表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閉塞学級  作者: 成春リラ
6章 飛び込みシミュレーション
31/88

30話 飛び込みシミュレーション①

僕と彼女の、薄荷色の時間。

 薄い胸板にぶつかったリモコンが、垂直に落下して乾いた音を立てる。昔だったらきっと顔面に当たっていた。


 母は小さくなった。元々身長が低く細身ではあったけれど、最近ますます痩せこけて空間を占める体積が減ったように感じる。青い血管が浮き出る手の甲や紫色の唇なんてとても三十一歳のものには見えない。いや、りんが知らないだけで十年前も二十年前もこうだったのかもしれない。それぐらい、凛は自分の母親の健康的で若々しい姿を知らない。想像することも難しい。


 それとも凛が大きくなりすぎてしまったのだろうか。どう考えても持て余している百七十五センチの背丈は、凛にとって足枷でしかなかった。このまま心を置いてけぼりにして身体だけ成長していくことに、時折言いようのない恐怖を感じる。


 リモコンは床に落ちた勢いで電池の蓋が外れていた。母はほとんど聞こえないぐらいの声でごめんなさい、と謝り震える手でリモコンを拾った。家主の顔色を伺う奴隷のような目で凛を見上げて、「あの」と口を開く。


「あの、違うの。ごめんね。お母さん、少し疲れが溜まっていて、それで」


 母がどうして息子に対して惨めな顔を向けるのか、凛にはわからない。計算でやっているのなら最低だ。一回試してみればわかるじゃないかと、凛は母に拳を振り上げそうになったことが何度もある。だけどいつも失敗してしまう。母の目尻の皺やこけた頬を見ると、物騒なことを少しでも考えた自分が恥ずかしくて仕方なくなるのだ。それはただの弱い者いじめでしかない。こんなに非力な生物を力で制することを覚えたら、凛はもう元に戻れなくなるだろう。


 リモコンの原因は散らかったリビングにあった。凛が昨日何時間もかけて綺麗に清掃したリビングを、母は一晩で元通りにしてしまったのだ。情緒が安定していないところに破り捨てられた新聞を突き付けて詰問したのがまずかったらしく、母は手当たり次第に周囲の物を投げつけてきた。その内の一つが見事凛に命中したという次第である。


 凛は抑えていた息を大きく吐いて、落ち着いた声で話した。


「わかった、僕も言い方が悪かったよ。ごめんなさい。少し出かけてくるね。帰りにお弁当買ってくる」

「まっ、待って、お母さんが悪いのよ。だから、だからっ」

「ちゃんと帰ってくるから、心配しないで」


 テーブルの上の千円札とスマートフォンを直にポケットへ突っ込み、薄暗い玄関で足にスニーカーを引っかけていると、母は蚊の鳴くような声を出した。今にも泣きそうだった。


「どこに行くの」

大樹ひろきの家」


 流れるように嘘をついて、凛は扉を閉じた。


 家を出た後にスマホを起動し、凛は周りで誰も見ていないのをいいことに思わず舌打ちをした。バッテリーが切れかけている。そういえば昨日は充電するのを忘れたまま疲れて寝てしまったような覚えがある。引き返せばゲーム機を取ってくることもできたが、わずかな意地が邪魔をしていた。凛にだってその程度の意地はあるのだ。結局、凛は迷いを振り切って足早に歩き出した。


 八月二十三日、アスファルト上で陽炎がゆらゆらと立ち昇る、夏休みの最終日。宿題を済ませた凛に抱えるものは何もない。凛と同じなのか、もう提出を諦めているのか、近所の小学生男子がわあわあと楽しそうな声を上げて元気いっぱいに走り回っている。会話の内容は詳しく聞き取れないが、どこかに遊びに行くようだ。


 小学生たちを見ていてふと思い立った凛はもう一度ポケットからスマホを出し、いそいそとトーク画面を開いた。さっきは咄嗟に嘘をついたが、大樹の家に行くというのは選択肢として有りだ。画面をぽつぽつタップしてメッセージを打ち込むと、数分もしない内に着信があった。大樹から電話がかかってくるのは稀だ。


「もしもし、どうかした?」

『凛、お前タイミング良すぎ! 神! 超神! 急いでオレんち来てくれ!』

「えっと、もしかして」


 宿題が終わってないとか――と続けようとしたら、電話の向こうから『アンタ馬鹿なのぉ!?』と女の人の怒号が聞こえて、ガツンと鈍い音がした。


『いってえ! あっ、姉貴何す、』

『もしもーし、凛?』

「あ、こんにちは」


 大樹からスマホを奪い取った溌剌とした声の主は、堤沙樹だ。久遠館高校に通う大樹の四つ上の姉である。大樹によく似たキリッとした顔立ちと竹を割ったような性格をしていて、頻繁に堤家に遊びに行く凛のことも「凛」と呼んで可愛がってくれる。大樹と凛がなんとなく流れで卓球部に入ることになったのもこの人の影響だった。


