第26話:探索の流れ
遺跡の地下探索は進んでいる。
その途中で気づいたが、どうやらこの遺跡の壁は、すべて若紫色、真龍の色に染まっている。
中は暗いため、わかりづらかったが、照らしている間に気が付いた。
魔力の影響を受けやすい土地なのだから、当たり前といえば当たり前のことではあった。
ただ、壁自体はどうやら光を吸収する性質があるらしく、地下はどれだけ照らしても薄暗い。
「ここに、あえて、明りを残しておこうっていう選択肢はないのかね?」
「ん?」
地上で休んだ後に、また地下へと潜っている。
探索は今も続いている。
あれからも、さらに数組の冒険者がやられているのが発見されたらしい。
やはり、どれも地下三階以上の階層だ。
「・・・・・・ただ、それでもここにやってくる冒険者は減らない、と・・・・・・」
「遺跡としての価値はまだ残っている。特に、地下六階以下には、まだまだ未探索の領域があるらしいからね」
「割と全部調べつくされているって話じゃなかったっけ?」
「浅いところは、ね。一応言うと、まだ最下層には到達できてないらしいよ?」
正確には、最下層と思っていたところが七階層だったのだが、最近さらに下へ行く階段が見つかったらしい。
そういう情報が流れたこともあって、ここを訪れる冒険者の数も増えているという。
「ウェブルストからはそういう情報は聞いてないと思うんだが」
「知らなかったんじゃない? 『赤熱の轟天団』は、外の魔獣被害を主に対象としていた傭兵団だから、遺跡の下については対象外でしょうし」
「うん。たぶん知らなかったんじゃないかな? ユルゲン達も、今のこの遺跡の状況を知って、ウェブルストに早馬を送っていたみたいだし」
「・・・・・・それでいいのか王子、と思ったが、そういえばあいつ傭兵団率いて、好き勝手放浪してたんだった」
国元の情報などろくに知らなかったのだろう。
その過程で、遺跡に人手を送った方がいい、となって、モリヒト達に声をかけてきたのだろう。
「・・・・・・雑な仕事だなあ」
「必要な仕事ではあったんだから、それでいいんじゃないの?」
ともあれ、モリヒト達は、今日も遺跡に潜っている。
定期的に外に出て、ユルゲン達と情報を交換している。
この間戻った時は、『赤熱の轟天団』の援軍も来ていた。
「俺らも、できるなら下の方を挑んでみるか?」
「やってもいいかもね。地図を書いたら、その分報酬敷衍るんじゃないかな?」
ふふ、とクリシャは笑った。
今のところ、モリヒトがもらった地図は地下七階までだ。
地下五階までの地図は、空きもなく歩きつくされた感じがある。
だが、地下六階の地図は、よく見るとまだこの辺に何かあるのでは、というような空白がいくつかある。
それに、地下七階もだ。
地下六階に比べると、広さが半分程度しかなく、もっと広くていいような気がする。
ということは、その残りの半分部分が、まだ見つかっていない部分、ということだろう。
「・・・・・・まあ、俺らは、ヴェルミオン大陸に戻るまでの腰かけだしなあ」
「そうだね。あぶないことはしないで、ほどほどで時間をかけるのがいいんだろうね」
モリヒトの考えは、クリシャも同意している。
ウェブルストも、そこはわかっているだろう。
実際、この依頼に緊急性は少ないと見ている。
「まあ、余裕があったら行こう。俺らが言われてることって、ミュグラ教団のやつらが起こした騒動で、なんか変なことが起きてないかどうかって話だしな」
「そうね」
仕事は仕事、と割り切って進めてしまうのがいい。
今も、定期的に上に戻って報告を上げる傍ら、迎えがいつになるのか、という報告を受けている。
最も、今のところは、おそらくは半年先、と見ている。
まだまだ先だ。
「・・・・・・さて、今日も元気に地下三階だが」
「元気かなあ?」
「とりあえず、怪しいところの前に来ました」
そこは、先日、怪しい、と思いつつも見逃した、怪しい壁の前である。
モリヒトは、気になっている違和感の解消を考えているが、
「ボクとしては、面倒ごとの気配がするから、地下四階に降りてしまう方がいいと思ってる」
クリシャは、そういう。
実際、事件が起きているのは、地下三階より上部分。
地下四階に降りてしまえば、おそらく巻き込まれる可能性はない。
別にそうすることの方が安心、ということはわかるのだが、
「・・・・・・マップって、全部埋めたいじゃない?」
「バカじゃない?」
モリヒトの願望は、クルワにばっさりと切り捨てられた。
えー、とうめきつつも、モリヒトは壁をぺたぺたと触る。
「・・・・・・あー、なんだろう。たぶんな話だけど」
「うん」
「ここ、こっち側からは開かねえのかも」
「出口専用って?」
「一方通行ってやつだな」
「うーん?」
「となると、別のところに入り口がありそうだ」
ふむ、とモリヒトは考える。
もし、その先を探すなら、魔獣を引きずった形跡、あれを探すべきだろう。
ただ、
「うーん・・・・・・」
モリヒトは、なんとなく位置がわかる気がする。
モリヒトの目には、そういう流れのようなものが見える、気がする。
あくまでも気がする、という程度だが、なんとなくモリヒトには、感覚的にわかるような気がしていた。
それは、魔力の流れだ。
「・・・・・・なんか、こっちの向こうに魔力が流れてる気がする」
魔力吸収の体質によって感じる、きわめて感覚的なものだ。
だからこそ、むしろはっきりとモリヒトにはわかる。
「違う入り口探そうか」
「どうしても、探すかい?」
「んー・・・・・・」
モリヒトは、考える。
「なんとなくだけど、探しておいた方がいいような気がするんだよ」
それで、隠し部屋を探すことになった。
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