悪魔の駅「箕」
これは本当にあった話なんだ。
昭和の終わり頃。当時小学生だったのだが、肺を患い、親の計らいもあってか田舎へと転校。
本当に何もない場所で、駅だって無人だ。
駅名は「箕」。
小さな駅で、木造。蜘蛛の巣や蛾のサナギの抜け殻も壁にたくさんあり、近寄りがたい場所だった。
転校した時期が悪かった。夏休み前と言うこともあり、友だちなど出来ないまま夏休みに突入。
病状もあるし、友人もいないので、夏休みの宿題をして家で過ごすしかなかった。
夏休みも終わり、学校に行って宿題を提出。
数日がたち、ようやく友人というか、顔見知り程度の仲間ができた。
ふと──。
友人の一人が誘う。
なんでも、箕駅の掲示板に夏休みの宿題で提出した絵を貼りだしているというのだ。
それも出来がいいものを。
自分はまったく自信が無かったが、みんなが行くというので、あの気味悪い箕駅に……。
すると少しばかり人だかり。
珍しいのか、掲示板を眺めている。
友人たちも声を上げた。
「わ! すげえ!」
「でも気味悪くね?」
そこには、暗いトーンで今にも襲いかかりそうな悪魔顔の熊の絵だ。躍動感があり、口の中は真っ赤に染まっている。
見る人から見れば気味が悪いだろう。
しかし、これは自分が書いた絵だ。熊が好きなので書いたのだ。
「それ書いたのボクだよ」
「あ、クマの絵キミの?」
あ、くまのえきみの
あくまのえきみの
悪魔の駅「箕」
バンザーイ!
バンザーイ!
バンザーイ!
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