北の街、ボレアス
そして次の日の朝。ケントたちは起床してからすぐに着替えなど、仕事の準備を整える。そして全員が居間に集合したところで、今日から始まる調査の仕事についてどのように動いていくかを話し合った。
「さて。まずは調査依頼についてだが、ギルドは魔物に起きている異変の原因を探るため、冒険者を各地に派遣して怪しそうな場所を調べているそうだ。私たちも今後は、これに協力することになる」
「具体的には、怪しい場所に行って何を調べるんだ?」
「主に変異種であったり、本来はそこに生息していないはずの魔物だな。それを発見し、ギルドに報告することが依頼の内容だ。そして、場合によってはそれらの魔物の討伐も行うことになる」
魔物の生態に何らかの異変が起きていると把握しても、それ以上のことは未だに分かっていない。よって、まずは変異種のようなイレギュラー的存在の魔物が原因究明の足掛かりになると当たりをつけて調査を進めるというのが、ギルドの当面の方針だった。
「それは確かに、危険な依頼になりそうね……」
「まずはギルドに行ってみよう。そこでもう少し詳しい話を聞けるはずだ」
兎にも角にも、ギルドに行かないことには何も始まらない。ケントたちは話を終えるとすぐに屋敷を出て、目的地に向かうべくその足を進めていった。
それからしばらく歩いて、ケントたちはギルドに到着する。そしていつものように建物の中に入って受付まで行くと、そこにはララベルが冒険者の応対をしている姿があった。
「あら、あなたたちは昨日の六人ね。いらっしゃい」
やがてケントたちの順番が回ってくると、ララベルは大人の落ち着きを感じさせる穏和な笑みを浮かべて彼らを迎える。
「もしかして、調査依頼を受けるのかしら?」
「ああ。皆で話し合って、危険に関しては十分承知している。私たちも冒険者として、異変の解決に全力を尽くすつもりだ」
「……分かったわ。それなら、早速依頼の話をさせてもらうわね?」
依頼の危険性についてはこれまで何度も説明しており、本人たちもそのことを理解したうえでここに来ている。今のやり取りでそのことを再確認したララベルは、早速調査依頼についての話を切り出した。
「まず、あなたたちにはボレアスに行ってもらいたいの」
「ボレアス……北の街か。理由を聞いてもいいだろうか?」
「それはね、単純にあっちが人手不足なのよ」
ララベルはそこで、眉をハの字にして困ったような顔をしながらこう続ける。
「ボレアスがどういう場所かは、知ってるわよね?」
「ああ。一年中雪に覆われている、寒さの厳しい土地だろう?」
「その通りよ。ボレアスは厳しい気候に加えて強い魔物も多く生息しているから、冒険者もあまり積極的には行きたがらないの。一応、腕の立つ冒険者が何人か調査に行ってくれてはいるのだけど、いかんせん人数が足りなさすぎて他の街と比べて全然調査が進んでいないのが現状よ」
どこに手掛かりがあるか分からない以上、調査の範囲は王国全土に渡る。しかし四方にある街のうち、北の街は特に厳しい環境であるために調査が難航しており、ギルドとしては早急にボレアスに送る人員を増やしたかった。
「もちろん、あなたたちの中にはCランクに上がったばかりの子もいるから、無理にとは言わないわ。だけど、ギルドとしてはボレアスを調査してくれるのが一番助かるの」
「なるほど……」
ここまでのララベルの説明を聞いたところで、リューテは仲間と話をするためにすぐ後ろにいる五人に振り向く。
「私としてはボレアス行きに賛成だが、皆はどうだ?」
「私も賛成よ。もうCランクの冒険者になったんだから、危険っていうだけで尻込みなんてしていられないもの。それに、北の街にはまだ行ったことがないから、どういう所なのか純粋に興味があるわ」
「俺もエルナと同意見だ。俺の場合、仕事と合わせて記憶の手掛かりも探したいからな。新しい街に行けるっていうのは願ってもない話だ」
まず最初に、エルナとケントの二人が同意する。
「とはいえ、手強い魔物が多いという情報は無視できません。それに、寒い気候の中では身体も凍えて普段のようには戦えないでしょうし。リューテさん、その辺りは問題ないのですか?」
「ああ、大丈夫だ。確かにボレアスに生息する魔物はこの辺りの魔物よりも強いが、それでもほとんどは私たち六人なら苦戦はしないはずだ。寒さに関しても、防寒具さえ着ていれば余程のことがない限り耐えられる。もっとも、変異種のような予想外の魔物と遭遇する可能性もあるから、そこだけは警戒しなければならないが」
リューテ自身は過去に何度かボレアスを訪れたことがあり、寒さの対策や魔物との戦闘経験はある程度頭に入っている。彼女がボレアスに行ってほしいというギルドの頼みに異を唱えなかったのも、それを踏まえてのことだった。
「分かりました。そういうことでしたら、私も異論はありません」
「もちろん、ワタシも大丈夫です! 新しい街、今から楽しみですねえ!」
そしてニュクスとソニアが賛成し、最後にマヤも元気よく首を縦に振る。全員の意見が一致したところで、リューテは改めてララベルに向き直った。
「話はまとまった。ギルドの要請に従って、私たちはボレアスに向かおう」
「ありがとう。本当に助かるわ」
ララベルは胸の前で両手を会わせて感謝の意を示す。それから、横の机に無造作に置かれてあった地図を手にとって、それをケントたちに見せた。
「もし今からボレアスに行くなら、まずはこの街の北門を出て真っ直ぐ行った先にあるこの村を目指すといいわ。そこから半日くらい歩けば、ボレアスに到着するはずだから。それじゃあ、あなたたちの無事を祈ってるわ」
「ああ。任せてくれ」
そう言うとリューテはララベルに背を向け、仲間にこう告げる。
「よし。では街で必要なものを買い揃えたら、すぐにボレアスへ向けて出発だ。皆、行こう!」
「おおーっ!」
そしてケントたちはボレアスまでの旅路に必要な物資を揃えるため、ギルドを出て街の市場へと向かっていった。
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