1章 03.アナスタシアの強さ
朝起きたら、アイリスと姉さんが口喧嘩をしていた。
僕は目を開けず、話に耳を傾ける。
「どうして、お姉ちゃんがお兄ちゃんの部屋で寝てるんですか!二人きりで寝ていたと思っていたのに!」
「何を言ってるの?あたしの方が弟くんの部屋に来るの早かったんだから、あたしが弟くんと寝てて何がおかしいの?」
なんか微妙に話がずれてないか。
「お姉ちゃんはずっとお兄ちゃんと一緒にいれるかもしれないけど、私はずっと一緒にいれないんだよ。だから、今日だけは二人きりだと思っていたのに。」
アイリスは泣きながらそんなことを言っていた。
そしたら、姉さんは、
「ごめん、ごめんね。アイリスちゃん、あたしが悪かったから。弟くんに何でもしてもいいから、あたしの事は嫌いにならないで。」
「本当にお兄ちゃんに何でもしていいの?」
「うん、いいよ。」
「おい、何勝手に決めてんの?」
僕は少し、キレ気味にそう言った。
「えーとその、今までの話聞いてたの?」
「聞いてた。面白そうだから、寝たふりしてた。」
「いつから、聞いてたの?」
「アイリスがどうして、お姉ちゃんが、お兄ちゃんの部屋で寝てるんですか!のところから。」
「そう、よかったわ。」
「何が、よかったんだ。」
「何でもないわよ。ね、アイリス。」
「うん、何でもないよ、お兄ちゃん。」
怪しすぎるだろ。
「はぁ、もう起きるか。」
服着替えるか。
僕は、服を脱ごうとした時に気づいた。
「なぁ、そこのお二人さん、いつまで見てるつもり?」
「弟くんが着替え終わるまで?」
「お兄ちゃんが着替え終わるまで!」
おい、おかしいだろ。
「姉さんは疑問形だけど、アイリスは見る気満々じゃないか。悪いが部屋から出ていって。」
「大丈夫!」
「何が大丈夫なんだよ。ほれほれ、さっさと出ていった。」
「嫌、そんなに出ていってほしいなら、今日は私に付き合って。」
「無理、今日はギルドに行きたいからダメ。」
「お兄ちゃんの性格が昨日より昔のお兄ちゃんに近づいてきてる。」
アイリスはそんなことを言い出し、姉さんも、
「本当だわ、弟くんの性格が少し戻ってるわ。」
「そうなのか?僕にはよくわからないけど。」
「お兄ちゃんは自分のことを僕何て言わなかったけどね。」
「それに弟くんは、あたしの事もアイリスの事もどうでもよさそうだったもんね。」
「ふーん。それじゃあさ、今の僕と昔の僕どっちがいいんだ?」
「私は今の方がいいかな。」
「あたしも今がいいかな。構ってくれるし。」
「そうか。それなら、部屋から出ていって。」
『はーい。』
アイリスと姉さんは部屋から出て行った。
性格が元に戻るか。
性格が戻れば、記憶も戻るのか。
でも、もし記憶が戻れば、今の僕の記憶はどうなるんだろうか。
うーん。
考えていても、しょうがないか。
さっさと着替えるか。
それから、僕は朝ごはんを食べてから、ギルドに向かおうとして、家から出ようとしたら、アイリスが、「無事に帰ってきてくださいね。」と。
だから、僕は
「安心しろ、帰ってくるから。」と。
アイリスは嬉しそうに
「はい!」と。
僕はギルドに行くためエミリーに、
「おい、エミリー起きてるか?」
「何ですか、主人様?」
「ギルドまで案内してくれるか?」
「はい、よろこんで。」
それで、僕はエミリーにギルドまで案内してもらい、無事に着いた。
「着きましたよ、主人様。」
「へぇー。ここが、ギルドか。というかアーサーさんに何でギルドに行けって言われたんだっけ。」
「さぁ、アーサーさんは何かをするとか言ってなかったですけど、多分冒険者登録したらいいんじゃないですか?」
「そうか。それじゃあ、入ろう。」
僕たちは入った、ギルドのなかに。
