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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第8章:誘蛾の火、水景の蓮
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第29話:金色の杖

 ミケイルから教えられた情報は、不明な点が多い。

 サラヴェラスの知らない機能がある、ということははっきりしたが、もうミケイルはいないから、追加で聞くことも難しい。

 サラヴェラスは、それそのものに洗脳の機能がある、というのは、やはり間違いないらしい。

 しかし、宝石を付け替えたから、なんだというのか。

「・・・・・・というか、なんかバンダッタの状態を知っているのか?」

 ミケイルが残していった情報がただしいのかどうか。

 ともあれ、

「付け替えをしてみる、と」

 宝石を外し、付け替える。

 そうして、持ってみる。

「・・・・・・ん」

「どうかしたの?」

「なんか、確かに感覚が変わった気がする」

 サラヴェラスを持っているとき、集中力が異常に高まる気はしていた。 

 だが、今はそうではない。

 どちらかというと、注意力が散漫になる気がする。

「・・・・・・んー。まあ、とにかく、やってみよう」

「あいつ、信じられるかい?」

 クリシャは、懐疑的だ。

 その気持ちはモリヒトにもよくわかる。

 だが、

「さて? ベリガルの手だからなあ。たぶん、それでうまくいくような気はしている」

 信じていいのか、と言われれば、なんとなく大丈夫な気はする。

 他に信じられるものもないし、やってみるしかないだろう。

「・・・・・・ただ、あのフェリが取り込まれていないってのは、なんとなくそうかもしれない、とは思うんだよね」

「どうして?」

「カンみたいなもんだが、気配っていうのかな。バンダッタの中から、割とはっきりとフェリの気配を感じている」

 バンダッタは、妙な動きをしていた。

 そもそも、フェリが言っていたが、バンダッタは単独で行動していた時、フェリを連れていきはしたが、取り込もうとはしていなかった。

 ミケイルの情報と合わせると、今のバンダッタには、フェリは取り込めない、ということだ。

 それでも、フェリを内部にさらっていったのは、おそらくハミルトンがそう命令したからではないだろうか。

 ハミルトンは、フェリをバンダッタが取り込むことが重要、と思っていたようだし。

「まあ、とにかく、やることは決まったし、バンダッタを追いかけたいな」

「でも、どうするの? 見つける方法がわからないわ」

 クルワは、遠くを見ながら言った。

 バンダッタの逃げた方向へと追いかけているが、そのままだと、真龍のいる方向へと向かうことになる。

 だが、その手前の領域に差し掛かったら、そこからどこに行ったらいいかはわからないだろう。

「・・・・・・まあ、あの領域まで到達したら、真龍のところまで行っちまう方が早いかもしれん」

 場所を聞くだけなら、たぶんヤガルも話を聞いてくれそうな気がする。


** ++ **


 ふ、と息を吐いて踏み込む。

 そして、拳を振るう。

 拳は、魔獣の腹へとめり込み、内部を破壊しながら、魔獣を吹き飛ばした。

「ち。数が多いな」

 ウェブルストは、周囲を見ながら、部下たちに指示を出す。

 精鋭のみ連れてきているが、数の暴力はいかんともしがたい。

「・・・・・・この状況は・・・・・・」

 幸い、強い魔獣が来ないからどうにかなっているが、これで少しでも強い魔獣が来るようになると、対応しきれなくなる可能性がある。

「カシラァ! 次、来ます!!」

「おう! まともに相手してんなよ!! やつら、こっちが狙いってわけじゃなさそうだからな!!」

 できるだけ、突進の軌道上に入らず、横へと逸らすことを優先する。

 魔獣たちは、山の中央部へと向かうことを優先しているようで、あえて進路上に立たなければ、積極的に襲いに来ることもない。

 だが、

「正直、面倒なことになっているな」

 山の安全状況は、とても悪化してしまっている。

 もし、この状況が落ち着いたとして、では、山に到達した魔獣はどうなるか。

 『守り手』が復活するのが一番早いだろうが、

「・・・・・・数を減らすより、あのバンダッタとかいうのを倒すのが先か」

 あれが生きている限り、『守り手』が狩り続けられるだろう。

 ウェブルストは、そう判断した。

 実際のところ、バンダッタがどう動くのかは、ハミルトンも死んだ今、どうなるかわからないし、どうなってもおかしくない。

 だが、ウェブルストは、まだハミルトンが死んだ情報を得ていない。

「とにかく、お前ら! 今は移動を・・・・・・」

 優先しろ、と叫ぼうとしたところで、ウェブルストは三つの人影を認めた。

「モリヒトども!」

「なんだその呼び方・・・・・・」

 モリヒト達は、三人で魔獣の流れに沿って山の中央へと向かっていた。

 見れば、人数が減っている。

 モリヒト達も、ウェブルストへと近寄ってくる。

「あのちっこいのはどうした?」

 足りない一人について言及すると、クリシャが悔しそうな顔をした。

「バンダッタに持っていかれた。今は追いかけてる」

「む。取り戻せるのか?」

「たぶん? 手はあるんだが、本当にうまくいくかは、ちょっと確証はない」

 モリヒトは、手に握りこんだ金色の杖に目を落としながら言った。

「それは?」

「触んなよ? ある程度は無効化できるけど、触れると洗脳される」

「・・・・・・物騒なものを持っているな」

「俺が作ったんじゃないがね」

 それを持てるお前はなんだ、とウェブルストは問いたいが、その疑問は飲み込んだ。

「それで、お前らは・・・・・・」

「バンダッタを追っている」

「この魔獣どもは?」

「山で魔獣を狩ってたミュグラ教団が全滅したっぽい。魔獣が狩られて空いたから、そこを狙って麓の弱い魔獣が大移動しているんだろうさ」

「全滅? そうか」

 む、とその情報を飲み込んで、ウェブルストはうなる。

「俺たちは行く。あんたらは?」

「状況が不透明に過ぎる。だが、ミュグラ教団が全滅したというなら・・・・・・」

 ウェブルストが考えに沈んだのはほんの数秒。

 それから顔を上げて、

「魔獣を狩る。この数の魔獣は、放っておくと妙な被害が出かねない」

「そうかい」

 そして、モリヒト達は別れた。

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