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竜殺しの国の異邦人  作者: 比良滝 吾陽
第7章:白という
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第21話:『守り手』を倒したい

 『守り手』は、異常なほど強力な魔獣である。

 正直、魔獣としての性質は、異常とも言えるくらいに強い。

 魔獣は、総じてただの獣より頑丈ではあるが、『守り手』のそれは、まさしく異常だ。

 その能力が、周辺環境の豊富な魔力によって支えられている。

 それは、前提事項である。

「実はね。この大陸で、一番『守り手』の討伐方法が実現性高いのは、ミュグラ教団だったりする」

「なんで?」

「あいつらをやるのに、一番いい手段は、この周りの濃い魔力をどうにかすること」

 それは道理だろう。

 どうあがいても、周りに使用可能な真龍の魔力が多量にあるこの状況では、魔獣の方が能力が高くなる。

 周囲の魔力を使いこなす、という点では、圧倒的に魔獣の方が、人間より優れているからだ。

「なんだかんだ言ったところで、ミュグラ教団は、地脈に関する技術力なら一番だよ」

 ミュグラ教団は、地脈を利用することを研究しているが、この大陸では、地脈を遠ざける方が研究としては進んでいる。

 この大陸に派生したミュグラ教団も、下地はそこだ。

 だからこそ、両方の技術のいいとこ取りができるのが、カラジオル大陸のミュグラ教団の強みだという。

 そういう意味で、環境によって強化されている『守り手』の強化を解除することができるのが、ミュグラ教団の技術だ。

「・・・・・・そこらへん、ちょっと取りに行っただけだったんだけどねー」

「なんか成果は?」

「なし! あいつら、そこらへんの技術退化してやがった」

 け、とクリシャは吐き捨てた。


** ++ **


 そういうわけで、戦闘は、ほぼ正面からの突撃一択だ。

 モリヒトは、フェリと一緒に後方。

 正面への攻撃は、クルワの担当。

 クリシャは、その援護になる。

 ただし、

「攻撃の要点は、モリヒトだからね?」

「うん。俺がどこまで近づけるか、だよな」

 『守り手』にかかっている、環境にバフ。

 それの解除に必要なのは、周囲の魔力をどうにかすることだ。

 その担当は、モリヒトである。

 といっても、やることは単純で、

「とにかく、ある意味無駄に魔術を使いまくる、と」

「それだけじゃ足りないから、ボクの方でも、地脈を吸い上げるけどね」

 人間のそれだけで取れる分は、それほど多いものでもないし、ないよりはマシ程度ではある。

 ただ、それ以上に重要なのは、

「『守り手』から、魔力を奪う、だよな」

 できるだけ『守り手』に近づき、『守り手』が身体強化にまわしている魔力を奪う。

 どれだけ奪えるかが、そのまま勝率に繋がるわけだ。

「さて、じゃあ、やろうか」

 クリシャの合図で、クルワが飛び出していった。


** ++ **


 戦闘の開始は、やはりクルワの突撃から始まった。

 ただ、その前に、モリヒトは水筒をひっくり返す。

「その量の水で足りるかい?」

「足りない分は、足せばいい」

 周囲は乾燥した空間で、水気を集める、というのは、確かにありえなさそうだ。

 だが、水のない空間に水が滲み出る、というのは、モリヒトはもう知っている。

 呼び水、という意味での水。

 そして、イメージ。

 あとは、それらの現象を成すための、膨大な魔力だ。

「では、やってみるかね」

 こほん、と咳払い。

 それから、サラヴェラスを構える。

「―サラヴェラス―

 水よ/具現せよ」

 なければ、魔力を使って具現化すればいい。

 魔力を物質に変換するのは、すさまじく魔力を消費するが、それを周囲に溢れる真龍の魔力で補っていく。

「満たせ/具現せよ/広がれ/我が剣」

 一度見ている。

 足首にまで届かないほどの、薄い、水の層が広がっていく。

 足りないものは、蓮の花だけ。

 かつて、『花香水景蓮花』が呼び出した、蓮の花の乱れ咲く、水の流域。

 その水部分だけの再現だ。

「・・・・・・クリシャ。これで行けるか?」

「十分十分」

 言いながら、クリシャは飛んだ。

 そして、杖を一振り。

 周囲ににじみ出た水が、その一振りで持ち上げられる。

「よっし、じゃあ、弱点突いて、いってみようか」

 さらに一振り。

 それで、水が散弾のように、『守り手』へと向かっていく。

 クリシャが杖を振るう度、その動きは複雑に変わりながら、『守り手』へと殺到する。

 体が濡れるのを嫌がって、『守り手』は体をよじる。

 だが、それを追い、クルワが斬りかかる。

 そして、斬れて、血が流れる。

 『守り手』は叫ぶ。

 だが、

「足りねーよ、と」

 モリヒトが呼び出した水だ。

 モリヒトにも操れる。

「で、水は、お前の足元にもあるぞ、と」

 水をからめ、足を取る。

 動きを鈍らせ、クルワに斬りかからせる。

 そして、水が地表を覆うため、周囲に溢れる魔力量は一時的に少なくなっている。

「ち、きっついな」

 単純に魔力を水に変えているだけだが、異様に魔力の消費が重い。

 周囲の魔力は使えるが、ただ操るだけでもまったく足りていない。

 だが、

「勝機あり。なら、勝つまでくらいは、耐えて見せるさ」

 モリヒトは、魔力を使うために集中した。


** ++ **


 三人の闘いを、フェリは見ていた。

 モリヒトのさらに後ろの安全圏だ。

 だが、フェリは、じっと、闘いを見ている。

 特に、モリヒトが広げた水の景色。

 それをフェリはじっと見ている。

「・・・・・・ん」

 不意に一つを頷いて、フェリは一歩を踏み出した。

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


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