1章 01.英雄の器
逃げなきゃ、殺される。
「おい、コラ!待ち上がれ!」
棍棒を持った大男、ナイフを持ったほっそりとした男それに魔法を放つ男が追いかけてきている。
「ひぃぃぃ〜。ごめんなさい〜。」
謝る必要などこにもないが、謝ってしまった。
こんな事になるなら、異世界に転生なんてするんじゃなかった。
なぜ、異世界に転生出来てしまったのかと言うのは、僕がどのような人間だったのかということが条件になる。
まずは、その事を説明しなければならない。
僕は、中二病真っ盛りの14歳 天王寺 悠真。
顔は中二病というのがなければ、かなりイケてると思う。体型は太ってもなく、痩せてもない、いわゆる普通というやつだ。身長は、平均的な162cm
僕は何としてでも、異世界に行ってみたかった。
そんな時、僕はある1つの本に出会う。
その、本の題名はよくわからない字が書いてあって、本を開くと日本語や英語などの文字が書かれていた。
僕は日本語のところを読んでみたらそこには異世界への行き方が書いてあったのだ。
僕は、最後まで読んでわかったことは、どうやら、異世界へ行くには、条件がいるらしい。
その条件とは、中二病である事、いなくなっても誰にも心配されない人だった。
僕は、その条件を満たしていた。
だから、僕はどうせ行けないだろうなと思いながら、本に書いていたことをこなしていった。
そしたら、視覚 聴覚 触覚 味覚 嗅覚が失われ 意識が体から切り離され、プツンと音を立て意識も失った。
それからの僕は、どこかをずっと彷徨い続けているような感覚だった。
そして、その感覚がなくなり、初めに耳に入った言葉それは、
「お兄ちゃん。起きて。」だった。
あれ、僕には妹や弟は居なかったはずだ。
だから、僕はおそるおそる重い瞼を開けると、そこには金髪金眼の美少女が。
身長は140cm前後だろう。
「お兄ちゃん。大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。」
「よかった、よかった。お兄ちゃんが私の前からいなくなるかもと思ったら、悲しくなって。」
目の前にいる少女は泣いている。
でも、僕はこの子の兄じゃない。
しかし、このまま泣かれてしまうと僕の心が痛む。
「泣かないで、大丈夫だから。」
「うん。」
それから、美少女はしばらくすると泣き止んだ。
僕は、美少女に言わなければいけないことがある。
それは、
「あの、ところで君の名前は?」だ。
言った直後、美少女は驚き、また泣きそうだった。
「お兄ちゃん、私のこと覚えてないの?」
「ごめんよ、わからないんだ。」
「そうなんだ。私のね、名前はね。」
「うん、何て言うの?」
「アイリス=スミリノフだよ。」
「いい名前だね。」
「お兄ちゃんがつけてくれたの。」
「そうなんだ。」
「うん。」
「僕の名前聞いてもいい?」
「テンノウジ ユウマだよ。」
「へ?それ本当なの?」
おっと、声が裏返ってしまっま。
「うん。私とお兄ちゃんは本当の兄妹じゃないんだって。そう、お母さんが言ってた。」
どうなってるんだ。
なんで、会ったこともないのに、俺の名前をしってるんだ?
アイリスに聞いてみるか。
「アイリス。ちょっ」
「みんなにお兄ちゃんが目覚めたって言ってくるね。」
はぁ、どうしたものか。
「ねぇ、キミが今度の契約者なの?」
誰もいないのに声がする。
「誰だ?」
「ボクだよ、ボク。キミが持ってる魔導書だよ。」
「魔導書何て持ってない。」
「持ってるじゃん、キミのポケットに入ってる。」
僕はポケットの中に手を入れて、ポケットの中に何かがあることがすぐにわかった。
僕は、それをポケットから出した。
「これは?というかこれどっかで。」
「魔導書だよ。キミが見たことがあるって思ってるのは、異世界に行くための方法が書かれている本のことだよ。」
「本当だ、でもこんな小さくはなかった。」
「魔導書は大きさを変えることができるからね。」
「てか、何で喋れんの?びっくりだよ。」
そうびっくりしていたのだ。
顔にださなかったけど、本が喋ってたらさ、普通はびびるじゃん?
「まぁ、どうして喋っれるのかは、魔法という事で。」
「ふーん。それで魔導書さん、僕に何か用?」
「用はある。だから少し外に出よう。」
「うん、わかった。」
で、外に出たのはいいが、どこに行くのかはわからない。
「なぁ、魔導書さんどこに行くんだ?」
「着けばわかる。」
「おい、そこの坊主。それ魔導書だろ。置いてけよ。」
で、現在に至る。
「魔導書さん、ハァハァ、怖いんだけど、どこに行けばいい。」
「そこの建物に入って。」
「分かった。」
僕は、ドアを開け建物に入った。
「ボクが行きたかったのはここだよ。」
「ここ?何かあるのか?」
「うん、ちょっと待ってね。」
魔導書が光だした。
「よし、これでよし。」
魔導書が、黒髪ロング幼女になっていた。
日本人みたいな顔つきだ。
目も黒い。
ひぇぇぇ〜。次は本が人に化けた。
身長はアイリスよりも低い、130cm前後だろう。
なにそれ怖い。これも魔法で片付くのか?
