表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

好きだよ

作者: 犬塚 有貴

いつも「好き」を確認するのは自分だった。何度も何度も訊いていたから鬱陶しいと思われていたかもしれない。

だけどいつも「好きだよ」を笑って言ってくれた。

それが何の安心にも繋がらなかったけれど。


「別に不安とかって言う訳じゃないんだけどね、ただ実感が欲しいだけなんだと思う」

「他人事みたいな言い方」

「うん……自分でもよくわかんない」

「……好きだよ」


また同じ言葉を笑って言ってくれた。

不安よりも苛立ちが強くなっていくのが堪らなく嫌だった。かといって「愛してるよ」も理由立てて好きの説明をされるのも何か違う。心がこもってないっていうのも違う気がする。

要は自分の我が儘なのだろう。きっとどんな言葉も態度も気に入りはしない。


それから春も夏も秋も冬も「好き」を訊いて「好きだよ」を繰り返す。

2年過ぎればただの挨拶みたいなものになったけれど、相変わらず笑って。

3年過ぎたらその挨拶みたいなものも無くなった。自分から訊く事がなくなったから。代わりに自分に言い聞かせるように「好きだよ」を笑って言った。返事はずっと同じ。


一緒になろうと言ってくれた時。自分もいい年だ、好きかどうかで離れるよりは誰かと一緒にいたい。妥協という程でもない。この先この人と淡々と普通に生きていくだけ、多分それが幸せなのだろうと変に冷めてはいた。







「好きだよ」


何十年か後の最期のその言葉でようやく安心できたのは、もう誰にも取られない、そういった自分の醜い我が儘。

ずっと愛されて生きてきた、その後の一瞬の幸せ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