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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第9章:遺跡
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第20話:キャンプで

 うーむ、とモリヒトは唸った。

 目の前に並んでいるのは、遺跡の周りにいた冒険者や商人たちが持っていた、魔術具である。

 武器が多いのは、やはり遺跡の中に魔獣が出るからだろう。

 その他には、明りを灯すもの、水を出すもの、出口までの道を示すものなどの探索の助けになるものも多い。

 割と、旅をするにも向いている、ということもあって、行商人なども持ち歩くらしい。

「・・・・・・なるほど?」

 今回、モリヒトがこの遺跡へきている理由は、遺跡内の魔獣の間引きである。

 危険度の調査ということで、とにかく今現在わかっている範囲を一通り見て回ることになる。

 ぶっちゃけてしまうと、期限を切られているわけではないため、迎えが来るまでの間、のんびりと遺跡の中を見て回るだけでいい。

「そういえば、なんだが」

「ん? 何かあったの?」

 夕食を終え、フェリが船をこぎ出したあたりで、解散となった。

 モリヒトは、テントに戻る前に、夕食の片づけを手伝っている。

 魔術で水を集め、それで食器類を洗うのだ。

 とはいえ、ただ水を出して洗えばいい、という話ではない。

 魔術で集めた水は、意外と不純物が多い。

 魔術がイメージによって効果が変わるため、魔術で集めるにしても、水には術者が持っている水、というイメージに品質が左右される。

 酒好きの魔術師が、水を集めたら酒になった、というのは、魔術の効果の不確定さを示す、有名な話である。

 酒になる、というほどになると、さすがに特殊な例ではあるが、硬水軟水の差ぐらいは普通に出る。

 モリヒトのイメージでは、純水が出るか、と思っていたが、実際モリヒトが使ってみた際には、水道水みたいな水になった。

「・・・・・・うーむ」

 洗い物をするには、それでも問題はないのだが、この世界に来てからは、味わうことのない水だ。

 ちなみに、この土地では、洗い物は砂を使うことがある。

 器に砂を入れ、こすって、払うのだ。

 乾かしてしまえば、それで問題ない、ということらしい。

「それで? モリヒトは何を気にしているの?」

「む」

 汚れの残りが気になって、もう一度、洗いなおしていると、クルワが聞いてきた。

 それで、ああ、とモリヒトは頷く。

「ウェブルストからはさ、この遺跡は人気がない、みたいな話を聞いていたと思って」

 だが、周囲を見回すと、テントがいくつかある。

 調査隊と冒険者の比率は、二対八くらいだが、それでもそれなりに人はいる。

 百人はいないだろうが、数十人はいる。

 人気がない、と考えるには、十分な人がいる。

「割とにぎわっているな、と」

 少なくとも、冒険者相手に商人が来る程度には、人がいるのだ。

「今だけ、ということはないかしら?」

 クルワの推測は、ウェブルストがモリヒト達に依頼を持ってきた理由にもつながるものだ。

 先のバンダッタを利用したミュグラ教団が起こした事件において、大陸全土で魔獣の生息域が変わっている。

 遺跡は、魔力の濃い場所のため、魔獣が入り込む可能性があった。

 また、先の事件で、魔力の流れが乱れていることもあり、遺跡内部で『瘤』の発生確率が上がっている。

 それらを踏まえて、調査のための人員として、『赤熱の轟天団』のメンバーとモリヒト達を派遣したのである。

 だが、これだけの数の冒険者がいるなら、モリヒト達は来なくてもよかったのではないか、とモリヒトは考えたのだ。

 まあ、モリヒト達と、それから『赤熱の轟天団』のメンバーをうまく雇うための言い訳のようなものだったのかもしれないが。

「それについては・・・・・・」

 モリヒトとクルワが、意見を言い合っている中に、クリシャがやってきた。

 フェリをテントで寝かしつけた後、出て来たらしい。

「ここは、さびれているよ?」

「どういうことだ?」

「魔獣がよく出る魔獣域なら、近くに村や町ができるレベルで人が集まるからね。せいぜい、商人が立ち寄るくらいなら、さびれている方」

「そうなのか?」

「魔獣域の魔獣の密度は、相当だよ? それに、魔獣域は、魔獣以外にもいろいろな素材が採れるから」

 逆に、この遺跡では、そういった素材はほぼ採れない。

 『瘤』が発生しやすいため、ほかよりは比較的、魔獣の核石が取れやすいだろうが、それでも少ないほうだ。

「そういうものなのか」

「そういうものだよ」

 なるほどなあ、とモリヒトは頷く。

 すでに夜、暗くなっているが、今から遺跡に入っていく冒険者もいる。

 地下は、どのみち日の光が届かないから、朝を待つ必要はないのだろう。

 あるいは、夜の方が魔獣が出やすい、というジンクスでもあるのかもしれない。

「・・・・・・俺らも、明日は少し深くいくか」

「そうだね。今のところ、厄介な魔獣もいないみたいだし、ちょっと広く探索するのもありかもね」

「別にいいけれど、もしかしたら、中で一泊でもするのかしら」

「そういうこともあるだろうな」

「・・・・・・ふうん?」

 いろいろ、準備がいるわね、とクルワは、手持ちの道具を調べ始めた。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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