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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第10章:古代の足跡
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第11話:技術局の異世界人

 武器、というものに求められるものは、破壊力である。

 少なくとも、ラヒリアッティ共和国の技術局に所属する、マサト・タケムラは、そう思っている。

 ただ、その破壊力は、高ければいい、と言うものではない。

 武器の使い手まで巻き込まれるような破壊力は、過剰である。

 武器に求められる破壊力とは、破壊したい対象を確実に破壊するが、それ以外にまで無用な破壊を拡げないものだ。

「・・・・・・うーむ」

 マサトは、目の前に置かれた砲を前に、どうしたものか、と悩んでいた。

 マサトは、故郷では武器に触れたことは多くない。

 せいぜいで、趣味でモデルガンに触れていた程度だ。

 だが、それでも仕組みぐらいは知っている。

「火薬はない、というのも、面倒なものだ」

 爆発については、魔術具を使えば、代用できる。

 だが、

「安定性の問題がな・・・・・・」

 魔術具は、使い手の魔力を使って発動する。

 それゆえに、同じ魔術具であっても、使い手によって、その性能には差が出てくる。

 つまり、爆圧によって弾を放つ砲で、爆圧の発生を魔術具に頼ると、性能に個人差が強く出る。

 兵器とは、破壊力である。

 だが、兵器に求められる破壊力とは、誰が使っても同じような破壊をもたらす破壊力だ。

「求められるもの。飛空艇を無力化できる兵器。そうでなくとも、敵に勝てる兵器・・・・・・」

 難しいものだ。

 実際の兵器に触れたことなど、数えるほどしかなく、それを専門で研究したことなどない。

 そんなマサトにとって、兵器開発は手探りの部分が大きい。

 特に、この世界には、マサトの世界にはなかった、魔術、という概念がある。

 使い手のイメージによるところが大きい魔術は、あまりにも安定性からほど遠い。

 だが、安定した兵器こそ、国力の増強につながる。

「・・・・・・ふーむ」

 目を覚ました時、何も持っていなかったマサトだったが、ラヒリアッティ共和国の上層部は、その知識を高く買った。

 そして、生活の保障、自由と身の安全と引き換えに、マサトはラヒリアッティ共和国に協力することになった。


** ++ **


 マサト・タケムラ。

 竹村・雅人は、もともとこの世界の人間ではない。

 もともとは、仕事の合間にFPSゲームをすることが好きな、サラリーマンであった。

 だが、ある時、ふと目を覚ましたら、いつの間にか、この世界にいた。

 周囲は、地下と思しき、石で囲まれた密室だった。

 重たい石の扉を開き、なんとか外へと出て、そこで見知らぬ景色を知った。

 ここが、今まで自分がいた世界とは違う世界だ、というのは、魔獣に襲われ、傭兵団に助けられて知った。

 その後、ラヒリアッティ共和国の上層部へと引き渡された。

 以降、財産と自由、そして報酬と引き換えに、ラヒリアッティ共和国に協力している。

 戦争に協力することに、思うところがないわけではない。

 だが、生きるため、と割り切れる程度には、マサトは大人であった。

 ゲームでやっていたから、銃に関するある程度の知識はあったが、それでも一から再現することは大変だった。

 ラヒリアッティ共和国に流れ着いてから、五年弱。

 現地の研究者の協力もあって、銃、とまではいかずとも、砲と呼べる程度のものは、なんとか実現できた。

 今は、それをよりよくするための研究に明け暮れている。

 仕事さえしていれば、報酬も、そして尊敬も得られる立場。

 ラヒリアッティ共和国は、身分も国籍もないマサトを保護し、人権を認めてくれている。

 マサトにとっては、それだけで、国に尽くすには十分であった。


** ++ **


 マサトが作り上げた砲は、魔術具による爆圧の発生で、弾丸を飛ばす仕掛けだ。

 仕組みはごくごく単純で、初期は、地面に設置する大砲であった。

 それが、携行できるレベルまで小型化できたのは、それ用の魔術具の開発によるところが大きい。

「・・・・・・マシュー君。調子はどうだい?」

「ああ、班長。やっぱり、爆圧が一定になりませんね」

「ふむ」

 砲を作った時から、どうしても消えない課題だ。

 魔術というものの安定性の向上。

 それは、技術局の最大の課題である。

「まあ、今のところ、不都合はない。いっそ、攻撃力を高めるようにするべきかもしれないなあ」

「上の方はなんと?」

「携行性の向上を主眼にしてくれ、と」

 現在のラヒリアッティの砲は、杖の先端に砲が取り付けられた形状となっている。

 その杖の石突を地面について固定し、砲の先端を目標へと向けて使用する。

 そうでないと、反動で使い手の砲が吹き飛ばされることになる。

「もっと、軽く、かあ・・・・・・」

 マサトの中には、ロケットランチャーや、ライフルのイメージはある。

 だが、技術的に、それを実電することができていない。

 もどかしい、という思いがある。

「ま、のんびりやろう。急いでやったって、ろくなことにはならないからね」

 ははは、とマサトは笑う。

 マサトは、魔術が不得手だ。

 もといた世界には存在しない概念なだけに、どうにもイメージがつかめないのだ。

 そもそも、マサトの本職はサラリーマンで、研究者ではない。

「・・・・・・せめて、認識を共有できるだれか、がいればなあ」

「ないものねだり、というわけではありませんが」

「というと?」

「大陸の西の果てに、テュール異王国、という国があって、そこの王は、班長と同じ異世界人だそうですよ」

「・・・・・・そうか」

 この土地に来て数年、もう帰ることはあきらめた。

 とはいえ、同郷の人間がいるかも、と思えば、多少の望郷の念は湧く。

「そうか。まあ、東と西、会うことは無理だろう」

「そうですね。テュールは、オルクトの属国らしいですし、まあ、この国にいる限りは、接触の機械はないでしょう」

「・・・・・・はあ、なんというか、戦争っていうのは、面倒だねえ」

 やれやれ、とマサトはため息を吐いた。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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