僕たちは冒険者登録をするには、どうしたらいいのか分からなかったので、近くにいた職員に聞いた。
「あの。冒険者になりたいんですが。」と。
そしたら、
「冒険者になりたいんですね。少し待っていてください。」
そう言って、職員はどこかに消え、僕は来るまで待った。
何分かすると、
「あなたが冒険者希望の方ですね。私はあなたのアドバイザーの リンベル=エリオノットです。それでは、あなたの魔導書をお見せください。」
「はい。」
僕は魔導書を渡した。
「えーと、名前はテンノウジ ユウマさん。ステータスは低っ。いえ、何でもありません。」
いや、言い直さなくてもいいけどね。
「あの、もういいですか?」
「はい、いいですよ。冒険者登録は後でしておきますので。」
「はい。よろしくお願いします。」
僕は、ギルドを出ようと歩き出そうとしたら、
「待っていてください、ユウマくん。」
と言って、リンベルさんは走っていった。
それから、リンベルさんが戻ってきて、
「ユウマくんは、そのステータスがアレなので、これをお渡しします。」
渡されたのは、装備一式と少しのお金だった。
「ありがとうございます。」
そう言って、ギルドを出た。
「なぁ、エミリー。僕はそんなに弱いのかな。」
「申しにくいんですが、弱いです。」
「そうか。」
僕は家に戻り、そこからは、アーサーの約束の日まで、アイリスと出かけたり、姉さんとダンジョンに潜ったりして、時間を潰した。
そして、約束の日。
僕は、荷物を纏めて、ホームに行こうとしていたら、「弟くん、あたしも行くって言ったでしょ。」との声が。
そうだった、すっかり忘れてた。
「それじゃあ行こう。姉さん。」
「うん、行きましょう。」
僕たちはホームに行くために歩き出した。
そして、ホームに着いた時、姉さんは、顔を引き攣っていた。
その理由はわかる。よくわかる。僕も初めはそんな感じだった。
「あの、弟くん。ここが、ホームなの?廃墟じゃん。」
「うん。まぁ、今だけだよ。」
僕たちはホームに入った。
「ユウマくん、来ましたね。あれ、隣の方は?」
「姉さんです。アナスタシア姉さんもアーサーさんの眷属になりたいそうです。」
「そうなんですか。アナスタシアさん、よく来てくれました。」
「はい、あたしは弟くんが英雄になれるように手伝いをするためにあなたの眷属になります。」
「そうなんですね。わかりました。それでは、アナスタシアさんの魔導書を見せてください。
アナスタシア=スミリノフ レベル 71
力 501 防御 463 敏捷 697 器用 584 魔力 801
《特殊アビリティ》魔法 A 治癒 B 治療 A 剣士 A
耐異常 C
《スキル》 弟妹溺愛 弟か妹が近くにいると、ステータス上昇。
《魔法》 ヒール 回復。
キュアー 状態異常回復。
氷柱刺突 氷の柱が敵を突き刺す。
強すぎじゃないですか。本当にユウマくんの姉なんですか?」
「あたしはユウマの姉です。」
「でも、苗字が違うじゃないですか。」
「それは、義理の弟だからです。」
「そうなんですか、わかりました。後、ユウマくんあなたの制服が届きました。今日から学校なので、行ってくださいね。」
「今日から何ですか。」
「はい、だから早く制服着てください。」
僕は言われるがまま、制服を着た。
「きゃー。弟くんカッコいい。」
「アナスタシア姉さんうるさい。それじゃあ行ってきます。」
『行ってらっしゃい。』
「あの、行く前に学校の名前を教えてください。」
「ヘルト学園です。」
「そうですか。それじゃあ本当に行ってきます。」
「エミリー、ヘルト学園まで案内してくれ。」
「はい。主人様。」
エミリーの案内のおかげで、学園に着くことが出来た。