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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第9章:遺跡
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第43話:ミケイルと仲間割れ

 どん、ごん、がごん、ずどん、となんとも騒がしい打撃音が響いている。

 その中に、炎の燃える音や、風がはじける音が混じる。

「・・・・・・状況が不明だなあ」

 正直、あんまり近づきたくはない、とは思いつつも、状況を調べるためには、いかないといけないだろう。

 面倒なことだ、と思いつつも、モリヒトが進んでいく。

「あ、いた」

 周囲は、平坦な地形で、時折あるドーム状の建物以外には、身を隠せる場所がない。

 強いて言うなら、中央部の壁沿いに歩くのがいいだろう。

 とりあえず、警戒をしながら進むモリヒト達は、行く先に騒ぎの元凶を見つけた。

「あ、いた」

 そこには、確かにミケイルがいた。

 いつも通りの、三色の色が混じった白髪。

 そこに長身で鍛えられつつも引き締まった体。

 上半身はタンクトップだし、下はニッカポッカだろうか。

 どちらもわりとだるだるに伸びていて、土木工事のアンちゃんかよ、というような服装で、腰回りになんとも太く目立つベルトをしていた。

 とはいえ、ミケイルは軽やかに動いている。

 踏み込みから一瞬で敵との距離を詰め、拳を振り抜いた。

 やはり、その拳は、素だ。

 足もサンダルだけで、武装の類は見えない。

 だが、その拳は鋭く走り、敵を貫いた。

「・・・・・・ふむ」

 貫いたその背の側から、はじけるように赤黒いものが大きく飛び散る。

「血肉ぶしゃー」

「どっちかっていうとばーん、だな」

 フェリの擬音混じりの感想に、ちょっと現実逃避気味にモリヒトは返した。

 とはいえ、そうしたくなるのも無理はないだろう。

 ミケイルが戦っている相手は、人間だった。

 魔獣は周囲に屍をさらすばかりで、今動いているのは人間ばかりだ。

「あ」

 モリヒトが見ている先で、またミケイルが人間を蹴り飛ばした。

 首を蹴られた人間は、そのまま首が折れて、引きちぎれる。

「ぱわあー」

 大した威力だな、と思いつつも、状況を見定めようとする。

 ミケイルが戦っている相手は、

「・・・・・・あれ、ミュグラ教団の生き残りか?」

「なんだか。それっぽいね。囲まれているし、結構生き残りがいたのかな?」

「もしくは、山で死んだ奴らとは別勢力だったのか?」

 とにかく、結構な数がいるようだ。

 そして、なぜかそれらとミケイルが戦っている。

「なんで戦っているんだ?」

「よくわからないけど、どっちに味方するんだい?」

「まだ話が通じる方」

「じゃあ、ミケイルだね」

 クリシャの言う通りだ、とモリヒトは、ミケイルの方へと加勢することにした。

 敵は、それなりの人数がいる。

 ミケイルが半分程度減らしたようだが、それでもまだ残りで十人ほどだ。

「手っ取り早く。とはいっても、俺は対人戦は苦手だが」

 モリヒトは弱音ともつかないセリフを言いながら、剣を構えた。

「クルワ。任せてもいいか?」

「・・・・・・殺さない方がいい?」

「無力化を優先だよ。生かしておく限り向かってくるなら、もうどうしようもないしな」

 ミュグラ教団の団員が、多少痛めつけた程度であきらめるとは思えない。

 実際、ミケイルと戦っているさまを見ても、怪我をしたところで気にせず向かっていくものは多い。

 そうしたところで、ミケイルは気にすることなく屠っているが。

「下手に殺さないようにしようとしても、足元をすくわれかねない。殺す気でいこう」

「そうだね。こっちのほうが人数が少ないし、下手な情けは命取りになりかねない」

「わかったわ」

 言って、クルワが飛び込んでいった。

 モリヒトは、発動体の剣であるゼイゲンを抜いて、

「・・・・・・巻き込み怖いし、雷で制御するか」

 詠唱を始めた。


** ++ **


「よう。元気そうだな」

 ミュグラ教団を全滅させた後、ミケイルが返り血で真っ赤になりながらも、快活に手を挙げている。

「はあ・・・・・・」

 ため息を一つ吐いて、モリヒトは、魔術で湯を出してミケイルにぶっかける。

「おっと、すまんな」

 ざばざばとあふれる湯で血を洗い流しながら、ミケイルは笑った。

 モリヒトは、周囲を見回し、

「仲間じゃなかったのか?」

 あちらこちらに散らばった死体を見て、首を傾げる。

 人の死体のはずだが、もう慣れたか、それhどお何も感じない。

 ここに来るまでに、何か所かで見ているからかもしれないが。

「俺が、ここを抜けようとしているのを察知したみたいでな」

 ふん、とミケイルは、鼻で笑った。

「俺は、別にこいつらにやとわれているわけではねえってのに、何を誤解してんだか」

 どうやら、ミケイルは、内通して敵に売るつもりだ、と誤解されたらしい。

 それで、魔獣の暴走と合わせて、この機会に処分しよう、と狙われたようだ。

「・・・・・・結局、これで全滅か」

「そうなるな。俺が魔獣の死体を運び込んでたところも、魔獣が触れて吹っ飛んだしな」

「・・・・・・ああ、あの一番壊れてたところか」

「そうそう」

 だとすると、

「やっぱ、あそこを調べる必要があるかねえ」

「何か知りたいことがあるなら、まあ、必要だな」

「はあ、掘り起こすの面倒くせえな」

 やれやれ、と肩をすくめる。

 そのあとで、ふと思いついた。

「そういやさ」

「うん? なんだ?」

 モリヒトがミケイルと見ると、ミケイルは首を傾げた。

 モリヒトは、気になっていたことを聞く。

「お前、相方はどうしたんだ?」

「・・・・・・ちょっとな」

 妙な事に、ミケイルが言い淀む、という珍しい光景を見た。

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よろしくお願いします。


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