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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第10章:古代の足跡
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第17話:傭兵団の事情

 傭兵、という仕事は、雇い主がいて初めて仕事になる。

 それ以外では、というと、

「お行儀がいいのと悪いのがいるな」

「お行儀がいいのは、雇い主がいるやつ。悪いのは、今はフリーだな」

 昼時になり、一度集合したモリヒト達は、昼食を取りながら、ジャンヌから話を聞いていた。

「雇われているときは、お行儀良くしておかないと、雇い主に迷惑がかかる。そうなると、クビになるどころか、違約金を払わされることもある」

 傭兵の雇用形態は、いくつかある。

 基本的には、日払いらしい。

 傭兵の仕事で大きいものは戦争だが、ラヒリアッティ共和国とオルクト魔帝国の間の戦いは、一回ごとの戦場はそれほど長期化しない。

 オルクト魔帝国側の飛空艇は優秀だし、一方でラヒリアッティ共和国側の兵器である砲も、威力が高い。

 互いに戦いを長く続けると、双方の被害が非常に大きくなってしまう。

 そのため、双方ともに、適度にやり合ったら下がる、ということを繰り返していた。

 傭兵は、基本的にラヒリアッティ側にしか雇われない。

 オルクト側では、雇う意味がない。

 国力的にも、自国の兵士だけでことが済むし、傭兵を雇ったところで、飛空艇には乗せられないからだ。

 一方で、ラヒリアッティの方も、傭兵に砲を渡すことはない。

 そうなると、傭兵の戦場とはどうなるか、というと、武器を持って、魔法の打ち合いをしながらの突撃になる。

「傭兵の中でも、長く同じ相手にやとわれていて、信頼関係が構築できているなら、そういう新兵器を回してもらうこともあるらしいけどな」

 ジャンヌは、首を横に振った。

 『白亜の剣牙』は、傭兵団として一定の信用は得ているが、砲を扱わせてもらえるほどではないらしい。

 もともとが、村を守るために発足したもので、オルクト魔帝国との戦争は、少々の小遣い稼ぎでしかない。

「まあ、アタシらが戦場に行くときってのは、大体補給物資の護衛だな」

「そうなのか?」

「ウチの団員は、農民が多いからな。力仕事は得意だが、戦闘は苦手なんだよ」

 もっとも、傭兵団に入って、手柄を立てたい、と考える若者も多いらしい。

 ただ、

「最近の戦争は、どかんどかん、とぶっ放すばっかりで、剣での斬り合いは少なくなったなあ」

「砲、だっけか?」

「もともと、オルクトが飛空艇を出してきたときから、その手の斬り合いは少なくなってたけどな。最近は、もっとだよ」

 肩をすくめ、ジャンヌは、吐き捨てるように言った。

 おかげで、傭兵たちは、ただの立ちんぼになっていることも多いという。

「ぶつかるときはあるけどな。正規兵ならともかく、傭兵とオルクトの正規兵じゃあ、勝負にならん」

「ジャンヌでも?」

「アタシなら、まあ、何人か薙ぎ払ってやることもできるがなあ」

 槍を振り回して、暴れまわるジャンヌ、というのは、容易に想像がつく。

 狩りの時にも、向かってきた獣を槍の一突きで仕留めていた。

 ジャンヌの戦いの腕は、ほかの『白亜の剣牙』の傭兵たちに比べると、頭一つ抜けている。

 そういう精鋭、とでもいうべき傭兵は、他にも数名いたが、ほとんど村の仕事には関わらず、村の警備を主にしていた。

「まあ、『白亜の剣牙』は、あの辺の村のためにある傭兵団だからな。戦いを専門にしてる団員は少ないんだよ。そういうやつらは、大体村でのおとなしい生活を目的としているやつばっかりだから、割と歳食ってるしな」

「そんなものか」

 戦争以外での、傭兵の仕事、といえば、護衛だ。

 行商人が街から街へ移動する場合に、その間の護衛をしたりする。

 あとは、魔獣の討伐や、獣の狩りなどだ。

「・・・・・・傭兵って、案外仕事がないのか?」

「農閑期に、農民が出稼ぎでやるような仕事だ。そんなに仕事の質はよくないな」

 むしろ、傭兵団、として、農民をしっかり所属させている『白亜の剣牙』が珍しい。

 大概の傭兵団は、戦争などがあると、その直前に団員の募集をすることが多い。

 そこで、戦争の間だけ、人数のかさ増しのために、農民を団に入れるのだ。

 そうすると、人数が多くなり、雇い主に対して、多くの報酬を要求できるようになる。

 だからといって、質がいい兵が集まるわけではないため、雇う側もそのあたりは計算に入れて報酬を出す。

「・・・・・・なんていうか、面倒そうな仕事だなあ。傭兵ってのも」

「面倒だよ。正直、傭兵団なんぞ、やらんで済むならやらん」

 雇い主であるお偉いさんとの交渉など、ジャンヌにはストレスがかかることが多いらしい。

「ジャンヌさんは、傭兵やめたいのか?」

「やめたって、生きていけるからな。・・・・・・ただ、止めたら、村を守るやつがいなくなっちまうから、やめられん」

「後継者とかは?」

「若手は育ててるがよお。アタシの後釜任せられるようなのは、いねえんだよなあ」

 傭兵団として運営するためには、それなりの強さと知識がいる。

 だが、ジャンヌが認めるレベルの傭兵は、全員ジャンヌよりも年上で、後継者、という感じではない。

「大変だなあ。それはそれで」

「アタシも、いつまでも若いわけじゃないんだよ」

 ふう、とジャンヌは重いため息をはくのであった。

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よろしくお願いします。


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