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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第9章:遺跡
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第10話:調査依頼

 ウェブルストの呼び出しに応じて、城へと来たモリヒトとクルワは、そのまま城の一室へと通された。

「よう。来たか」

「お呼びだそうで。王子殿下」

「やめろ。めんどうくせえ」

 け、と吐き捨てるウェブルストだが、その恰好は、以前のような半裸ではない。

 きちんと仕立てられたできのいい服を着ている。

 ただ、結構ぱつぱつだ。

「サイズが合ってないな」

「仕立て直しの最中だ」

「・・・・・・ああ、旅している間に筋肉が膨れたのか」

「膨れたんじゃない、鍛えたんだ」

 ウェブルストは、憮然とした顔をした。

 ぱつぱつ、とは言っても、きちんと着れているあたり、もともと筋肉だったのだろうとはわかる。

 ただ、それ以上に鍛えてくる、とは思っていなかったのだろうか。

「普通は、やせるんですよ」

 その隣には、普通にきれいな恰好をしたリーレイアがいる。

 案内された先で、モリヒトは、この夫婦に出迎えられたのだ。

 ちなみに、部屋にはクリシャとフェリもいる。

「そうなのか?」

「曲がりなりにも、王族ですから、かなり裕福な生活をしているのです。それが、旅の中では、食べる量が減りますから。普通は、ある程度やせるものなのです」

「なるほど」

 とはいえ、若い時期に旅に出る。

 場合によっては、十代で出ることもあるため、旅の間にある程度成長する。

 だから、普通は衣服に関しては、伸びる方には余裕があるが、膨らむ方には余裕がないらしい。

「なんとかむりやり詰めてる状態なのです」

「ふん・・・・・・」

 半裸ではない、とはいっても、胸元は開いているし、いろいろスリットが入った服に、上から余裕のある服を羽織ることで、ごまかしているようだ。

「急いで仕立て直し中。おかげで、立太子式も遅れそう・・・・・・」

 リーレイアに横目で見られて、ふん、とウェブルストは顔を逸らす。

「旅を続けるにしても、どこかの国の王都によるなりしていれば、サイズを計っておくことはできたのに・・・・・・」

 そのあたりは、ウェブルストの手落ちだろう。

 四か国はどれも友好国である。

 王族の巡礼も、どの国も共通の行事であるため、どの国でも王族は歓迎される。

 その際には、その国でサイズを測り、その国の衣装を作る、というのは、当たり前の流れであるし、その際にサイズも共有される。

 だが、ウェブルストの場合、三か国目の巡礼を終えた後、そこから『赤熱の轟天団』を率いての大暴れ期間が長い。

 その間に、結構サイズが変わってしまったのだろう。

「ははあ、・・・・・・大変だなあ。この国の人」

「得たものは多い」

 偉そうにウェブルストはふんぞり返った。

「何を得たんだ?」

「在野の人材だ。結構優秀なのを引き抜けてなあ・・・・・・」

「その大半が、かなり常識外れなので、城の中は大混乱しているのです」

「・・・・・・うーむ」

 優秀でも取り立てられていない、そこにはきちんと理由があった、ということだろう。

「・・・・・・ほんと、この国の人大変だなあ」

 ははは、とモリヒトは笑っておく。

「・・・・・・まあ、いい。それより、今日お前を呼んだ理由についてだ」

 ウェブルストは、表情を引き締めた。


** ++ **


「遺跡?」

「そうだ」

 ウェブルストが言うには、王都から数日離れた距離に、遺跡があるのだという。

「なんの遺跡だ?」

「わかっていない。昔から、よく調査隊は派遣されているんだがな」

「そうなのか?」

 カラジオル大陸の連環国家を名乗る四国が成立する以前から、その遺跡はあるらしい。

 記録も残らないほどの、大昔だという。

「・・・・・・真龍に聞けば?」

「知っていると思うか? 知っていたとして、教えてくれると思うか?」

 ウェブルストにそう聞かれ、うーむ、とモリヒトは悩む。

 知らない可能性がまずすごく高い。

 下界のことなど知らん、と言われる可能性が高い。

 よしんば知っていたとして、それを尋ねるために真龍のもとを訪れることが、この大陸ではかなり困難だ。

「・・・・・・まあ、そうか」

「それに、ぶっちゃけ、なんの生産性もない場所だからな。わざわざ力を入れて調べることでもない」

 優先度が低い以上は、危険を冒す意味もない。

「それで、調査隊を送ったり、趣味人が自発的に調べたりしている」

「結果は?」

「・・・・・・よくわかっていない」

 建築の様式が、この大陸にあるものとは全く異なっており、どういう遺跡なのかはわかっていない。

 一応、かなり高い文明の遺跡、ということはわかっているが、それ以上はさっぱりだ。

「・・・・・・ん? 俺たちに、その遺跡の調査をしろってことか?」

「いや、お前たちにそんなことを調べてもらったところで、わかることは少ないだろう? 本題はそちらじゃない」

「ん?」

 ウェブルストが言うには、その遺跡から、最近魔獣が出てきたのだという。

「魔獣は、さすがに見過ごせない」

 周辺に、人の住む集落はない。

 だから、人の被害はまずない。

 だが、魔獣がいると調査隊が入れないし、なによりも、

「魔獣の破壊衝動で、遺跡が破壊されると厄介だ」

 何のために存在しているのかわからない遺跡とはいえ、その遺跡を調べることで得られた技術もあるという。

 魔術の技術や、地脈関連の技術などだ。

 だから、調べ終わっていない今の状況で、何かが失われる可能性は見過ごせないのだ。

「というわけで、魔獣がいないかどうかの調査だな」

 とはいえ、遺跡そのものはそれほど魔力が濃い領域、というわけでもないため、魔獣が住みつく可能性は低い。

「ただ、この間の事件で、魔獣が生息域を出て移動したものがいくらかいる」

 それらが遺跡に入り込んでいる可能性がある、ということだ。

 それで、そういう魔獣がいないかどうか、というのを調べてほしいらしい。

「別に、うちのメンバーに任せてもいいんだがな。仕事をやる」

「お。そういうことか。コネ万歳」

「は! まあ、クリシャの知識と、お前の感覚だよりだ。もし遺跡についてもっとわかることがあったら、追加報酬も出す」

「そいつは、いい条件だ」

 モリヒトは、二つ返事で引き受けるのであった。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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