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Stonebridge Attacks!!  作者: きっと小春
第一章 辺境の村の狩人:キース
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第五話 冒険の準備

東門の入口付近に並ぶ複数の商店の一つ「買い取りの店:オーシー」に入る。

買い取りに関しては、この店か冒険ギルドぐらいしかない。


突撃カラスは、思いのほか、高値で買い取ってもらえた。


売った後で理由を聞いてみる。

肉は柔らかくジューシーで、濃厚な味わい。内臓は、解熱剤や鎮痛剤として利用でき、羽はお守りとして重宝されるらしい。


4羽で銀貨40枚となった。


店を出て、すぐ隣の店「武具と雑貨の店:ダラス」に入る。


新しい短弓は銀3枚だったが、今日の様に壊れた場合、予備がないと窮地に追い込まれるため、中古の短弓を2つ買うことにする。


それに新品の矢を30本をつけて、銀貨3枚だった。


まだ手持ちの銀貨に余裕があるな。


あれから毎日のように、パーティーへの参加をパーンが説得しに来る。

そして俺はパーンの粘りに負けてしまい参加することとなっていた。


うーん。丁度いいや。冒険のための装備を整えることにする。

マント、非常食、油、麻痺の毒、中級薬草などを、銀貨4枚で購入した。


家に着くと、納屋で中古の短弓1つとマントなどを手鏡を介して、アイテムボックスに入れる。

余計な詮索はされたくないのだ。


家に入り父カールに、銀貨13枚を渡した。


パン職人の母マーシュが作ったパンと、クライナ魚の塩焼きが、夕食のテーブルに並ぶ。

それらを食べながら、突撃カラスに襲われたこと、辺境の魔女に助けられたこと、短弓が壊れたため中古を買ったことを報告した。

夕食後、突撃カラスとの死闘からか、睡魔に襲われ、少し早いが就寝する。


▼統一暦 4752年 8月 27日 ゴートウェイ王国:辺境の村シルブルズ 


そして翌朝。血相を変えた母マーシュの怒号により、俺は起こされる。

「キ、キース!! あんた、何をしたの!? 守衛たちが、お前を捕まえに来たのよっ!!」


両手両足の革製の拘束具が、事の重大さを実感させる。

俺は村人の冷ややかな視線を浴びながら、詰め所まで歩かされた。


守衛の詰め所の取調室では、フル装備の守衛3人に囲まれ、反逆者として尋問されている。


「貴様の目的はなんだ!? どんな呪われた術でワイバーンを召喚したのだ!!」

「突撃カラスを村へ誘い出したのは、お前か!?」

「辺境の魔女と、どのような契約を結んだのだ!?」


矢継ぎ早に質問が飛び交う。勿論、狩りの練習という回答では、受け入れてもらえない。


左手の甲に、3本目の拷問用の針が刺さる。


すると、”復讐の卵のチャージが完了しました。”頭にアナウンスが響く。


俺が、守衛共を睨み、次なる手を考えていると、扉の外が騒がしくなる。


「こ、ここは、立入禁止となっております」パーンが強引に入ってきた。


「キースが、反逆者などありえん。お前ら何を考えている!?」


詰め所にて尋問レベルの問題が発生すると、村長へ緊急連絡が入る。

パーンは偶然にも、その連絡を聞いてのであろう。


「パーン様。このことはお父上には、お伝えしないで起きますので、どうかお引き取りを」

守衛であっても、独裁者である村長ダーンの息子を手荒に扱うことなどできず、なんとか帰ってもらおうと懇願する。


「だから、何を証拠に……」


「ふむ。そうですな。まずは、12歳の子供が、この状況で、睨み返すなどできようありません」

手の甲に拷問用の針が刺さったキースが目に入る。

確かに、キースの姿は異常だ。痛みよりも恐れよりも怒りに満ちていた。


「おわかりですかな。パーン様」


友を救うべく、必死に反論となる材料を探す。

しかし答えを見つけることもできずに、時間だけが過ぎていく。

そのとき、勢い良く扉が開き、村長ダーンが守衛と共に入室してくる。


「パーンを拘束し、我が家まで連れてこい」

パーンは、守衛に両脇を抱えられ詰め所を後にする。


気を取り直し隊長が、本命の質問をする。

「さて、キース。君は随分と、奇妙な力を持っているようだが?」


何故知っているか?丁寧に説明される。


監視塔からの死角で狩りをしていたがキース。

だが、突撃カラスの騒動で、守衛たちが、数名の斥候を放ち、キースを観察していたのだ。

おいおい、見てたのなら、助けろよ。しかし……。


うーん。やばいな。


室内にできる影は、深淵の影のチャージ条件になるのだろうか。


「答えろ!!」更に拷問用の針が、手の甲に刺さる。


”復讐の卵のチャージが完了しました。”


同一人物に攻撃されても意味がないんだよな。


こういうときの異世界転生者の交渉って、あっと驚く言葉の駆け引きで、どうにか切り抜けるんだろうけど、俺には無理だ。何も良い案が浮かばない。


「やめたまえ。フレイン隊長」

声が聞こえた部屋の角を凝視すると、何もなかった空間に黒いローブを着た男が、浮かび上がる。


黒いローブの男は、ゆっくりと、キースに近づきながら話す。

「我は、王国直轄第二暗殺部所属のエリグラと申します。本来なら、人前に出ることは禁止されていますが……。異常な存在のあなたが、王国にとって、どのような意味をなすか。それを見定めなくてはならないのです。正直に答えてほしい。あなたは何者なのですか?」


エリグラは、村長ダーンとラーサリル帝国の内通疑惑を調査するために派遣されている。

このことは、偶然にもこの部屋にいる者だけが知っていた。


さらに、雲行きが怪しくなる。エリグラと名乗った男のHPゲージの背景が赤くなる。

「あっ、あの……、ぼ、僕はどうすればいいの?」子供っぽく、尋ねてみる。


「とても簡単です。全て正直に答え。一生奴隷として、私と共に暗殺部隊で働くだけです」

王家の紋章が掘られている短剣で、頬に切り傷をつける。


”復讐の卵のチャージが完了しました。”


やるしかないのか。


まず復讐の卵を発動する。突撃カラス2羽が召喚される。

2羽は、フレイン守衛長と暗殺者エリグラに襲いかかる。


突然の出来事に、二人は一瞬硬直する。


そして高速の突撃は、硬直した手練の猛者たちに反応もすら許さず、両者の目に木の槍を突き刺す。

脳まで貫かれた二人は、その場に崩れ落ちる。


次に、深淵の卵を発動し、拘束具の破壊を試みる。


拘束具の内側に影の手を通す。

拘束具が、影に吸い込まれる際に、両手両足が引き千切れるのを防ぐためだ。

拘束具が影の手と床に挟まれる形となり、うまく拘束具だけが裂ける。


そして左手の甲に刺さる拷問用の針を抜き、呆然としている無傷の守衛の一人に、血戦の卵で召喚した短剣を突き刺す。

血が噴水のように吹き出し守衛は倒れた。


もう一人は、逃げ出そうと背を向けるが、冷静に血戦の短剣を解放後、取調室の壁に懸けられていた鏡に手を突っ込んで、アイテムボックスから短弓と矢を手に取る。

守衛がドアに手を懸けたところで、頭を貫くことに成功する。


左手の甲の傷は、問題ないようだ。


俺は、誰も入ってこれないように、扉の閂をかけた。


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