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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第9章:遺跡
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第25話:隠し部屋

 遺跡の地下三階は、大きく円形に広がった作りになっているらしい。

 地下二階から下りることのできる階段は、中央寄りに二か所。

 東向きと西向きの二か所だ。

 通路の形は複雑だが、途中に何か所か広間があり、ところどころの行き止まりに、『瘤』が発生しやすいことを示すマークがある。

「・・・・・・ふむ」

 地下三階の地図を眺めつつ、モリヒトは頭をひねる。

「どうしたんだい?」

 そんなモリヒトを見て、クリシャが声をかけた。

 殺されている冒険者たちの一団を発見し、軽く状況を検分した後、身分の証明になりそうなものや、装備品などを拾っての帰り道だ。

 荷物はそれほど多くなくとも、死人の荷物を持っている、と思うと、あまりいい気分がしない。

 とはいえ、言っている場合でもない。

 ともあれ、必要なことは、地図を読んで、迷わないようにすることだ。

 しかし、

「・・・・・・うーむ?」

 モリヒトは、やはり地図を見て悩んでいる。

「・・・・・・どうしたのよ?」

 クルワまで、モリヒトの様子のおかしさに首を傾げた。

 それに対し、モリヒトは、荷物から他の地図を出す。

 地下二階と、地下四階だ。

 どちらも、現在わかっている範囲はすべて網羅された、国家保存のものである。

「・・・・・・いや、なんていうか、地下っていうわりに、規模が違いすぎるよな、と」

「ん?」

「要は、階層ごとに広さに差があるんだよね」

 地下一階の地図も出してみた。

 地下一階に比べ、地下二階は規模が大きい。

 だが、地下三階は、それに対して狭い。

 そして、地下四階で、また大きくなる。

「・・・・・・統一性なさすぎ」

 それを言うなら、

「この、迷路みたいな通路の形状も、変、といえば変なんだが」

 遺跡、というのは、過去にあった何かしらの文明を示すものだ。

 事実、この遺跡からは、そういった文明の痕跡のようなものがいくつも出土している。

 だが、

「迷路にする意味って何?」

 どうあがいても、利用する施設、と考えるなら、こういう構造にする利点はない。

 敵の侵入に備えていた、と言うこともないだろう。

「まあ、ともあれとしてさ・・・・・・」

 うーん、とモリヒトは考える。

 そして、地下三階の地図における、円の外側に指を置く。

「・・・・・・この、地下二階と地下四階には空間があるのに、地下三階には地図上に記されていない場所。隠し部屋とかあるんじゃないかな、と」

「・・・・・・なるほど?」

 かな、と推測の口調で話しているものの、モリヒトとしては、実際にある確率はそう高くないと思っていた。

 実際のところは、あればいいなあ、くらいの願望レベルである。

「ただなあ。一応、今のところ、地下四階以下で、冒険者がやられたっていう情報は出てないんだよね」

 正確には、現在この遺跡で起きている、冒険者や盗掘者のグループなどを目標とした、おそらくは同一犯による殺害。

 これが、今のところ発見されているのは、地下三階までだ。

 地下四階以降に潜っている冒険者もいるそうだが、そちらは、魔獣にやられた冒険者や盗掘者は見るらしいが、そういう場所には大体魔獣の死体もあるため、魔獣にやられた、とはっきりわかるらしい。

 だが、今まで地下三階以上で発見されている殺害には、近隣で魔獣の死体は見つかっておらず、何かを引きずったような跡があるという。

「・・・・・・引きずった跡は、途中で消えるらしい。それも、通路の途中で、いきなり」

 引きずっていたものを持ち上げたのかもしれないが、

「その消えた近辺に、隠し部屋への入り口がある、というのはどうだろう?」

「可能性、なくはないけど・・・・・・」

 うーん、とクリシャは唸った。

 可能性としてはありえる、とは思う。

 ただ、

「そのくらいなら、もう調べられてるんじゃないかなあ?」

 地図を見てわかるような話なら、もう誰かが気づいていてもおかしくない。

 それでも、それがみつかっていないのは、実際には見つからなかったからだろう。

「・・・・・・まあ、そうなんだが・・・・・・」

 うーむ、とモリヒトは唸った。

 そして、地図の一点を指さす。

 現在地の近くとなるその場所で、

「まあ、なんでこんな話をしているか、というと」

 それから、壁の一つを指さす。

「割と怪しげなポイントが、そこにある」

「・・・・・・ここ、割と中心に近いよ?」

 帰るために、中央付近の階段へと向かっていたため、モリヒト達の現在地は、中央部分に近い。

 ただ、

「そこは、地図的に、あからさまな空白があるんだよ。・・・・・・ただ、何かがある、とは見つかってない」

「ふうん?」

 クリシャは、モリヒトが指さしたところに近づいて、杖で軽くたたいたりしてみる。

「・・・・・・音が変な感じもしないし、この向こうに空洞があるようには見えないんだけど」

「・・・・・・やっぱ、ただの柱かねえ?」

 うーん、とモリヒトは考える。

 怪しい、というカンは、怪しくあってほしい、という願望のようでもある。

 先入観的に怪しいと思い込んでいるだけ、という気もしてくる。

「・・・・・・ぶっ飛ばす?」

 クルワが、剣を壁に向けるが、

「それで開くようなら、もっと前に誰かがやってるだろ。でも、そういう感じじゃなさそうだし・・・・・・」

 モリヒトは、少し考える。

 どうして、この場所に、そこまで違和感を感じるのか。

「・・・・・・んー?」

 そうしている間に、フェリが前に出て、ぺたぺたと壁を触った。

「・・・・・・ここ、壁じゃない?」

 そうつぶやいて、またぺたぺたと叩く。

 その様子は、なにかを探しているようにも見えて、

「・・・・・・スイッチかなんかある?」

「そういうのはないわねえ」

 クルワも、いろいろ触ってみるが、ないらしい。

 しばらく考えて、

「見つからんなら、帰るか」

「いいの?」

「今は、帰る方が先だろう? どうせ、また来るし」

 探索は、今日で終わりではない。

 これからも、探索は続けていく。

「それに、今は、帰り道を早めにする方がいいと思うし」

「そうね。面倒に巻き込まれるのは嫌だわ」

 ただ、

「地図に印だけつけておこう」

 次に来た時に、改めてゆっくりと探そう、とモリヒトは決めた。


** ++ **


 モリヒト達が立ち去ってしばらくして、

「・・・・・・」

 しゅう、という空気が抜けるような音がする。

 壁に亀裂が入り、そして、そこに人が一人通れそうな程度の隙間が空いた。

「・・・・・・」

 ぬう、とその隙間から、太い腕が出て、壁の淵をつかむのだった。

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よろしくお願いします。


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