 沙樹さきは電話の向こうで申し訳なさそうに言った。


『ごめんねー。今絶賛修羅場中だから、来るのは明日にしてくれないかな』

「宿題だったら手伝いますよ、僕」

『だめだめ、こいつ凛が来たらぜったい怠けるから。少しぐらい痛い目見ればいいのよ、もう。……ああっ、アンタ何冷蔵庫開けてんの!』


 がしゃがしゃと雑音がして、突然電話がブチッと切れた。もう一度かけても繋がらなかった。


 凛は一人取り残されたような気分で炎天下のアスファルトに立ち尽くした。じわじわと後悔の念に駆られる。宿題を手伝うって言わなければ良かった。自分の家にいるのが気まずいからとりあえず中に入れてくれと言えば、大樹も沙樹さんも許してくれただろうに――と、そこまで考えたところで、凛は自分が堤姉弟の優しさに甘えていることに気づいて、また自己嫌悪に陥った。


 完全に頼る当てがなくなってしまった。せめて自転車の鍵だけでも持ち出していれば公園や本屋にも行けたのに、生憎と凛の所持品は夕食代と充電切れかけのスマホだけだ。視線を感じて振り向くと、道路の端に立っている少年を不審に思ったのか、初老の男性がこちらをじっと見ていた。凛は慌てていかにも行き先があるかのようなていで歩き出した。


 歩くというより、何も考えず自動的に足を前方に出すことを繰り返していた凛が次に立ち止まったのは掲示板の前だった。地区の出来事に興味があるわけではない。変化のない灰色の住宅街の中で緑の掲示板はチェックポイントのように見えたという、それだけの話だ。


 数枚の紙が四隅を画鋲で留められていた。ここにいる口実を作るために、月一の草取りとか野犬に注意してくださいとかのお知らせを目で追い、活字を頭に入れる。白と黒だけで構成された味気ない紙切れたちの中に、ぱっと目を惹くカラフルなものがあった。凛はタイトルを指でなぞって読み上げた。


「飛び込み部……?」


 パソコンで打ったように見えたその文字は、よく見ると手書きだ。レタリングというのだろうか、爽やかなエメラルドグリーンで彩られている。最初は地区のクラブ活動か何かかと思ったが、タイトルの下に「紅黄中学校部活動」と続いていた。あとは「興味のある方は一年E組の教室まで」と書いてあるだけだ。文字のないところには飛び込みと一切関係なさそうなくまやうさぎのファンシーなイラストが所狭しと描かれていて、これも手書きだった。


 突っ込みどころが多すぎて、誰かのいたずらだろうな、と凛は思った。紅黄中には各学年四クラスしかなく、一年E組なんて存在しない。加えて、紅黄中のプールは老朽化で何年も前から使えなくなっているから、飛び込み部も水泳部もあるはずがないのだ。そもそも部活の勧誘をしたいなら校内に貼らないと意味がないだろう。こんな中途半端な時期にやって何になるというのもあるが。


 凛は視線を横に動かして、今度はA3サイズの黒っぽいポスターに注目した。こちらはちゃんとした宣伝で、凛にも見覚えがあった。少し前の回覧板に折り込みチラシが入っていたのだ。紅黄市立美術館。「現代美術展」という毒にも薬にもならないコピーに、日付や開館時間が記述されているが、凛が関心を持ったのはそこではなかった。夏休み期間中に限り、中学生以下入館料無料。今日は休館日ではないようだし、小さく載っている簡略化された地図を見た感じでは歩いていけそうな場所にある。


 ここで時間を潰そう、と凛はほとんど考慮することなく決めた。





 近いとは言え、美術館はちょっとした丘の上にあったので、凛は照り付ける太陽の下で汗だくになりながら坂道を上ることになった。スマホのバッテリーは残り四パーセント。ロック画面の時計は十四時過ぎを示していた。三時間ぐらい居座ったらうちに帰ろう。


 美術館は横に広い平屋の建物だった。入り口の看板はところどころ文字が掠れて読めなくなっており、「紅  立 術館」となっている。率直に言って、外観はかなりしょぼい。二重の自動ドアを抜けて中に入ると、エアコンが効いているのか効いていないのかわからないぐらいの冷気があった。


 真正面の受付で欠伸をしている館員の女性に「あの……」と凛は話しかけた。


「中学生は無料って聞いたんですけど」


 女性は一瞬びくんと跳ね起きたが、凛が子どもだとわかるとまたやる気のなさそうな顔になった。


「生徒手帳か保険証を提示してください」

「え? あっ……」


 そんなもの休日に携帯しているわけがないが、確かに無料サービスを受けるなら身分証明が必要になるのは当たり前だった。しかし受付の女性は凛の動揺を見るや否や「じゃあ次回は持ってきてくださいね」とあっさり中学生用のチケットを切った。


