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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第8章:誘蛾の火、水景の蓮
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第14話:街中で

 花屋の店主に別れを告げ、モリヒトは街の中を歩いている。

「んー」

 上の空である。

 今日、モリヒトが持ち歩いている発動体は、ハチェーテとゼイゲンだ。

 サラヴェラスも持っているが、こちらは、布で厳重にくるんだうえで、きつく縛ってある。

 持ち出すとフェリがすごい嫌な顔をするが、かといって、洗脳の性質を持っている魔術具である以上は、そこらに放置するのも怖い。

 というわけで、厳重に封印して持ち歩いている。

「・・・・・・あむ。おー」

 先ほどの花屋で、モリヒトが実験的に咲かせまくった花は、花束になってフェリの手元にある。

 大きさも色も形もばらばらに咲いており、なんともちぐはぐなものになっている。

 とはいえ、フェリにとっては、見た目などどうでもいいようで、

「あむ」

 一本一本、花を取りながら口にしている。

「おいしい?」

「あまーい」

 それから、一本を取り、クルワに差し出して、

「はい」

「・・・・・・ありがとう」

 小さい花を口に運び、クルワはもぐもぐと口を動かす。

「・・・・・・甘いわ」

「ふーむ・・・・・・」

 基本的に、同じ花が咲くようにイメージしたはずだった。

 だが、結局咲いた花は、何もかもばらばらだ。

「・・・・・・花の種類も、一種類のはずだったのに」

 なぜ、こうもばらばらになってしまったのか。

 その結果もそうだが、その中で、一本。

 燃えてしまった花についても気になっている。

 なんで燃えたのか。

 燃える要素はなかった。

 燃えるようなイメージもなかった。

 あの時、あったことといえば、

「・・・・・・」

「なあに?」

 フェリを挟んで向こうを歩くクルワを見る。

 あの時、フェリが自分の肩に手を置いていた。

「・・・・・・んー?」

 何か、引っかかるものがある。

 だが、それが、妙にひっかかって、出てこない。

「・・・・・・クルワ」

「何かしら?」

「・・・・・・なんか、ついてきてる?」

「ああ、うん。そうね。なんかね」

 やれやれ、とモリヒトはため息を吐いた。

 考え事に、集中させてほしいものである。

「仕方ない。宿へ戻ろう」

「それまでに、襲われなければいいけれど」

「冗談じゃねえよ」


** ++ **


「・・・・・・ああいう感じかあ・・・・・・」

 花屋の店主は、三人の背中を見送って、ふーむ、と考える。

 その背中が見えなくなった後、桶の水を捨て、店の準備をしまう。

 どうせ、今日はもうお客は来ないだろうし、と片付けを済ませたところで、

「アネゴ」

「はいはーい」

 暗がりから、店主に声がかかる。

「護衛、ご苦労様ねー」

「いえ。カシラの大事な人、万が一があっちゃいけやせんで」

「ふふ。じゃあ、わがまま聞いてくれてありがとね」

「・・・・・・いかがです? あの客人について」

「悪い人じゃないし、あの人の敵になる人じゃないね」

 うんうん、と店主はうなづく。

「だから、信用して大丈夫」

「ですかい。・・・・・・で、アネゴはここからどうしやすか?」

「うーん。いろいろ考えたんだけどね」

 ふふ、と店主は笑う。

「ちょっとおとなしくするよ。その分、あの人のところに戦力送ってあげて」

「いいんですかい?」

「うん。ちょっと、足りなさそう。彼らの力も、借りられるだけ借りましょう」

 店主は、店をしながら、この街で収集した情報を考えて、顔をしかめた。

「たぶん、今回の事件、みんなが思ってるより、大事件になりそうだから」

「そいつは・・・・・・」

「私も、戻ることにする。・・・・・・戦力を集めるよ」

「わかりやした。みんなにも伝達しやす」

「お願いね」

 店主は、広場、噴水のまわりにある、活気のある人々を見つめる。

 この国には、今、他の大陸からの戦力も来ている。

 あの団体は、その大陸でも手配されているそうだし、協力を要請することもできるだろうが、

「この大陸のことは、この大陸で始末をつける。・・・・・・舐められないってのも、大事よね」

 やれやれ、と店主はため息を吐いた。


** ++ **


「よう」

「・・・・・・・・・・・・」

 追いかけられている、というのは感じていた。

 せいぜいで、賞金稼ぎか何か、と踏んでいたのだが、

「まさか、お前かよ」

「街に来ているって聞いてなあ」

 ははは、とその長身の男は笑う。

 三色混じりの白い髪。

 筋肉質の長身。

 ごく当たり前の町民のような服を着ているが、かなり目立つ。

「おっと・・・・・・」

 どこからか飛来した矢を、ぱしん、とつかんで、

「ちょっと待ってろ」

 ミケイルは、走り出した。


** ++ **


 ミケイルは、建物の屋根の上をかける。

「ふん」

 色付きに対する賞金は、ミュグラ教団がかけているものだ。

 いろいろ実験に使えるため、色付きを回収しているのである。

 差別されている存在、というだけあり、回収率はそれほど悪くはない。

 そういった存在を狩りだすものも、それなりにいる。

 ミケイルに矢を射かけてきたのも、そういう手合いだ。

 ミケイルはミュグラ教団の仲間だが、色付きそのものに賞金はかけられているため、髪を隠さないと街中ではすぐに襲ってくる。

 退屈しないからいい、とは思っているものの、こういう時には面倒だ。

「やれやれだな」

 屋根の上を駆け抜け、矢を飛ばしてきた敵に肉薄。

「ふん」

 拳一つで、黙らせる。

 だが、相手も一人ではない。

「次々、と」

 ミケイルは、街中を駆け回って、賞金稼ぎ達を叩きつぶしていった。

「数が多いな」

 面倒、とミケイルは思う。

 ミュグラ教団の大半は、山の方に行っている。

 そのせいか、賞金が増額されているという。

 場合によっては、バンダッタに色付きを食わせるつもりもあるのだろう。

 そのせいか、賞金稼ぎが多い。

 街中に潜伏していると、あちらこちらから狙われて、休んでいる暇がない。

「・・・・・・しかしあいつ、何しに来たんだ?」

 さっき見つけたモリヒトを思い出し、ふん、とうなる。

「まあいい。後で聞きゃあいいさ」

 ミケイルは、さらに加速した。


 賞金稼ぎ達を黙らせて、元の位置に戻った時、モリヒト達は消えていた。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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