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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第10章:古代の足跡
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第7話;起きた場所

 流れ着いた。

 そういう感覚だった。

 水の流れにのんびりと浮かんでいたら、そのまま岸に乗り上げた、という感じだ。

 そんな状態で、モリヒトはううむ、と身を起こした。

「・・・・・・」

 体をあちこち動かして、痛みも違和感も感じないことを確認する。

「さて」

 周囲を見回すと、少し離れたところにたたずんでいるレンカとクルワがいる。

「・・・・・・クリシャとフェリは?」

「そこらへんにおるぞ?」

 レンカが言うには、流れ着いた後、フェリが目を覚まし、その後クリシャが目を覚ましたという。

 その後、フェリがふらふらとしているのを、クリシャがついて回っている。

 レンカとクルワは、最初から目を覚ましていたが、起きるのを待っていたらしい。

「うーむ・・・・・・」

 並んで立っているレンカとクルワの二人を見て、モリヒトは唸った。

「どうしたのよ?」

「いや、俺のアートリアが両方出ているっていう状態が、なんていうか、不思議」

 『花香水景・蓮花』のアートリアであるレンカ。

 『火蛾美影・夢郭』のアートリアであるクルワ。

 どちらも、モリヒトが所有者となるウェキアスから生まれたアートリアだ。

 並んでいると、どうにも不思議な感覚だ。

「・・・・・・ところで、ここは?」

 軽く首を振って、不思議に感じる思いを振り払う。

 どちらにせよ、レンカもクルワも、モリヒトのウェキアスだ。

 気を取り直して、モリヒトは尋ねた。

 周囲は、草原だった。

 ただ、

「黒い原っぱってことは・・・・・・」

「ヴェルミオン大陸であることは、間違いないらしいわ。クリシャが、細かい位置を見てくるって」

 黒い草原と、ところどころに黒い岩がある。

 岩、といっても、かつて黒の山脈で見たようなものではない。

 黒の山脈を登った時に見た岩は、磨かれた大理石のようにつるつるとしていたし、顔が映り込むようなものだった。

 だが、今モリヒトが見えている岩は、表面はざらざらだし、多少削ったところで、その山にあった岩のようなきめ細かさが出るとは思えない。

 石としての質自体が、まったく違うように見える。

 真龍であるクロが直接作った黒の山の石と、そこらにある岩が漆黒の真龍の魔力の影響を受けて色が変わった岩だろう。

 遠目に黒い山並が見える。

「・・・・・・まあ、確かに、ヴェルミオン大陸か」

 一番納得できるものが見えて、うん、とモリヒトは頷いた。

 とはいえ、その形に、どこかしら違和感を覚える。

「なんだろうな」

「主よ。体の調子はどうじゃ? 悪いところなどないかの?」

「・・・・・・大丈夫だと思うが? ケガもしていないし」

「ケガはよいよ。我らでいくらでも治せる。じゃが、内部のことは別」

「内部?」

「アートリア二つの持ち主になってるでしょう? 負担で変な影響出てないかってこと」

 ウェキアスの所有は、基本的にはそれほどの負荷はない。

 ただ、アートリアの顕現にまで至っているウェキアスは、所有者との間につながりが生まれる。

 このつながりを通じて、所有者はアートリアへ魔力を送るし、アートリアからのフィードバックを受け取ることができる。

 この場合のフィードバックというのは、アートリアの所有者であることで得られる加護のようなもののほかに、アートリアがダメージなどを受けた際に所有者に逆流するダメージのことも指す。

 加えて、アートリアの顕現には、所有者の魔力を消費する。

 魔力消費が追い付かなければ、当然アートリアは顕現を保てない。

 ウェキアスの成長によるアートリアの顕現とは、すなわり、所有者がアートリアの存在を支えられるだけの能力を手に入れた、ということでもある。

 当然、アートリアが複数現れていれば、その分だけ魔力の負荷が上がる。

 加えて、フィードバックとなるものも、複数のアートリア全員から返ってくることになるため、その分の負荷がかかる。

 複数のアートリアの主である、というのは、それだけ負担が大きい。

「アタシもそうだけど、レンカにしても、今まで顕現や存在の維持には、地脈の魔力を使ってたわ。特にレンカは、モリヒトと同じで魔力吸収の能力があるし」

「クルワには、それはないんかの?」

「燃やしてやろうか」

 レンカのからからと笑いを含んだ言葉に、クルワがにらみ返す。

「あんま仲良くない?」

「相性は悪い。火と水」

「ほほ。こればかりは、のう」

 互いに、軽くにらみ合ったままだ。

「相性、ねえ・・・・・・」

「役立たずにはならぬよ。心配せずとも」

「そうね。それだけは確実」

「・・・・・・うーん」

 ならいいか、とはいかないだろう、と思うものの、モリヒトとしてはどうもしようがない。

 そうこうしている間に、

「お? 起きてるね」

「クリシャ」

 クリシャが、フェリの手を引いて戻ってきた。


** ++ **


「ラヒリアッティ共和国?」

「そ」

 近場にいた獣を狩って、その肉を焼きながら、クリシャはモリヒトに説明をしていた。

 なお、火はクルワが出せるし、水はレンカが出せる。

 肉を焼くためのかまども、魔術を使って作ることができる。

 魔術を上手に使えると、こういうのはすごく楽だ。

 調味料は、クルワがいくらか持っていたものを使っている。

 何の肉かといえば、鳥だ。

 上空を飛んでいたものを、適当に撃ち落としたらしい。

 捌いたのも焼いたのも、クルワである。

「簡単に言うと、黒の山脈を挟んで、オルクト魔帝国の反対側にある国」

「つまり、オルクトやテュールに帰るなら、あの山を越えないといけない、と」

「ついでに言うと、オルクト魔帝国とバチバチに戦争している、完全な敵対国」

「・・・・・・・・・・・・やばくない? 俺ら」

「いや、いくら戦争してるからって、ただの旅人を疑うほどじゃないよ」

 ていうか、とクリシャはそれぞれの顔を見て、

「ボクらを見て、オルクトの人間だ、と思うやつはいないと思う」

 この世界の人間ではないモリヒト。

 アートリアのレンカとクルワ。

 クリシャとフェリは、どこの国の生まれかわからない顔立ちをしている。

「それに、この国は、割と旅人に寛容でね」

「なんで?」

「そういう旅人が持ってきた技術を貪欲に吸収して、それでオルクトとやりあってるから。だから、何か罪を犯したりしないかぎり、基本的に旅人は受け入れの方針」

「なるほど」

「ただ、オルクトと戦争しているから、オルクト側へ渡るのは、すごく難しい」

「・・・・・・厄介だな」

 状況はわかった。

 だが、モリヒトの目的は変わらない。

 オルクトへ帰ることだ。

「方法を探さんとなあ」

「どちらにせよ、この国からは出るべきだね。この国にいる限り、オルクトと接触することは難しいし」

「戦争しているところに行ったら、向こう側に行けないかな」

「その前に、後ろから撃たれるんじゃないかしら」


** ++ **


 問題の解決の方針が見えないまま、モリヒト達は移動し、途中で村を見つけた。

 そしてそこで、『白亜の剣牙』という傭兵団と出会うことになる。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

DE&FP&MA⇒MS

https://ncode.syosetu.com/n1890if/


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