 チケットの半券には「常設+特別展」と書いてある。凛は特別展から見ていくことにした。


 仄かに黄色い光が満ちる静かな空間の壁に、整然と絵画が並べられている。点在する人々は皆気品のある年配の人ばかりで、手ぶらにTシャツと膝丈のズボンだけの凛は浮いていた。騙されたような気分だ。中学生以下無料というのは無料にしても問題ないぐらい来館者が少ないという意味だったのかもしれない。まだろくに見ていない内から長居は厳しそうだなと思い始め、凛はなるべく目立たないようにいっそう猫背になって壁際を歩いた。


 現代美術展ということだったが、なるほど説明のところに書かれている年代はどれも最近である。極彩色で塗りたくられた絵画なんかはいかにも現代アートという雰囲気だ。凛は説明を一つずつ丁寧に読んで回った。残念ながら、肝心の絵の方はいくら眺めてもよく理解できなかった。青と焦げ茶で半分ずつ塗り分けられただけのどでかい絵など、ひょっとすると絵心のない凛でも描けるのではないか、と思ってしまったほどだ。絵の方は、としたものの実を言うと説明をしっかり読んでもその絵が何を表現したいのかは読み取れなかった。周りの大人たちは興味深そうに絵を見つめたり、指差しながら談笑したりしているのに。


 自分の感受性の貧困さに若干ショックを受けつつ、半分は見て回ったところで、凛は小さな女の子がとある人物画の前に立っているのを見つけた。ここで自分以外の子どもを見たのは初めてだった。


 白いレースのチュニックに、薄荷色のロングスカート。スカートと同じ色のリボンバレッタをハーフアップにしたふわふわの髪につけて、これまた近い色のサンダルを履いている。身長は凛より三十センチ以上低いように見えて、おしゃれな格好の小学生だな、なんて思ったりした。


 女の子は目の前の絵画を真剣な目で見つめていた。何がそんなに良いのだろうと、凛も横に立って眺めてみた。専門的なことはわからないが、写真に近い精巧さで描かれた絵は凛が現代美術に対して持つイメージと違った。でも、その分何を描いているのかは一目でわかる。目を瞑った赤ん坊を抱いている母親だ。母親の表情は慈愛か悲哀か曖昧で、これが絵画ならではの繊細な表現ってやつだろうか、とそれっぽいことを考えた。


 解説を読もうと視線を移して、凛の方をじっと見上げていた女の子とばっちり目が合う。


「わあっ!」


 まさか見られているとは思わずうっかり大声を出してしまい、凛は周りの大人たちにじろりと睨まれた。すいませんすいませんとあっちこっちに無言で頭を下げて、ようやく女の子に向き直る。


「……あれ?」


 女の子が同じクラスの生徒であることに、顔を再び見るまで気づかなかった。普段と髪形が違うからだろうか。子犬みたいな目がこちらを見ているのは明らかだったが、一応自分を指差して「僕?」と訊いてみた。女の子は頷いた。


「同じクラスだよねぇ?」


 同じクラスではあるが、話したことはないし、名前も覚えていない。やっぱり小学生のような幼く舌ったらずな声にどぎまぎして「うん、でも……」と口をもごもごさせていると、女の子の方から名乗ってきた。