僕はおそるおそる聞いてみる。
「魔導書さんなのか?」
「そうだけど。何?」
「いや、可愛いなぁ。と思っただけだけど。」
とっさに思ってもない事言っちゃったんだけど。
まぁ、嘘じゃないけど。
「ボクが可愛い?可愛い、初めて言われた。嬉しいな。ありがとうね。」
「そうだ、ここに連れて来たかったのか?」
「うん、キミに言わなければいけないことがあるから。」
言わなければいけないこと?
何だろう。
幼女は歩きだした。
「ついてきて。」
「分かった。」
僕はついていった。
「着いたよ。」
「ここは?」
「魔導書の保管庫だよ。」
「保管庫?」
確かに本が本棚にびっしり詰まってる。
冊数は1万は超えてるだろう。
「フォッフォッフォッ、よく来たの、英雄の器よ。」
おじさんが出て来たんだけど。
「英雄の器って?」
「英雄の器とは、魔導書を持っている人の事をそう呼ぶんだ。」
「それだったら、魔導書を持ってるだけで、英雄の器になれるのか?」
「そう簡単な事ではないわ。魔導書を人としてこの世に現界することができる者だけが英雄の器になれるのじゃ。お主みたいにの。」
「そうなのか。そうだ、僕は天王寺 悠真。おじさんは?」
「ワシか?ワシはソロモンじゃ。で、ユウマよ、お主に頼みたい事があるのじゃ。」
「頼みたい事?」
「お主に英雄になってもらいたいのじゃ。」
「英雄になる?どうやって。」
「この世に今まで誰も倒す事の出来ないドラゴン、ヴリトラがいるのじゃ。だから、今のうちに力をつけ、ヴリトラを他の英雄の器と力を合わせ倒して欲しい。」
「その、英雄の器は何人いるの?」
「7人じゃ。」
「無理じゃないですか。今まで倒すことの出来なかったドラゴンを7人でって無理ゲーにも程があるよ。」
「今は7人ってだけで、これから増えるかもしれんし、減るかもしれん。まぁ、こればっかりは運任せじゃな。」
フォッフォッフォッ。と笑ってやがる。
何が面白いんだよ。でも、出来るだけやってみるか。
「わかりました。出来るかはわからないけど、やってみるよ。ソロモンさん。」
「そうか、それなら、まずお主には冒険者になって貰いたいのじゃ。」
おぉ、冒険者!
冒険者ってことは魔物とか倒すんだよね。
くっ〜。
中二病の血が騒ぐ。
「分かったけど、冒険者にはどうすればなれるんだ?」
「昔に偉業を成し遂げた英雄が、この都市 スペランチャには多くいる。その英雄の眷族となるのじゃ。」
「英雄の眷属になればいいんですね。分かりました。では行って来ます。」
「英雄の孫よ。そう簡単にドラゴンを殺させやしませんよ。」
僕にはその声が耳に届かなかった。
この建物から出たのは、いいが英雄なんてどこにいるんだ?
それに、海の匂いがする。
海が近いのか?
「主人様、ちょっと待って。まだ私と契約してないよね。」
魔導書さんが、話しかけてきた。
本に話しかけられるのは慣れなさそうだなぁ。
僕は考えを放棄し、魔導書さんと話をする。
「契約って何だよ?」
「そんなの、いいから手を出して。」
何をする気だ?
でも、手を出さないと、なんか言われそうだしな。
「仕方ないな、ほれ。」
僕は手を出した。
魔導書さんは、僕と手を合わせ、ぶつぶつ何かを言っている。
日本語でも英語でもなさそうだ。
「よし、契約完了。主人様行きましょう。」
「行くのはいいが、どこに行くんだ?」
「英雄がいるホームに行くに決まってるじゃん。」
「分かった。行こう。」
僕たちは歩き始めた、ホームに向かって。
「そういや、魔導書さん。名前ってあるのか?」
「名前?名前何てない。私は人間の道具なんだよ。だから、名前はないんだ。」
「ふーん。でも、名前が無いと不便なんだよ。」
「そうなんだ、じゃあ名前つけてもいいよ。」
「いいのか!そうだなぁ〜何がいいんだろう。エミ、エミリー。うん、魔導書さんの名前はエミリーだ。」
「エミリー。うん、いい名前だ。」
「そういやさ、この都市スペランチャは海が近いのか?」
「あぁ、海に囲まれてるよ。この都市があるのは島なんですよ。まぁ、この都市は都市国家で、この都市1つで島全体がまわってるんですけどね。」
この都市はファンタジーにはよくある中世ヨーロッパ風な建物が多い。
魔導書の名前も決まって、この都市の事もわかったし。僕たちは英雄のホームに行った。
行ったのだが、誰も眷族にしてくれない。
「どうすんの?誰も眷族にしてくれないじゃん。」
「主人様、仕方ありませんよ。だって、あなた見た目弱そうだもん。でも、大丈夫。魔導書と契約すれば特典があるんですから。」
「僕弱そうなんだ。それに特典って何?」
「特典はチートみたいなもんだよ。」
マジかよ。チートがあれば最強になれるんじゃないか?
そう思っても顔には出さずに
「ふーん。チートねぇ。それってどんなんなの。」
「えーと、それは。主人様には、使いこなせないものです。」
「マジ?」
「マジです。」
僕の最強になれると思っていた願望がいとも簡単に潰された。
そして僕たちが話していると誰かが、
「あなた達、英雄を探してるんですか?それなら、私の眷族になってください。お願いします!」
英雄なのに、頭下げてる。
これから、僕どうなんの?