力消費による体力消費の量は軽減できるため、魔力切れを起こしても死なないようにはできるものの、それでも相当に苦しい状態になることは変わらない。

「・・・・・・そういえば、クルワやレンカが戦闘したら、俺の魔力はどうなるんだ?」

「減るわよ? アタシたちの使用する魔力は、もともとは全部モリヒトのものだもの」

「それは、俺がやろうとしたときに問題にならねえか?」

「大丈夫よ。モリヒトは、魔力を吸収できるから。魔力切れとは無縁だし」

 改めて思うと、チートな能力である。

 ナイフを磨き、鞘に納めた。

 全部の荷物を出した背嚢を、ひっくり返して振ると、ぱらぱらと砂が落ちた。

「もうそろそろ、出発の時期かね?」

「収穫はもう終わりそうだからね。・・・・・・でも、それより早く移動した方がいいかも」

「何かあったか?」

「この間、魔獣の狩りをしたでしょう?」

「ああ」

「あの時ね、森の中に、こっちを窺っている気配があったから」

「敵か?」

「どうかしら? 近づいてくる気配もなかったし、ただ見ているだけだったから」

「『白亜の剣牙』のやつらとは」

「別件ね。あきらかに、違った」

「ふむ・・・・・・」

 クルワは、うなっているモリヒトを見て、

「レンカが今いないのも、そいつらを警戒してるからだし」

「え、教えておけよ」

 知らされていなかった、ということを知って、モリヒトは軽く落ち込んだ。


** ++ **


「なるほどのう。あの女団長の古巣か」

「ラヒリアッティじゃあ、ウサギは結構重要な生き物でね。国旗にすらなってる」

 レンカは、クリシャと肩を並べて、村の外を見ていた。

 今二人がいる方向には、何もない。

 だが、レンカは、右手にある森の方から、誰かに監視されている気配を感じていた。

「主の敵、かのう?」

「確実に敵だと思うよ。それも、ミュグラ教団の息がかかっている可能性が高いかな」

「なんじゃ、クリシャにとっても敵か」

「・・・・・・そういう意味で言うなら、ラヒリアッティっていう土地自体が、ボクにとっては敵対的」

「なんじゃいそれは」

「昔ね? まあ、いろいろとヤンチャをしたから」

「・・・・・・昔、のう?」

「まあ、最近もだけど」

 その最近が、何十年前なのかはともかくとして、

「教団が協力している、っていうなら、ボクにとっても敵だからね」

 それで、ラヒリアッティの正規軍ともいくらかやりあったらしい。

「当時はまだ一隊員だったけど、ジャンヌとも戦ったことがあるよ。他は無力化できたのに、彼女だけは逃げるしかなかった」

「・・・・・・それが、今回は手伝ってくれる、というのか。ありがたいのう」

「軍を辞めた、ということは、もうやりあう理由はないっていうことだろうね」

「そこまで割り切れるものかのう・・・・・・」

「さあ? そこは、個人のことだから」

「・・・・・・ふうむ」

 レンカは、ふうむ、と考える。

 クリシャは、肩をすくめた。

「モリヒトのために警戒をするのは、いいと思うけど。たぶん、ジャンヌは、モリヒトの味方でいてくれるよ」

「ほんとうか?」

「大丈夫。・・・・・・ボクの人を見る目は確かさ」

 ふふん、とクリシャは笑うのだった。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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