「わたし、野河のがわ明佳めいか。野原の野に大きいほうの河、明るくて佳し、の明佳だよ」

「僕は、」

千葉山ちばやま凛くんでしょ。知ってるよ」


 う、うん、と小声で答えてから凛は俯き、照れくさいのを誤魔化すように質問した。


「野河さんは」

「明佳でいいよ、りんくん」

「……明佳ちゃん、は、ええと、一人でここに?」


 明佳はころころ笑った。


「何でこんなところにいるの、って訊きたそう」


 図星だった。黙り込んで暗に肯定する凛に「ひどいなあ」と明佳はさらに笑う。


「わたし、美術部だから。夏休みの間に一回行きなさいって、顧問の先生に言われてたのを昨日思い出してね」

「美術部って、そういうのもあるんだ」

「ねー、わたしも知らなかったぁ。中嶋せんせてば怖いんだもん」


 同級生の、しかも女子と話すのはほぼ初めてだったが、近所の小学生と同じような気楽さで会話ができた。明佳は下から覗き込むようにして「りんくんは?」と逆に訊いてきた。


「僕は、その……えっと、興味があって」


 他に行くところがなくて、とか家に居づらくて、とは言い出せず濁した結果、なんだか絵画に関心がある人の発言のようになってしまった。美術部員の前で何を言っているんだ。


「あっ、でも、僕には早かったみたい。ほら、なんか周りの人みんな絵に詳しそうで、僕なんて全然さっぱりわかんなくて。美術部の人だったら絵の良さとかもわかるのかなあ」


 凛は早口で捲し立てて予防線を張った。明佳は不思議そうな顔で目を見開き、「えー? そんなことないと思う」と背伸びをして凛に顔を近づけた。


「わたしもよくわからないよ。ていうかさ、」


 くるん、と一回転して薄荷色のスカートが丸く広がった。ちまっとした人差し指が凛の背後に向けられる。


「あの人も」


 あの人も、あの人も、あの人も。


「みーんな、わかったふりをしているだけだよぉ。ほんとにわかってる人なんて、ちょっとしかいないよ。みんな、ちっともわかっていないことをわかったように見せるのが上手なだけに決まってるよ」


 明佳のそこまで大きくないはずの声は変に館内に響いて、ぴしり、と空気が凍り付いた。


 凛は咄嗟に何も返せなかった。どうもまずいことになった。来館者の大人たちは今やはっきりと凛たちの方を見ており、中にはひそひそと囁き合っている人もいる。


 内容が判然としない小声が耳を掠めた瞬間、どくん、と心臓が痛くなった。


「あ……」

「お友達が描いた絵ならともかく、全然知らない人が描いた全然知らない絵を見るのは好きじゃないなぁ」


 周りを気にしていないのか、明佳は高い声で話し続けている。どくん、どくん。心臓が肥大化していくような心地がする。凛はそっと胸を押さえて明佳に気づかれない程度に前かがみになった。


 ひそひそ。ひそひそ。悪口が聞こえてくる。無数の白い目が凛を見ている。暑いことだけが原因ではない汗が腕を滑っていく。今度は口から手を突っ込まれて、肥大化した心臓をぎりぎりと捩じり上げられるような感覚を覚えた。


 耳と心臓を抉り取って交換したかった。


 違う、僕じゃない、僕は何も言っていないのに――、


「りんくん、どうしたの? 具合悪い? 汗びっしょり」


 はっと気づいたときには、背伸びをする明佳と前かがみになった凛の顔はすごく近くまで寄っていて、視界に明佳の瞳が大写しになっていた。


「ご、ごめん!」


 飛び退いたとき、ポケットに入っていたスマホが突然鳴り出し、あまりにたくさんのことが一気に起こり過ぎて凛はパニックになった。


「ああ、あああ」


 震える手でなんとかスマホを引き抜く。周囲の視線に怯えながら深く考えずに通話拒否を押そうとしたが、着信の相手はよりにもよって母だった。凛は軽く舌打ちをして近くにあった男子トイレに駆け込んだ。トイレでなら美術館内でも電話を取っていいのか知らないが、これは無視すると後ですごくめんどくさいことになる。


「もしもし母さん?」


 声を抑えようとしたが、どうしても苛立ちがこもってしまう。


『……お、怒ってる? えと、り、凛が帰ってこないんじゃないかって、心配で』


 相変わらずの情けない声にむかむかして、八つ当たりだとは思いつつ「もう怒ってないよ、それよりそんなくだらない理由で電話してこないでくれる?」と我ながらキツい返事をしてしまった。


『だ、だって、しょうがないでしょ、凛は……』


 後半はくぐもっていて聞き取れない。「何!?」と今日一番の怒声を張り上げた途端、考え得る限り最悪のタイミングでスマホのバッテリーが切れた。


「っ、ああもう!」


 凛はしゃがみこんで真っ黒になったスマホの画面を拳で叩いた。


 怯えと苛立ちと怒りと嫌悪感は、それぞれの境目があやふやになるぐらいどろどろと混ざり合って凛の心の中を満たしていった。落ち着け、こういうときは深呼吸だ。吸って吐いて、吸って吐いてを五回。やっと心拍が平常通りに戻ってきた。


 トイレから出ると、明佳は最初に見たときと同じように絵画を見ていた。


 このまま母を放置したら何をしでかすかわかったものではない。凛は明佳に横から声をかけた。


「ごめん、明佳ちゃん。僕もう帰らないと。じゃ、じゃあ、またね」


 顔を見ないまま去ろうとすると、明佳は徐に振り向いて「ね、りんくん」と口を開いた。


 急いでいるから、と言いたかったのに、鈴を振るような声にはなぜか肩を強く掴まれたときのような圧迫感があって、足が竦んで動けなくなってしまった。


「これ、さぁ。わたし、これは好きなんだ」


 母親が赤ん坊を大切そうに抱えている絵。この、凛にとっては押しつけがましさすら感じる絵のどこに明佳は惹かれたのだろう。


 明佳は笑っていた。凛は直感で、媚びるような、甘い甘い笑顔だと思った。


「この子、きっと幸せだったよね」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