第89話 ミシワール城にゃ
ミシワール城に通じる街道を一台の馬車が進んでいた。
馬車の上に一匹の猫が身体を丸めて寝ていた。
普通の猫にしてはかなり大きい。
白いもふもふした毛に包まれぬいぐるみの様な3頭身の身体に銀色の鎧に赤いマントを身に付けている。
にゃんこ騎士こと来人だ。
来人は大きく背伸びをすると目を開けた。
大きな瞳の子猫の様な顔は大人から子供まで虜にする愛らしさを持っていた。
「御主人様、起きられましたか。そろそろ、寒くなってきましたので馬車の中に入って下さい。」
馬車の中から黒のスーツの金髪ビジュアル系イケメンが来人に声を掛けた。
来人の使役する魔物のブリットである。
ブリットは来人を崇拝しており、その明かしとして頭に猫耳の髪飾りを着けている。
その魅力は例え猫耳の髪飾りを着けていても歌舞伎町でナンバーワンになれる程であった。
「ブリット、来人に優しく言ったらダメだよ。最近、寝てばかりなんだから。寝ていたら見張りにならないでしょ!」
そう言って馬車の窓から飛び出して来たのはエリスだ。
薄い緑色の羽の小さな妖精で可愛らしい水色のトップスとチュチュスカートを着ている。
「もう少しで町に着くよ。」
御者の隣に座っていたのはアリアだ。
赤い髪を2つに結んでツインテイルにしている少女だ。
緑色のジャケットにティアードスカートにブーツを可愛らしく着こなしていた。
この4人は新しい妖精剣のメンバーである。
ローマシアを出発した後、マリジアに向かう途中でミシワールの城に立ち寄ったのである。
城の門をくぐるとカザン王とシーラ姫、特務部隊の隊長ローズが出迎えてくれた。
それに以外にも先の騒動の源である3人の魔人、ドーラ、ジュノ、ギリアも一緒だった。
「よく来た。歓迎するぞ、救国の英雄達。」
「英雄とか言われると恥ずかしいにゃ。」
「良いではないか。事実なのだから。」
3人はローズと馬が合うらしくローズの足元にへばりついていた。
ドーラとジュノは女の子らしくなった。
ギリアはお姉の道に片足を突っ込んでしまったのか言葉使いがお姉言葉になっていた。
「ひさしぶりね、にゃんこ。」
見た目、幼児のドーラにもう闇の禍々しさは無くただの子供だった。
魔力と一緒に闇の心も無くなっていた。
「ひさしぶりね。アリア。ミーナ姫はお元気かしら?」
「おひさしぶりです、シーラ姫。ミーナ姫も元気にされておられました。」
「まあ、後程、ゆっくりと近況を聞かせてもらいますわ。」
「早く、荷物を置いてこい。今宵は、宴じゃ!」
こうして、昼間から歓迎の宴会が始まった。