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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第8章:誘蛾の火、水景の蓮
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第27話:意外な助け

「助けてやろうか?」

「いらん」


** ++ **


 バンダッタに逃げられ、モリヒトはうなっていた。

 逃げただけなら、放っておいてもいい。

 だが、フェリを連れていかれた、となると話は別だ。

「バンダッタを殺す方法を考えよう」

 モリヒトは、クリシャとクルワの二人に言う。

 クルワは、腕を組んで考え込んだ。

 一方で、クリシャは、バンダッタが逃げていった方をにらんでいる。

「・・・・・・フェリだけでも取り戻す方法は?」

 クルワは言うが、

「わからん」

 モリヒトに、その答えは返せない。

 今追いかけて、それでフェリが取り戻せるのか、というのも、正直わからないのだ。

 もう取り込まれてしまっていたら、たとえバンダッタを殺せたとしても、もう遅い。

 そもそも、殺し方もわからないし。

「端から削っていって、フェリが出てくる、という保証もなし」

「試さないってわけじゃないよね」

「下手に削ると、フェリに当たりそうで怖い」

「ん・・・・・・」

 モリヒトの言葉に、クリシャも詰まる。

 フェリが取り込まれているとして、バンダッタは不定形な怪物とはいえ、その体は不透明だ。

 どこにいるのかわからない以上、下手に攻撃を当てると、フェリに当たるかもしれない。

 せめて、フェリがあの体のどこにいるのかを知るすべがないとだめだ。

「あとは、フェリが自分で脱出してくるか、かな」

「できると思う?」

「できるならやってると思う」

 ともあれ、

「離れすぎてもなんだし、追いかけるか」

 モリヒトは、バンダッタを追いかけるために走り出した。


** ++ **


 クルワは、走るモリヒトを追いかけながら考える。

 モリヒトの足はそれほど速くない。

 魔術による身体強化はそれなりにかかっているが、それでもその出力はそれほど高くない。

 だから、クルワの方がよほどに余裕がある。

 クルワには、剣と炎の魔術の二種類の攻撃手段がある。

 だが、どちらもあのバンダッタには、効果が薄い。

 体の一部を炭にしても、バンダッタはすぐに再生ができるからだ。

「・・・・・・モリヒト、どうするの?」

 クルワにしてみると、フェリ、というのは不思議な相手だ。

 いや、モリヒトも、ではある。

 山で怪我をして、意識を失って転がっていた。

 拾って、手当をして、アバントの小屋まで連れて行った。

 それから、ずっと行動を共にしている。

 モリヒトは、結構好き勝手行動しているように思う。

 だがクルワがこうしたい、と言えば、きっとその通りにするのだろう、という変な確信がある。

 よく考えているように見えて、何も考えていないように見えて、なんか無駄に考えている。

「とにかくバンダッタを追う。結局、なんかあいつフェリに執着してるし、どっちにしろ、やっぱり倒しておかないと安心できないってことだ」

 本当は、麓にまで下りてしまえば、不安定な魔獣であるバンダッタは、存在を維持できなくなるから、脅威ではない、という判定だった。

 だが、追い付かれてしまった以上は、放置ともいけない。

「フェリを助けることに関しては、今は情報ないから、とにかくやってみるしかないな」

「何か、手はないのかい?」

「・・・・・・ヤガルが協力してくれるなら、まあ、あるいは?」

 モリヒトは、言いながらも、自分で無理だとわかっている。

 真龍にとっては、バンダッタなど脅威でも何でもない。

 そんな状態で、フェリを救うために力を貸してくれ、というのは通らない。

 何か利用できる手も考えるが、

「無理だ。結局、バンダッタ相手に勝負する以外に手がない」

 『守り手』相手でも、それなりに手をかけている。

 バンダッタは、『守り手』と違って、殺し方が見えない。

「・・・・・・やべえな。マジに手がない」

 うーん、とモリヒトは悩んでいる。

 クルワは、モリヒトを見て、少し首を傾げた。

「何か、思いつく手はないの?」

「ない。・・・・・・いや、一個ないこともないんだけど、今はムリ」

「どうして?」

「俺のウェキアスを呼べればな。あれなら、バンダッタの魔力も吸い尽くせると思うから、たぶんいける」

 ふーん、とクルワはうなづく。

 それから、もう一度モリヒトを見て、少し考え込んだ。

「まあ、モリヒト次第、と・・・・・・」

「何が?」

「ウェキアスを呼ぶこと。なんの手掛かりもない?」

「・・・・・・そこなあ、あるようなないような?」

 モリヒトは、クルワを一瞥した。

 目を合わせて、それから、前を向きなおす。

「まあ、とはいえ、どうすればいいのかわからん」

「・・・・・・」

 三人が、走りながら、黙った時だった。

「おいおい。じゃあ、知恵をかしてやろうか?」

 そんな声が聞こえた。


** ++ **


「助けてやろうか?」

「いらん」

 モリヒトは、反射的に断っていた。

 その声の主は、白い長身の男だ。

「おいおい! 聞いといて、損はないと思うぜ?」

 両手を広げ、にや、と笑いながら、ミケイルは三人の前に立ちふさがった。

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