表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第9章:遺跡
354/436

第12話:移動する

 カラジオル大陸。

 その街に来て、モリヒトが驚いたことがある。

 夜が明るいことだ。

 ヴェルミオン大陸で訪れた都市は、夜になれば暗くなるのが当たり前だった。

 オルクト魔帝国帝都でならば、夜も明るいところはあったが、ごく一部、公共施設や、盛り場くらいであった。

 夜中になれば、民家などは普通に明かりを決して眠ってしまう。

 だが、こちらは違う。

 ただの民家ですら、しっかりと明るい。

 魔術具が発達しているこの大陸では、明りは魔術具で賄われる。

 その明かりの燃料は、そこらに落ちている石で十分だ。

 若紫色の石であれば、それを適当な大きさに削って魔術具にセットするだけで、光源となる程度の小さな魔術具であれば、それだけで稼働する。

 ほぼ元手なしの明かりとなれば、広く普及しているのである。

 そのためか、夜でも明るい家は多い。

 その家々から漏れ出す光で、夜でもある程度明るいのだ。

 その生活スタイルは、元の世界のモリヒトのそれに近い。

 山の上では、日が暮れれば眠るスタイルだっただけに、街では夜も結構遅くまで起きているので、驚いた。

「・・・・・・つか、眠いな」

「生活スタイルがね」

 ふふ、とクルワは苦笑した。

 夜になると、周りが明るいので、感覚がおかしくなる。

 眠いのに、なんだか眠れない状態だ。

「でも眠くない」

「酒いれる?」

「・・・・・・やめとくわ。余計に眠れなくなりそうだ」

 街の宿で、窓から下を見下ろしながら、モリヒトはぼやく。

 夕食はすでに終えていて、もう寝てもいい時間だ。

 だが、外はまだ行き交う人も多い。

 この時間でも働いている人は多いようだ。

 開いている店も多い。

 さすがに二十四時間営業の店はないようだが、酒場などでなくとも、日付が変わる時間くらいまで営業している店は、普通にあるらしい。

「・・・・・・俺の国だと、この時間働いている人って、結構普通だったからなあ」

「異常な国ね」

「・・・・・・よく言われてたなあ。それは」

 ははは、とモリヒトは笑う。

 仕事をしていなくとも、この時間まで起きている、というのは当たり前の社会だった。

 それだけに、テュールにいたときは、かなり早く寝るなあ、と思ったものだ。

 そのうち慣れたが。

「・・・・・・朝日とともに起きて、日が暮れたら眠るってのは、やってみると案外楽なのよな」

「そう?」

「なんかね?」

 モリヒトは、そう感じる。

「ま、とはいえ。明日は早いから」

 明日は、目的地である遺跡へと向かって出発する。

 数人の同行者がいる、ということで、早朝からの出発、ということになっている。

「そうだな。寝てしまおう」

 板戸を下ろして窓を閉めれば、外からの光は大体さえぎられる。

 多少うるささはあるが、窓枠に布をかけてしまえば、その音もあまり気にならなくなる。

「・・・・・・おやすみ」

「ええ」


** ++ **


 移動は、基本的に徒歩である。

 馬車もあるが、今回は徒歩だ。

「歩きだと、どんなもん?」

「そうですな・・・・・・。まあ、十日ほどでしょうか」

 同行者である『赤熱の轟天団』の団員に問う。

 今回同行することになったのは、四人。

 ユルゲン、シュテファン、マルクス、ハンス、とそれぞれに名乗った。

 外見で見分けるのは難しい。

 全員が同じような筋肉で、黒光りしている。

 服装も、ほとんど同じである。

 せいぜいで、ユルゲンがモヒカン、シュテファンがつるっぱげ、マルクスが坊ちゃん刈りで、ハンスがアフロ、というくらいだ。

 リーダー格なのは、ユルゲンらしく、質問をするともっぱらユルゲンが答えてくれる。

 他の三人は、大きな荷物を背負い、黙々と歩いていた。

 もっとも、視線を向けると、白い歯をきらめかせて、謎のポージングを決めてくるが。

「馬車を借りた方が速かったかね?」

「先遣隊は、すでにそうしていますよ」

 この派遣は、モリヒト達だけではないらしい。

 件の遺跡には、普段から調査のための研究者たちが常駐している。

 その保護のために、二十人ほど、先に現地入りしているという。

「・・・・・・ぶっちゃけ、俺らが行ったところで、仕事あるのかね?」

「我々は、魔術そのものは不得手ですから」

「ん?」

「正直な話、あの遺跡には、魔力が極端に濃い場所、というのが何か所かあるんですよ」

 ユルゲンの言葉に、モリヒトはさらに首を傾げた。

 ユルゲンは、何とも言い難い顔をしている。

「もしかして、行ったことあるのか?」

「ええ。なんだかんだ、あの場所は魔獣のたまり場になりやすいので、討伐依頼や、調査員の護衛依頼なども多くて。傭兵の出番が多いんですな」

「へえ・・・・・・」

 だとすれば、

「余計に俺らの出番なくない?」

「ははは。言ったでしょう? 魔術を使える、というのは優位なのです」

「それは・・・・・・」

「魔力の濃い場所では、魔術具は誤作動を起こしやすい。安全のためには、魔力の濃い場所にいる魔獣を、魔力の薄い地帯へと引っ張り出す必要があるわけです」

 だが、これはなかなかうまくいかない。

 やりようとしては、狙いの場所の中で、魔力をひたすらに消費する魔術具をあえて起動させ、そうすることで魔力を薄くしたうえで、魔力のこもった魔石を餌に誘い出すという。

 だが、魔力が希薄な地域へと誘い出された魔獣は、狂暴化する。

 それまで、濃い魔力の中で力を蓄えていたものが、急に暴れ出すのだ。

 周辺への被害が発生しかねない。

「ですが、魔術が使えれば、こちらから先手を取れるわけですな」

 魔獣は、魔力の濃い地帯にいるなら、おとなしくなる。

 近づいても敵対してこないこともあるくらいだ。

 つまりは、魔術で狙い放題である。

「期待していますよ?」

「・・・・・・あんまり、荒事は期待しないでほしいぜ。こちとら、女子供が半数以上なんだから」

 もっとも、その女子供の方が、男より圧倒的に強い一団ではあるのだが。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

DE&FP&MA⇒MS

https://ncode.syosetu.com/n1890if/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