第80話 地龍にゃ
俺達がミーナに気をとられている間に事態は急展開していた。
先程まで死闘を繰り広げていた3人の魔人は子供の姿になってしまった。
シェードは腰の曲がったじいさんになってしまっていた。
極めつけは俺達の目の前で雄叫びをあげている巨大な黒色の地龍である。
体高20メートル、全長100メートルの四つ足の首長竜の様なスタイルである。
ドオーン!
地龍の尾の強力な一撃がゴーレム使いオーランの召喚した巨大ゴーレムの身体を粉砕した。
今回は元が土塊だけに強度不足だったようだ。
地龍はミシワール兵だろうが魔物だろうがお構いなくに攻撃を仕掛けていた。
まあ、判断するだけの知恵は持ち合わせていないようである。
「弓隊、構え、放て!」
カザン王がミシワール軍の弓隊が地龍に攻撃を仕掛けた。
地龍の厚い鱗は矢を軽く跳ね返し傷すら負わすことが出来ない。
しかも歩兵部隊は地龍の長い首と尾の攻撃を受け壊滅的被害を受けていた。
「カザン王、兵を下がらせろ、このままでは全滅してしまうぞ。」
「しかし、このままでは地龍が町に入ってしまう。」
地龍は真っ直ぐとミシワールの町に向かって進んでいた。
「大丈夫、俺達が何とかするにゃ。」
「もちろん、この妖精剣に任せなよ。」
「すまない、全軍、撤退だ!」
ミシワール兵は一気に撤退を始めた。
「それでは、地龍退治と行くにゃ。ブリットは空から牽制するにゃ!」
「まあ、それが一番だな。ブリットが空から牽制出来るようになったのは戦力的に大きいからな。」
「承知しました。御主人。」
「エリスは、ノームのノンちゃんに頼んで地龍の足止めを頼むにゃ。」
「任せて、来人。」
「フィーネは地龍の目を潰して欲しいにゃ。」
「了解。」
「シデンは俺と直接、地龍を叩くにゃ。」
「よっしゃ、やってやろうぜ、みんな!」
ミシワール兵が撤退する時間は皮肉にもモーリス軍の魔物が作ってくれた。
もちろん、魔物達がそれを意図とした訳ではないが結果としてである。
指揮官を失い混乱した魔物達は突如として現れた地龍を敵とみなし攻撃したのだ。
魔物たちの攻撃は玉砕に近いものであった。
地龍は魔物達を焼き払おうと│火炎の息吹を吹きかけようとした。
その時、ブリットが上空から急降下して地龍の頭を踏みつけた。
ブリットに踏みつけられ地龍の口が閉じられた為、行き場を失った│火炎の息吹が口の中で爆発する。
「いくら、敵とは言え、私以外の者に魔物が蹂躙されるのは気分が良くないですね。」
地龍は頭をふらつかせる。
「音速矢!」
フィーネの強力な矢が地龍の目を射抜いた。
ギャオオー!
さらに地龍の足元の地面が泥沼に変わる。
ズブ、ズズズッズル、ドオーン!
地龍が足を滑らせてその巨体が転倒する。
「イエーイ、やったねノンちゃん!」
エリスとノームのノンちゃんがハイタッチをして喜ぶ。
「さてと止めと行くか、来人。」
「はいにゃ!」
地龍は怒り狂い倒れたまま尾を振り回し走って近づく俺とシデンをなぎ払おうとした。
「まかせろ、来人!」
シデンが盾で巨大な地龍の尾を受け流すと同時に斬りつけた。
俺は電光石火で加速すると久しぶりのファイヤーにゃんことなった。
「にゃんこローリングアターック!」
電光石火とファイヤーにゃんこの複合技っで超光速にゃんこローリングアタークで灼熱の円盤となった俺は地龍の首を切り落とした。
地龍は首を落とされても動いて転げまわった。
「しぶといにゃ、武御雷任せるにゃ!」
『よっしゃ、俺っちにまかせろって、俺にどうしろって…!』
俺は、武御雷を地龍に向かって投げつけた。
ズブ!
武御雷が地龍に突き刺さった。
俺は、両手を頭上にかざし叫んだ。
「これで止めにゃ両手で雷撃!」
俺の両手から放たれた電撃が地龍に刺武御雷に直撃した。
バリッバリバリバリ!
地龍はのたうち回りながら焼け焦げて動かなくなった。
俺はクルクルと宙を飛んで戻ってきた武御雷をしっかりとキャッチした。
『こらー、来人。何てことするんだ。俺っちは伝説の剣なんだぞ。大体、両手で雷撃は相手に剣を刺す必要ないだろ!』
「あはは、ごめんにゃ。何となく、ノリで投げてしまったにゃ。」
焼け焦げた地龍が縮み始め、元の黒龍の牙の短剣に戻ると砕けて消えた。